これまでのTORQUEシリーズ

 2023年5月、京セラの決算説明会で「個人向けの携帯電話端末事業の撤退」について言及があった。その後、TORQUEは個人向けにも開発されることが明らかになり、10月にTORQUE最新機種「TORQUE G06」が発売された。

 事業再編により、同社製スマートフォンは今後TORQUEシリーズ(個人/法人)と法人向け端末に注力するとしており、撤退報道後に新機種が発売されたとはいえ、今後も登場するかを心配するユーザーも少なくない。

 今回、京セラ担当者と記者の懇談会が実施され、TORQUEシリーズの今後の展望や課題などが語られた。

左から、研究開発本部 総合デザインセンター責任者の北村和生氏、通信機器事業本部 通信技術部 プロダクト戦略部責任者の伊東恭弘氏、通信機器事業本部 通信事業戦略部 マーケティング部 マーケティング戦略課の吉田崇晃氏

TORQUEシリーズは今後も計画中

通信機器事業本部 通信技術部 プロダクト戦略部責任者の伊東恭弘氏

 京セラ通信機器事業本部 通信技術部 プロダクト戦略部責任者の伊東恭弘氏は、TORQUEシリーズについて「高耐久、とにかく強いというのを前面に打ち出したラインアップ」とし、山や海などのレジャーを楽しむユーザーに向けての訴求を続けてきた。一方で、新型コロナウイルスの影響が出てきたTORQUE 5GやG06では、ユーザーのレジャーにも変化が出てきはじめ、キャンプといった大人数で楽しむものから、1人で行動するユーザーや、YouTubeといった動画クリエイター向けの機能を盛り込んでいくなど、近年もユーザーのトレンドやユースケースにあわせて改良してきた。

 先述の「高耐久」といった点を、G06では「タフネス」という言葉を前面に出し、本体の耐久性だけでなく、さまざまな角度からの“強さ”を訴求し、ユーザー層の拡大を図ってきた。

 たとえば、堅牢性の試験では、1m四方の箱の中で垂直方向に回転させることで1mからの落下耐久試験を連続で行うタンブル試験や、鉄球だけでなくとがったものが落下するシーンを想定した金属落下試験、アスファルトなどへの落下試験などを実施。アスファルトへの落下試験では、中大型車の運転席から地面への落下を想定した高さ2mとするなど、プロユースとしての堅牢性も確認している。

 このほか、バッテリー寿命や温度上昇時を想定した持続性やセキュリティ機能の向上(秘匿性)、暑い場所や寒い場所での利用や保管を想定した試験(特殊性)などで「タフネス」を追求する。

“プロユース”の考え方

 一方で、会社の方針として「基本的に法人向けの端末にシフトする事業方針は変わっていない」とする伊東氏。メインは法人向けとする一方、“KDDIと一緒に作ってきた”TORQUEシリーズは、コンシューマーと法人ユーザーは半分ずつを占めるといい、今後の機種についても、法人だけでなく一般にも提供することを目指して企画開発が進められている。

 一般用途では、プロユースの製品が一般用途でも使われる流れが近年出てきており、たとえば日曜大工でもこれまでプロが使ってきた工具などが使われるようになってきている。TORQUEシリーズでもプロユースの機能をコンシューマーモデルに転用する流れがあり、カメラのナイトモードや虫眼鏡機能、グループウェア機能などをコンシューマーユースに最適化し、機能として載せることを考えている。

“前のモデル”から改善を続けてきたデザイン

研究開発本部 総合デザインセンター責任者の北村和生氏

 デザインを担当する研究開発本部 総合デザインセンター責任者の北村和生氏は、これまでのデザインを振り返りながら説明する。たとえば、TORQUE G03では、“角が潰れる”ということが多かったとして8角形のデザインを採用、G04では横画面での利用ユースが増えてきたとして左右に加え上下のシンメトリーが配慮されている。

 一方で、メインカラーの“赤”は初代から継続している。「自然環境下において視認性が高い」(北村氏)ためだとする一方、画面のユーザーインターフェイス(UI)はその世代のユーザーにあわせて変化させている。

 TORQUE 5Gでは「本当は(名前をこれまでの系統通り)TORQUE “G05”にこだわりたかった」と感想を漏らす北村氏だが、アクションバーのアップデートやSNSにシェアする際の便利機能などを搭載。デザイン面のアワードにも積極的に参加しており、継続的に受賞できているとデザイン性をアピールする。

 一方で、ブラックモデルも継続して提供している。個人向けのほか、法人向けにもブラックモデルが重宝されており、建設現場や警察など法人向けにも拡大できている。国内だけでなく、海外展開も考慮されており、最新のG06では国内モデルと北米モデルが共通モデルとして設計開発された。

 北村氏によると、国内と北米では、スピーカーの性能など細かい点で要求されるスペックが異なるといい、G06では産業性が考えられたデザインにすることができたと話す。

 デザインの大幅刷新について北村氏は「外部環境が変わらない中でデザインが変わるのは考えづらい」とする一方、これまでも利用シーンに合わせたデザインを変化させてきたと話す。

G04→5G(左)では画面が拡大した一方、ユーザーの声を反映して5G→G06(右)では画面サイズに大きな変更を加えず本体サイズを小さく収めた

折りたたみ端末

 近年は、さまざまなメーカーから折りたためるフォルダブルスマートフォンが登場してきており、日本メーカーからの発売も期待されている。

 TORQUEシリーズでの実現はどうか? 折りたたみのヒンジの部分について「特許ががちがちに固まっている」(伊東氏)とするほか、ディスプレイの曲げたときにできる線をクリアしないと十分使い勝手が良い端末にはたどり着けないとコメントする。

豊富なアクセサリー

 TORQUEシリーズでは、本体のほかにもアウトドアのシーンなどで利用できる豊富なアクセサリーが特徴の1つ。北村氏は、TORQUEシリーズにかかわらず、さまざまな用途で利用できるようデザインしているといい、スケルトンなどさまざまなデザインをこれまでも検討してきたと話す。

 一方、スケールメリットを活かすことが難しいため、さまざまな案から厳選されたものだけがラインアップされている現状にある。ほかにないようなアクセサリーも今後展開する準備はできているとし、ユーザーニーズを深掘りして“ニーズが高そうなもの”に集中して採用していく流れは今後も継続していく。

 アクセサリーは、個人向けだけでなく法人向けにも展開している。汎用性を重視して設計しており、たとえばネジの位置や緩衝材などで調整することでほかの機種でも利用できるなど、可能な限りスケールメリットを生かせるよう配慮されている。

法人向けとTORQUEのデザインは別の思想

 同じ耐久性をうたう法人端末とTORQUEシリーズだが、デザインはどちらも別々に考えられている。

 たとえば、同じブラックデザインの端末でも、コンシューマーと法人では求められているものが違う。

 個人向けでは、デザイン性を重視し、光沢があったり時間が経っても色あせなかったりするなど、さまざまな加工が施されるが、法人向けでは、コストパフォーマンスが求められ、コストを下げるためにブラックデザインとすることもある。

 加えて、業務中に使用する端末となるため、あまり派手なものだと「サボっているのでは?」と勘ぐられることもあるという。このため、できるだけ装飾を外した、いわば“業務用だと一目でわかる”端末にして欲しいという要望もある。

既存ユーザーを大切にする取り組み

 同社では、既存ユーザー向けの取り組みを実施している。その1つが2023年3月に開設されたユーザーのコミュニティサイト「TORQUE STYLE」だ。

 通信機器事業本部 通信事業戦略部 マーケティング部 マーケティング戦略課の吉田崇晃氏は「TORQUEオーナーの集う場所」と「ユーザーと双方向での交流の場」と開設の意義を話す。

通信機器事業本部 通信事業戦略部 マーケティング部 マーケティング戦略課の吉田崇晃氏

 サイトでは、ユーザーがTORQUE端末をカスタマイズした写真やユースケースが投稿されている。このほか、ユーザーから同社に対する声も直接拾い上げることができるようになり、カラーバリエーションなどへの検討などに活かされている。

 さらに10月12日には、TORQUE10周年を記念したリアルイベントを開催する。TORQUEオーナーと担当者が集結し、ワークショップなどよりTORQUE愛が深まるイベントが実施される。