これから賃金がさらに高騰する「シンプルな理由」…意外と知らない「日本経済の未来」

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この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか?人口減少経済は一体どこへ向かうのか?

なぜ給料は上がり始めたのか、経済低迷の意外な主因、人件費高騰がインフレを引き起こす、人手不足の最先端をゆく地方の実態、医療・介護が最大の産業になる日、労働参加率は主要国で最高水準に、「失われた30年」からの大転換……

注目の新刊『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。

〈就業率が高いのは女性だけではない。15〜64歳の男性就業率に関しては既に日本が最も高い(2022年:84.2%)。イタリア(同:69.2%)やフランス(同:70.8%)など、働いていない男性が多数存在する国もある中、日本の男性就業率は突出した水準になっている。

もちろん、日本の労働環境における男女間格差については批判も多い。たとえば、日本では女性の管理職比率が著しく低く、男女間の賃金格差も大きいなどさまざまな課題が指摘されている。

女性の管理職比率をいかに高めていくかなどはさまざまな議論もあるだろうが、少なくとも就業率のデータをみてわかることは、日本は男女にかかわらずとてもよく働く国だということである。〉(『ほんとうの日本経済』)

日本人は性別や年齢にかかわらず、よく働いている。

「全員参加型経済」という表現もできる国である。

なぜ、就業率が高まっているのか、どう考えることができるだろうか。

就業率の急速な上昇をひもといてみると……。

〈女性であれば保育所の拡充や育児休暇の拡充といった各種制度、高齢者であれば継続雇用制度の義務化など政府の政策による影響は大きいだろう。

あるいは女性や高齢者であっても働くことは当たり前だとする人々の意識の変化や、高齢者であれば年金の給付水準の抑制といった財政的な事情も大きな影響を与えているとみられる。〉(『ほんとうの日本経済』)

こうした状況のなかで、「賃金はさらに高騰する」と考えられる。

いったい、なぜか。その理由を最後に紹介したい。

〈将来、労働参加が限界まで拡大し、就業率が天井を迎えたときには、いよいよ賃金が上がっても労働供給量が増えない局面が訪れることになるはずだ。生産年齢人口が急速に減少する一方で医療・介護需要が増え続ける未来において、日本経済は労働供給が賃金に対して弾力性を失う局面をおそらく経験することになる。そうなれば、賃金上昇率はこれまでよりも加速することになるだろう。

それがいつになるかまではわからない。しかし、2010年代半ば以降そうした兆候は少しずつ顕在化してきている。

就業率の推移をみていると、特に高齢者については労働参加の余地がまだ十分に残っているような感じもするが、70歳を超えても80歳を超えても現役世代と同じように働き続けられる高齢者はそう多くはない。相対的に健康な高齢者は既にかなりの程度働きに出ているとも考えられるだろう。

そう考えれば、労働力のプールが枯渇することで賃金がさらに高騰していく未来は、そう遠くない先に訪れるかもしれない。〉(『ほんとうの日本経済』)

つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。

多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体