大打撃“越冬カメムシ”異常発生で農家悲鳴 9割被害のブランド柿「諦めと憎しみ」

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 本来であれば11月に収穫を迎えるミカンが、大量に地面に落ちている。大量に発生したカメムシの影響だ。ミカンの他にもカキやナシなど、これから旬を迎える秋や冬の味覚が被害を受けている。

【画像】袋を掛けてはいるものの…カメムシに実を吸われ黒ずんでしまう高級シャインマスカット

■越冬カメムシ猛威 ミカン変色

 見渡す限りに広がるミカン畑。来月には旬を迎えるはずだが…。

高平農園 高平政和代表
「私どもの農園で一番(カメムシ)被害があった園地です」
「(Q.ものすごい数落ちていますね、下に。これから収穫期ですよね?)残念な限りですけど、全滅ですね」

 ここで作られているのは静岡名物の三ケ日みかん。酸味と甘みのバランスが絶妙な人気のミカンだ。本来であればこの時期、木にはたくさんの実が付いているはずだが、その多くは収穫を待たずに落下。無残な姿で地面を覆いつくしていた。

高平代表
「(Q.全部カメムシにやられたミカン?)ひどい所は(1つのミカンに)10匹とか(カメムシが)いました。異常だなというふうに感じました」

 農家が異常だと言うほど大繁殖しているというカメムシ。順調に育っているように見えるミカンも…。

高平代表
「今の時期ですとまだ着色がない緑の状況なんですけど、これが(カメムシに)吸われた跡なんですね」
「(Q.黄色いのは全部カメムシに吸われてしまった跡?)そうですね。本当に着色したような(黄)色になっています」

 まだ色付く前のミカンにカメムシが付き果汁を吸ってしまうと、その部分だけ黄色く変色してしまうという。しかも…。

高平代表
「こちらは柔らかくて、こちらは硬い」

 カメムシの被害に遭ったミカンは実が硬くなって売り物にならない。

高平代表
「(1匹でも付くと)仲間を呼び寄せるんですけど、それを放っておくと全体に広がる」

 カメムシはフェロモンを出し仲間を呼び寄せる習性があるため、気付いた時には畑全体に被害が広がっているという。

高平代表
「今の現時点で30%、3割減。本当にゾッとしますね。毎日(カメムシのこと)考えています。(これから)どうなるんだろう」

 なぜ、カメムシが大量発生しているのか。専門家は次のように話す。

静岡県病害虫防除所 内山徹さん
「今年は異常なほど全国的に多発しておりまして、カメムシは冬の寒さで一定数が死ぬんですけれども、暖冬になってきますとカメムシがなかなか死なない。(カメムシの)越冬数が多かった」

 温暖化の影響で、死ぬはずのカメムシが越冬し個体数が増え続けているという。

■新米にも…対策に追われるコメ農家

 そんなカメムシの被害は、いまだ高値が続く「新米」にも…。

農事組合法人 若竹牧和範代表
「カメムシが吸った虫害があったモミなんですけど、モミにプスッと針を刺してそれを吸うんですね」

 カメムシはコメの養分を吸い取り、被害に遭ったコメは黒く変色してしまっている。

牧代表
「(カメムシが)吸うとコメに栄養がなくなってしまうので、軽くなってしまっているので垂れない。こっちは正常」

 過去に例を見ないほど、大量発生したカメムシの対策に追われるコメ農家。

牧代表
「肥え(肥料)を変えたりとか、水の管理を変えたり、対策という対策はするんですけど、本当に(対策を)やり尽くした感じ」■ブランド柿 被害は全体の9割

 秋の味覚の代表、カキにも越冬したカメムシの被害があった。

柳沢農園 柳沢重博代表
「(Q.黒くなったり何カ所かへこんだりしていますよね)これがカメムシの吸った跡なんですよ。目に入るもの全部吸われているっていうことは、この木は全滅」

 甘味が強く、実が柔らかでねっとりとした食感が特徴の次郎柿。カメムシに果汁を吸われ、実はデコボコに変形し、表面は黒ずんでしまっている。

柳沢代表
「(カメムシの数は)近年まれにみる異常。あそこまで異常繁殖しているのを僕は見たことないですね」

 カメムシ対策として、例年、月に1回の頻度だった消毒作業を、今年は週1回に増やしているという。それでも、前日に消毒を行ったばかりのカキの木には…。

柳沢代表
「ここを見ただけでもう3匹いるじゃないですか。きのう(消毒作業を)やったのに、もうここにこんだけいるってことは、もう毎日(消毒作業を)やれってことですよね」

 消毒代の負担も大きいと嘆く。

柳沢代表
「(今年の消毒代は)60万円超えているでしょうね。多分収入半減どこの騒ぎじゃないよね。今こうやって見て、今実感するんですけど、8割9割はやられてると思いますよ」

 なんと、被害は全体の9割にも及ぶという。なんとか被害を免れた1割のカキもまだまだ安心はできない。

柳沢代表
「薬剤の適用っていうのは期限が決まっていて、散布してから14日以内は出荷してはいけないという。あとはもう吸われ放題、もう見てるしかない」

 出荷目前のカキは消毒作業を行うことができず、カメムシが来ないことを祈るしかないという。

柳沢代表
「笑うしかないっていうか。諦める半分、憎しみ半分」

 岐阜県の名産「富有柿」もカメムシの打撃を受けていた。

せっきーファーム 関谷英樹さん
「黒くなっているのがカメムシに吸われた跡」

 現状の被害は1割ほどだが、今後さらに増えていくのではないかと頭を抱えている。

関谷さん
「今後、収穫までに2〜3倍以上被害があるのではないかと予測しています。1年間かけて育てているカキなので、収穫前に被害が出始めるのは悲しい」■秋の味覚ナシ 過去最悪レベルの被害

 さらに、高級シャインマスカットも…。カメムシの対策として袋を掛けてはいるものの、その上から中の実を吸ってしまうカメムシ。

 エメラルド色に輝くはずのシャインマスカットは黒ずんでしまっている。

 まるまると大きな実を付ける秋の味覚の代表ナシも、カメムシの被害が深刻だ。

甘水園 猪飼幸宏さん
「これがカメムシ(の跡)ですね。ブツブツブツブツ細かくへこんでいるのがカメムシが吸った跡ですね。ちょうどこの吸われた断面を切ると、茶色くなっていますね」

 甘さと瑞々しさが特徴の豊月は、カメムシに吸われた部分だけが茶色に変色しているのが分かる。

猪飼さん
「9月上旬ですね、ちょうどそのころに稲刈りがあるんですよ。それ以降、やはり田んぼの方にいたカメムシがナシの圃場(ほじょう)(畑)の方にたくさん飛来しまして、結構被害がありましたね」

 カメムシなどの害虫被害と高温障害のダブルパンチを受け、5トンものナシが廃棄処分となった。被害額は200万円に上る。

 ナシを作り続けて25年、“過去最悪レベルの被害”だという。

猪飼さん
「近年この高温状態になってから、虫の発生が断然多いですね。年々そこ(カメムシなどの被害)が増えてきた」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年10月9日放送分より)