【佐藤 大輝】いま「ウーバーイーツ配達員の質」が落ちている…?「満足度100%」評価の33歳配達員が目にした「異様な光景」

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「ウーバー届くの遅すぎ…」そんな声がSNSで散見されるようになった。なぜUber Eatsは来るのが遅くなったのか……? 配達員同士で「配送先のたらい回し」が発生してしまう構造的理由については前編記事〈「ウーバー届くの遅すぎ!」待たされてキレる客も…33歳ベテラン配達員が危惧する「負のスパイラル」〉で紹介した。

本稿では引き続き、ベテラン現役配達員である佐藤大輝氏(33歳)に、Uber Eatsの現場でいま何が起きているのか話を聞かせてもらう。

「ダブルPick」が配達員と客にあたえる影響

四角いバッグ(お値段は4000円くらい。心無い方から「負け組ランドセル」と呼ばれることもある)を背負った男たちが街中に溢れていた頃、Uber Eats配達員の質は玉石混交のように思えた。

見た目の面では、サラリーマン風の配達員もいれば、社会人らしくない配達員もいた。中には僕のように会社をクビになり、路頭に迷っていた配達員もいたはずだ。

新型コロナウイルスによる世界的大混乱の中、Uber Eatsは雇用の受け皿として機能した。その功績は大きく、僕は心から感謝している(いつの日か就職したいくらいだ!)。だからこそと言うべきか、ここ最近ネット界隈で「Uber Eatsのサービスの質が下がった」と言われていることが僕は悲しい。実際そうだと思う点も多いため、歯痒い。

その一因と言えるかもしれないのが、最近「ダブルPICK」の配送依頼がものすごく増えた。ダブルPICKとは、1人の配達員が2軒のお客様へ同時配送すること。イメージとしては、例えばハンバーガーチェーン店で商品をPICKした後、お弁当屋さんに移動して商品をPICK。その後、AさんとBさん、それぞれに商品をお届けする……どちらかの店だけでAさんとBさん、2軒分の商品をまとめてPICKすることも多々ある。

当たり前だが、ダブルPICKの配送時間は、1人の配達員が1軒を配送するより長くなる。AさんとBさんからすると、サービスの質が低下したように感じても何ら不思議ではない。ちなみに配達中、お客様の液晶画面には「配達員は別の配達先にお届け中です」といった内容のメッセージが表示される。なお追加料金を支払えば優先配送の指定ができる。

ダブルPICKの方が配達員は喜ぶのかと聞かれれば、実はそうでもない。なぜなら一軒当たりの報酬単価が安くなってしまうケースが多いからだ。距離等によって金額は変動する上で、1軒あたりの報酬金額は300円〜500円前後。これがダブルPICKの場合、2軒おまとめで400円〜600円前後で落ち着く印象がある。もちろん配送先が近場であれば多少の「お得感」も生まれるわけだが、まるで「罰ゲーム」のような配送依頼も稀にある。

「配達員の質」が落ちている…?

システム上の問題だけでなく、「配達員の質」も落ちている……、かもしれない問題も見逃せない。

つい先日、僕は大手飲食店でUber Eatsの商品ができるのを待っていた。この飲食店では商品が完成次第、電光掲示板にて番号で知らせてくれる。店の邪魔にならないよう隅で待っていると、店内にヘルメットを被った男性が入ってきた。そして忙しそうに働いている店員さんへ「ウーバーです。番号は*****です」と声をかけ始めた。電光掲示板を見れば、まだ自分の商品が調理中なのはわかると思うのだが……。

前編記事で詳しく述べたが、Uber Eats配達員の仕事は昔と比べ、あまり割のいい仕事ではなくなっている。それでも残り続ける配達員たちは、どことなく「変わり者」の人も少なくない印象がある。端的に言うと、人とコミュニケーションを取るのが苦手なように見える。

他にも、清潔感がない人に遭遇することもある。ボロボロの四角いバッグを背負っている人を見ると「さすがにそろそろ買い換えたら?」と思ってしまう。自費で買うわけなので無理強いはできないが、配達員本人がサービス業であることをもっと自覚するべきではないか?

ちなみに、僕の知り合いの何人かは「フードデリバリーは当たり外れのある『配達員ガチャ』のせいで、頼んだ料理の美味しさ変わる気がする」と苦笑いしていた。

ネット界隈で「Uber Eatsのサービスの質が下がっている」と言われるようになったのは、コミュ力不足やプロ意識の欠如など、配達員自身にも大きな問題が隠れているのかもしれない。しかし、だからこそと言うべきか、僕個人としては「やりやすさ」を感じている。

チップの総額が10万円を超えた

以前記事を読んでくださった方はご存じかもしれないが、僕は23歳と29歳の時、所属していた会社をクビになった。よっぽど運が悪かったのか、はたまた正真正銘のダメ人間なのか……。いったい何が真実なのかは名探偵コナン君にお任せするとして、少なくとも今僕は、Uber Eats配達員として上手くやれている自信がある。

僕はこれまでに6000回以上の配送をこなした。ありがたいことに「満足度100%」で評価していただいている。お客様から頂いたチップの総額は10万円を超えた。このお金はタイヤ交換やブレーキ交換など、自転車のメンテナンス費用に使っている。お客様から「暑い中、ありがとうね」と飲み物を頂いたり、飲食店の方から「いつも頑張ってるから」とお菓子を頂くことも多い。

どうやらきちんと挨拶ができて、明るく笑顔で応対できるスキルがあれば、Uber Eatsでの労働環境では「相対的に上」の評価がされるようだ。

僕は今、Uber Eatsの仕事が好きだから続けている。たしかに昔より稼げなくなったのは事実だが、隙間時間にフラッと働けるギグワークの仕事は、本業ではなく副業としてやる分には悪くない。全国の老若男女の方々にオススメしたい働き方だ。配達員の数が増えればサービスの質も上がっていくだろう。もっとみんなでウバろうぜ!

追記:

僕は今年で社会人12年目を迎えた。この期間、会社員として働いたのは約4年。Uber Eats配達員として働いたのは4年6ヶ月。ついに逆転してしまった。拍手喝采お願いします。

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