FCEの人材育成「Smart Boarding」快進撃―事業本部長・荻野氏に聞く(1)
FCE <9564> は収益柱の1つの教育研修事業で、主力の人材育成プラットフォーム「Smart Boarding(スマートボーディング)」が順調に伸びている。導入企業数はこのほど1000社を突破、中期経営計画の目標を前倒しで達成している。新たな機能も追加するなど攻めの戦略を加速させる中で、同部門を統括する荻野純子上級執行役員(トレーニング・カンパニー事業本部長)に話を聞いた。
Smart BoardingはFCEが2017年末にリリースしたeラーニングシステムで、動画によるビジネス向けのトレーニングを受けられる。さらに、学んだことをオンラインのライブレッスンで何度でも反復練習できる仕組みで、リモート時代の社員研修を支えている。
―導入企業数は、25年9月期末に780社としていた従来の目標を大きく上回るペースで4ケタに到達しました。その成長の要因は何でしょうか。
荻野氏(以下同)
「環境変化に適応しながらブラッシュアップを繰り返し、本当の意味での顧客ニーズをくみ取り続けたことが挙げられます。サービス開始時の狙いは、入社したての人がスムーズに組織に合流するためのサポートでした。特に中小・中堅企業の人事部門は限られた人数で多岐にわたる業務を抱える場合が多く、手間のかかる新入社員研修を効率化することで負担を軽減できるという読みでした。しかし、そうした需要は現場レベルでこそ強くても、経営全体としての優先順位はまだ低いのが実情でした。そのため当初は苦戦しました」
「そうした状況が転換したのが、20年に起きた新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)です。それまで対面で行われていたあらゆる活動はストップし、社会がオンラインへと大きく舵(かじ)を切りました。そこで私たちは一気に攻めることに決め、コンセプトもゼロから練り直しました。従来のサービスは対面研修を動画に置き換えた『インプット』型のツールでしたが、それを実践するための『アウトプット』の場として、トレーナーによるライブトレーニングを導入したのです。これには強い引き合いがあり、Smart Boardingの最初の飛躍につながりました」
新型コロナを機にバージョンアップしたSmart Boarding。それは、以前のように現場で職務のノウハウを実践指導するOJT(オンザジョブトレーニング)ができなくなったことへの企業経営者の不安に応えた。急速に広がったリモートの流れはコロナ禍が去った後も定着し、リアルとオンラインでハイブリッド化した人材育成をいかに支援できるかが、新たなポイントになっている。
―リモートを用いたビジネスコミュニケーションと働き方の普及により、Smart Boardingは導入企業数が大きく伸びたのと同時に競争環境も激しくなったのではないでしょうか。
「アウトプットにフォーカスしたことが大きな強みを発揮しています。ライブトレーニングを通じて講師やほかの受講者からのフィードバックを即座に、何度でも得られる点は他社のサービスとの差別化要素であることに加え、役割を補完する意味で別のeラーニングシステムとも共存できています。また、顧客を支援していく中で、企業の抱える人材育成の根本的な課題も見えてきました」
―それはどういったものですか?
「かつては先輩の仕事のやり方を見て『盗む』ということが求められました。そのようにビジネススキルを身に着けた人たちが今は教える側に回っていますが、いわゆるZ世代(1990年代半ば以降に生まれたデジタルネイティブ世代)はより効率的に『教えてほしい』と考える傾向が強いのも事実です。結果として両者の間にミスマッチが生じてしまうケースがみられます。この『成長できる環境があるかどうか』ということが、これからの企業における人材育成に求められる概念ではないでしょうか」
「私たちもそうした観点に立ち、顧客の人材育成について社員の各ステージや部門でそれぞれ求められるトレーニングを追求していったところ、やはりOJTが重要だとわかりました。そこでまず、その企業の中でOJT指導に優れた人を起用した動画をSmart Boardingにアップし、現場で教えることをオンラインでも学べるプログラムとすることをサポートしました。これによって、担当者がその動画を見せながら新人教育をすることもでき、教える側の工数削減と、個々人の教えるスキルに依存する面が強かったOJTを高レベルで標準化することができます。Smart Boardingは汎用的でありながらも、顧客ごとに最適化された質の高いサービスとなり、解約率の激減につながりました」
―導入企業数は、25年9月期末に780社としていた従来の目標を大きく上回るペースで4ケタに到達しました。その成長の要因は何でしょうか。
荻野氏(以下同)
「環境変化に適応しながらブラッシュアップを繰り返し、本当の意味での顧客ニーズをくみ取り続けたことが挙げられます。サービス開始時の狙いは、入社したての人がスムーズに組織に合流するためのサポートでした。特に中小・中堅企業の人事部門は限られた人数で多岐にわたる業務を抱える場合が多く、手間のかかる新入社員研修を効率化することで負担を軽減できるという読みでした。しかし、そうした需要は現場レベルでこそ強くても、経営全体としての優先順位はまだ低いのが実情でした。そのため当初は苦戦しました」
「そうした状況が転換したのが、20年に起きた新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)です。それまで対面で行われていたあらゆる活動はストップし、社会がオンラインへと大きく舵(かじ)を切りました。そこで私たちは一気に攻めることに決め、コンセプトもゼロから練り直しました。従来のサービスは対面研修を動画に置き換えた『インプット』型のツールでしたが、それを実践するための『アウトプット』の場として、トレーナーによるライブトレーニングを導入したのです。これには強い引き合いがあり、Smart Boardingの最初の飛躍につながりました」
新型コロナを機にバージョンアップしたSmart Boarding。それは、以前のように現場で職務のノウハウを実践指導するOJT(オンザジョブトレーニング)ができなくなったことへの企業経営者の不安に応えた。急速に広がったリモートの流れはコロナ禍が去った後も定着し、リアルとオンラインでハイブリッド化した人材育成をいかに支援できるかが、新たなポイントになっている。
―リモートを用いたビジネスコミュニケーションと働き方の普及により、Smart Boardingは導入企業数が大きく伸びたのと同時に競争環境も激しくなったのではないでしょうか。
「アウトプットにフォーカスしたことが大きな強みを発揮しています。ライブトレーニングを通じて講師やほかの受講者からのフィードバックを即座に、何度でも得られる点は他社のサービスとの差別化要素であることに加え、役割を補完する意味で別のeラーニングシステムとも共存できています。また、顧客を支援していく中で、企業の抱える人材育成の根本的な課題も見えてきました」
―それはどういったものですか?
「かつては先輩の仕事のやり方を見て『盗む』ということが求められました。そのようにビジネススキルを身に着けた人たちが今は教える側に回っていますが、いわゆるZ世代(1990年代半ば以降に生まれたデジタルネイティブ世代)はより効率的に『教えてほしい』と考える傾向が強いのも事実です。結果として両者の間にミスマッチが生じてしまうケースがみられます。この『成長できる環境があるかどうか』ということが、これからの企業における人材育成に求められる概念ではないでしょうか」
「私たちもそうした観点に立ち、顧客の人材育成について社員の各ステージや部門でそれぞれ求められるトレーニングを追求していったところ、やはりOJTが重要だとわかりました。そこでまず、その企業の中でOJT指導に優れた人を起用した動画をSmart Boardingにアップし、現場で教えることをオンラインでも学べるプログラムとすることをサポートしました。これによって、担当者がその動画を見せながら新人教育をすることもでき、教える側の工数削減と、個々人の教えるスキルに依存する面が強かったOJTを高レベルで標準化することができます。Smart Boardingは汎用的でありながらも、顧客ごとに最適化された質の高いサービスとなり、解約率の激減につながりました」