先進国の中で圧倒的に「人口激減」が加速している日本の「厳しい現実」

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この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか?人口減少経済は一体どこへ向かうのか?

なぜ給料は上がり始めたのか、経済低迷の意外な主因、人件費高騰がインフレを引き起こす、人手不足の最先端をゆく地方の実態、医療・介護が最大の産業になる日、労働参加率は主要国で最高水準に、「失われた30年」からの大転換……

注目の新刊『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。

(*本記事は坂本貴志『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』から抜粋・再編集したものです)

変化1 人口減少局面に入った日本経済

あらゆる変数が複雑に影響し合う経済現象。これを正確に予測することは難しい。さまざまな経済指標の中で最も精度が高く予想可能であり、かつ最も影響力が大きいと考えられる変数が人口である。まずは人口動態の変化を出発点として、現在から将来にかけて経済がどのように変化していくかを考える。

人口は加速度を増して減少していく

改めてこれまでとこれから先数十年間の日本の人口の推移を確認する。

1960年に9300万人だった日本の人口はそれ以降ほぼ単調に増加し、2007年に1億2777万人とピークを迎えた(図表1-1)。そして、2007年以降は人口が緩やかに減少し始め、2023年の10月時点では1億2434万人にまで減っている。

人口が減り始めたのは2000年代後半以降であり、既に日本は20年弱の期間の人口減少局面を経験しているが、人口減少が社会全体に与えている影響はまだ限定的である。

というのも、グラフからもわかるとおり、人口のピーク周辺の変化率は小さな変化幅にとどまり、しばらくはゆっくりと山から下りる形で人口は緩やかに減少する。そして、山から少し離れたところで減少率は加速する形となる。

実際に国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の人口予測を遠くから眺めると、いまは人口の減少スピードが少しずつ加速し始めている局面となっている。

人口減少の速度を算出すると、2010年から2015年までの5年間の人口の年率の増減は0.15%減。2015年から2020年も0.15%減と緩やかな減少にとどまる。その後は、2020年から2025年が0.46%減、2025年から2030年は0.52%減、2030年から2035年は0.59%減、2035年から2040年は0.66%減と、人口は今後加速しながら減少していく。

人口動態の変化は社会や経済に大きな影響を与えると予想される。そして、その影響の大きさはグラフでみるところの傾き、つまり人口の減少率に依存すると考えることができる。

そのようにして考えてみると、2024年の現時点はまさに日本社会が人口減少の加速していく入り口に立っていることがわかる。そして、これから私たちは人口減少経済とはどのようなものなのかを身をもって経験することになるのである。

諸外国と比較してもこれからの日本の人口減少のスピードがいかに急速であるかが理解できる。図表1-2は国連が公表している人口予測を主要先進国で比較したものである。

2000年を100としたとき、日本の人口は2020年に99.1、2030年に93.8、2040年に88.1、2050年には82.2まで減少する。主要先進国と比較してみると日本以外で最も人口減少が深刻であるイタリアであっても、2050年時点で92.1としばらくはゆっくりとしたスピードの減少になる。

中国や韓国も長期的にみれば日本と同様の超人口減少社会を迎えることになるが、減少の速度が加速していくのは少し先になる。フランスに関してはしばらく一定水準で維持される見込みであり、英国や米国に関しては今後も堅調に増加する予想となっている。

つづく「私たちは何歳まで働くのか…日本でこれから「超高齢者」が急増すると起こる「最も大きな変化」」では、前期高齢者が減少して超高齢者が増える「日本の未来」について掘り下げる。

私たちは何歳まで働くのか…日本でこれから「超高齢者」が急増すると起こる「最も大きな変化」