ビットコインは「サトシ・ナカモト」と名乗る謎の人物によって発明されたもので、記事作成時点でもサトシ・ナカモトの正体は不明です。2024年10月8日にHBOで配信されたドキュメンタリー「Money Electric: The Bitcoin Mystery」ではビットコイン開発コミュニティに参加していたピーター・トッド氏がサトシ・ナカモトの正体として名指しされたのですが、本人は完全に否定しています。

Money Electric: The Bitcoin Mystery | Official Website for the HBO Original | HBO.com

https://www.hbo.com/movies/money-electric-the-bitcoin-mystery

Former Bitcoin Dev Peter Todd Denies He's Satoshi Hours Before HBO Documentary Airs

https://www.coindesk.com/business/2024/10/08/former-bitcoin-dev-peter-todd-denies-hes-satoshi-hours-before-hbo-documentary-airs/

「Money Electric: The Bitcoin Mystery」はドキュメンタリー作家のカレン・ホバック氏が制作したドキュメンタリーで、「ビットコインの注目度が高まるなか、開発者のサトシ・ナカモトの正体にもかつてない注目が集まっている」という切り口でサトシ・ナカモトの正体に切り込むものです。「Money Electric: The Bitcoin Mystery」の予告編は以下。

Money Electric: The Bitcoin Mystery | Official Trailer | HBO - YouTube

ホバック氏はドキュメンタリーの中で「トッド氏は若い頃から暗号技術に興味を持っていた」「トッド氏はサトシ・ナカモトとメールのやり取りをしていたことが判明しているアダム・バック氏と関係があった」「トッド氏はカナダ出身で、サトシ・ナカモトはイギリスやカナダ式のつづりを使っていた」といった断片的な事実を提示し、トッド氏こそがサトシ・ナカモトの正体であると主張しています。ただし、トッド氏がサトシ・ナカモトであることを示す直接的な証拠は示されていません。

ドキュメンタリーの内容は配信開始の数時間前にインターネット上に流出し、「ドキュメンタリー内でトッド氏がサトシ・ナカモトの正体として扱われている」ということが拡散しました。この内容に応じる形で、トッド氏は仮想通貨関連メディアのCoinDeskに対して「私はサトシ・ナカモトではない」とするメールを送信。メールの中には、ホバック氏が陰謀論コミュニティ「Qアノン」に関するドキュメンタリーを制作したことで有名なことを踏まえて、「Qアノンに関するドキュメンタリーで知られるホバック氏が、Qアノンが用いるような偶然を組み合わせた陰謀論に頼るのはおかしなものだ」とも記されていました。

ドキュメンタリーの中でトッド氏は「君(ホバック氏)が独創的なことは認めるよ。クレイジーでバカげた理論を思いつくね。もちろん、僕はサトシだし、クレイグ・ライトでもある」と発言していますが、「クレイグ・ライト」は「自分こそがサトシ・ナカモトの正体である」と主張した後に裁判所に否定されたことで知られる人物であり、トッド氏が冗談で発言したことは明白です。

また、トッド氏は「ホバック氏は『サトシ・ナカモトを探すための取材』ということは伏せて取材を打診してきた。ホバック氏からのインタビューの機会は4〜5回あったが、最後の1回になって始めて『サトシ・ナカモトを探すための取材』だったことが明らかになった」と述べ、ホバック氏との対話は時間の無駄だったと苦言を呈しています。





なお、2014年にはサトシ・ナカモトの正体として報道されたドリアン・サトシ・ナカモト氏が過熱する報道でプライバシーを侵害された事例もあります。このため、インターネット上には不確かな証拠に基づいてトッド氏をサトシ・ナカモトとして大々的に取り上げたホバック氏の行為を非難する声もあります。

渦中の「ナカモト サトシ」と目されていた人物が関与を否定する声明を発表 - GIGAZINE