右WB堂安律がキーマン!日本代表の新システム「3-4-2-1」への挑戦と収穫、見えてきた課題とは。

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アジア最終予選も4戦を戦い、ここまで3勝1分と無敗で首位を走り抜けている日本代表。その内容も圧倒的で、4戦で15得点1失点となっています。

そして僕たちを最も驚かせたのが3421への完全な変遷ではないでしょうか。

2次予選でも行なっていた3421ですが、最も変わったのがWB(ウィングバック)の人選です。三笘薫と堂安律をWBに配置するこの超攻撃的スタイルで、簡単ではないアジア最終予選を駆け抜けています。

では今回は3421への挑戦と収穫、そしてその課題について考えてみようと思います。

今回の記事の内容は以下のものとなっています。

●3421への変遷

●なぜ3421なのか?

⇒三笘薫と久保建英の共存(大外の優位性)

⇒能動的なトランジション発生

⇒CH(セントラルハーフ)のポケット取り

⇒迎撃とショートカウンター

●3421の課題は?

最後までお付き合い頂けると幸いです。

3421への変遷

アジア杯を経て、再開した2次予選。再開初戦の北朝鮮との一戦は4231でしたが、次戦のミャンマー戦から3421を使用しています。

ミャンマー、シリアと2次予選を戦い、現在戦っている最終予選でも中国、バーレーン、サウジアラビア、オーストラリアの4戦も3421です。

そのスターティングイレブンの変遷は以下のようになっています。

ミャンマー戦

シリア戦

中国戦

バーレーン戦

サウジアラビア戦

オーストラリア戦

菅原由勢から堂安律に変遷していった人選からも分かるように、どんどんWBが攻撃的になっていることが分かると思います。

ではなぜ、WBが攻撃的になっていったのか。ここに3421への挑戦があるのではないでしょうか。

なぜ3421なのか?

なぜ3421なのでしょうか。

僕なりに考えてみたのですが、これは「三笘薫と久保建英の共存(大外の優位性)」「能動的なトランジションの発生」「CHのポケット取り」「迎撃とショートカウンター」の4つがあると思います。

大きくこれら4つを押し出していくことで、日本代表は圧倒的な攻撃力と安定感を手にしています。

ではこの4つの詳細について触れてみようと思います。

三笘薫と久保建英の共存(大外の優位性)

三笘薫と久保建英という圧倒的なワールドクラスのタレント。彼らを生かさないという選択肢はやはりありません。

ですが4231や433だと三笘薫と久保建英の共存は難しいものになっていました。その理由として久保建英と三笘薫の使いたいスペースが被ってしまっていたからです。

久保建英はOMFやIHで出場した際には、ボールを引き出すため、そして自分の影響力を考慮して、動きながらボールを受けることが多いです。スペースに流れたり、サイドに開いてみたり。このレーンを跨ぐ動きと自分の得意なエリアが三笘薫と被ってしまっていました。

かたや三笘薫です。大外でボールを引き取りながら、1vs1を仕掛けられるような状況になると、簡単に彼を止めることは至難の業です。これはプレミアリーグでも通用しているので、疑う余地はありません。

ですが味方が近くにいると、一緒にDFも引き連れながらスペースを消してしまうことになります。特に縦の選択肢(縦のスペース)を潰されてしまうと、三笘薫は無理せずにやり直しを選択することが多いです。

このように三笘薫と久保建英の共存は難しいように思えました。

しかしです。その共存が可能と証明されたのが中国戦です。久保建英も三笘薫も圧倒的なパフォーマンスで、その才能を遺憾無く発揮していました。

ではなぜ共存できたのか。それは「スペースの棲み分け」にあると思います。特に久保建英のプレースペースの制限をかけたことによって、それぞれの使いたいスペースで被ることがなくなりました。

さらに堂安律の存在です。彼が久保建英のポジションを見て常に自分の立ち位置を決めることが多くなっています。

先ほども少し触れたように、久保建英はレーンを跨ぎながらボールを引き取ることを好む選手です。さらにその多くは外に広がることが多くなっています。

そこでWBに入る堂安律は久保建英が大外をとった場合には内側のレーンを取ることが多くなっています。この移動の時間を稼げるのも、久保建英が相手を止めながら時間を作り出すことができるからです。

また堂安律もSTでのプレーも難なくこなすことができる選手です。この入れ替わりによって、久保建英が大外を取った場合でもCFが孤立することがなくなっています。

さらに堂安律と久保建英がボールサイドに人を集めていくと、逆サイドの三笘薫のところでスペースができます。いわゆるアイソレーションされている形です(アイソレーションされずとも1vs1を作り出せる)。

ここに届けるために堂安律がWBで起用されているのだと思います。広いキックレンジと精度を兼ね備えている事、さらに右WBにいることで視野を確保しつつ、スムーズに利き足で展開を促せます。

彼が右WBで起用されるのは、久保建英とのバランスと三笘薫への展開を促せるからだと思います。そして当然のように守備も行えます。間違いなく「右WB堂安律」は日本代表のキーマンになっています。

そして彼の右WBが「能動的なトランジションの発生」のスイッチになります。

能動的なトランジションの発生

ではなぜ堂安律が能動的なトランジションの発生を促せるのか。

これは両WBに言えることですが、三笘薫も堂安律も逆脚のサイドで起用されています。ここに大きな意図があると思います。カットインからのクロスやフィニッシュということももちろんあると思います。

しかしもっと大切なこと、フィニッシュワークまで持ち込むための方法として、ネガティブ・トランジションとショートカウンターを考えているように思います。

日本代表を見ていて、「切り替え早え!」と感じた方は多いと思います。そしてその切り替え、いわゆるネガティブ・トランジションの局面で優位に働けるのは能動的にそれを発生させているからです。

その発生方法、スイッチとしてWBからの斜めのパスにあると思います。特に堂安律のワンタッチでの斜めのパスは確実に崩しのスイッチとトランジション発生のスイッチなっています。

WBが少し低めの位置でCBからボールを引き取る場合、多くはST(セカンドトップ)は少し外に流れながらCF(センターフォワード)への斜めのコースを開けていきます。

ここで上田綺世の強さが必要になってきます。彼の基準の作り方はやはり異次元で、ここでボールが収まる、もしくは2ndボールを手前に作り出してくれるので、STとCH、必要ならWBがネガティブ・トランジションに対応できます。

さらに多くの試合で南野拓実が起用されるのはトランジションの反応が早いことも挙げられると思います。

ザルツブルク、リヴァプール、モナコで培ったプレスの上手さは確実に日本代表に還元されています。前進させないことにより、集結を促してボールを回収、そしてショートカウンターに出る事ができています。

このようにして日本代表は能動的なトランジションの発生も考えながら、ゴールに迫っていくことも行っている印象です。

CHのポケット取り

崩しやフィニッシュワークの一工夫としてCHのポケット取りも考えられます。

CHのコンビが遠藤航と守田英正なら多くは後者が、守田英正と田中碧なら田中碧がポケット取り/チャンネルランを行う事が多いです。ボックス内の厚みも加えられるので、フィニッシャーを揃える事ができます。

この崩しを促すために、時間をかけて押し込む必要もあります。それができるのがWBに入る三笘薫と堂安律の存在です。現在の日本代表のWB像として、やはり個人で押し込める能力と相手を止める能力が必要になっています。

話は少しそれましたが、サイドで時間を作りながら押し込んでいくと、CHが攻撃参加できるようになってきます。3列目から3人目/4人目としてポケットを取りに行くことによって、相手に更なる混乱を生み出しています。

また違った文脈でも攻撃参加が可能です。それが前進/ビルドアップの局面で3-1になった時です。CHが1枚DMF化することにより、相棒のCHを崩しの局面に注力させる事ができます。これは特にバーレーン戦で見えたもので、守田英正が2ゴールを奪ったのはその証明だと思います。

このCHのポケット取りやチャンネルランは大外のWBのドリブルコースや選択肢を広げる事ができており、さらに相手を押し込む事ができるので、CBの攻撃参加も安全に促すこともできています。だから更なる厚みを加えつつ、敵陣でネガティブ・トランジションを完結する事ができます。

これを行っていくことにより、日本代表は「ずっと俺のターン」で試合を進めていく事ができるようになっています。

迎撃とショートカウンター

攻撃の局面は大まかに上記の3つが基本形になっていると思います。そして守備の局面です。ここでもやはり猛威を振るっているのは間違いありません。特に3CBの迎撃は対戦相手を苦しめています。

特にオーストラリア戦の板倉滉、サウジアラビア戦の町田浩樹。彼らの迎撃の上手さと強さは日本の圧倒的な武器になっていると表現しても過言ではないと思います。

ではどのように迎撃を作り出しているのか。それは523でのプレッシングです(WBの選手は相手のSBやWBの高さに依存するので、形は343に見えるかもしれません)。常に攻撃を仕掛け続けたい日本代表は守備の局面、ハイプレスからも攻撃を考えています。

まず3トップで中央を消しながら、制限と方向付けを行っていきます。基本的には外の選手、4バックならSB、3バックなら外側のCBに誘導していきます。ここに誘導した瞬間に全体のスイッチが入ります。

ここから迎撃を作り出すわけですが、手前はCHの遠藤航や守田英正が潰していきます。多くはここは本命ではなく、最終ラインから最前線への球足の長いパスを出させることで迎撃を作り出します。ここが奪い所の本命になっていると思います。

今や日本のCB陣はフィジカルで負けることはないほどに屈強になっていますし、3トップの制限と方向付け、そしてCHによる手前の潰しによって、繰り出されることの多い球足の長いパス。これが3CBが有利に守備に入るための準備の時間となっています。

板倉滉も町田浩樹も、ボールを奪い取った後のプレー選択も高いレベルにあり、ショートカウンターのキッカケとなっています。迎撃を作り出した時には手前を潰すCH、制限をかける3トップと、カウンターを完結させるための人数が揃っています。

当然ですが、奪った瞬間にできるスペースや優位性に飛び付かずに自分たちを整えることも出来るのが今の日本代表の強さだと思います。

これら4つのことを森保監督とスタッフ陣は考えた上での3421なのではないでしょうか。

攻守で圧倒しているのですが、オーストラリア戦で見えた課題もあります。ではその課題とはどのようなものなのか。少し考えてみようと思います。

日本代表の課題?

結論から述べると、その課題は「チャンネルランの薄さによる攻撃の厚み」にあると思います。

オーストラリアは3421とミラーゲームで対面を当てはめてきました。これに対して日本代表は守田英正が最終ラインに落ち、田中碧が中盤に残る形を作り出しました。1stプレスラインを越える、もしくは外側で起点を作り出せる型になっていました。

しかし広がるCBで持ち出しが少なかったので、WBの三笘薫か幅を作り出すST久保建英の突破に頼る攻撃が中心になってしまいました。

もしかするとCBの持ち出しによって時間を作り出す事ができれば、守田英正のライン間への潜り直しとそれに付随する田中碧の押し出しがあったかもしれません。

対面を剥がす、ズラすために行ったプレーはかなりの影響力を与え、オーストラリアを押し下げるまでに至ったのは事実です。そこから先のプレーの選択肢や幅を広げるための準備ができるともう1つ上のレベルに到達する事ができるのではないでしょうか。

そして今の日本代表にはそれを改善できる監督とコーチ陣、そして選手たちがいます。期待せずにはいられません。

僕らの日本代表がもっともっと強くなり、僕たちを熱狂の渦に巻き込んでくれることを願って。

頑張れ、日本!

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