「もうアートじゃん」ムササビが葉っぱを食べた跡が“自画像”みたいでかわいい…真ん中だけ食べる理由を聞いた

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ムササビの“芸術家”な一面がX(旧Twitter)に投稿され、話題になっている。

こちら、ムササビの食痕(食べた跡)です。ムササビは葉を食べる時折りたたんで食べるので、このような左右対称の形になります。森の中でこんな素敵な形の葉を見つけたら、頭上でムササビが食事をしたのかもしれません。意外と私たちのすぐそばに落ちているかもしれませんよ!

このようなコメントと共に投稿されたのは1枚の写真。写っているのはちょっと不思議な4枚の葉っぱ。なぜか真ん中が全てくり抜かれているのだ。

実はこれは、ムササビが葉っぱを食べた跡。盛岡市動物公園 ZOOMO(@moriokazoo)のムササビ担当者が、飼育するオスのムムタくんとメスのキョウトちゃんの獣舎内で見つけたものだという。ムササビは葉を折りたたんで食べるため、左右対称の跡ができるとのことだ。

ユーザーからは「森歩きしてみたくなります」「え?もうアートじゃん…」「人間で言ったら食べ残し?のはずなのに、それさえ可愛いとか何事?」などのコメントが寄せられ、3万9000件を超える「いいね」がついている(10月7日現在)。

折りたたんで真ん中だけ食べる理由

食痕には「なんとなく飛んでるムササビ模様…?」「『自画像』が描けるんですね」との指摘もあり、担当者も「言われてみればたしかに!」と思ったのだそう。

とってもかわいい食痕だが、なぜ葉っぱを折りたたんで食べるのだろうか?ムササビの担当者に聞いてみた。

――投稿したきっかけは?

形の綺麗なものを個人的に集めていたのですが、ムササビの食痕は、誰にでも見つけやすく分かりやすいフィールドサインだと思い、皆さまにも見ていただき、身近な場所にも生息しているけれど、意外と知られていない“ムササビ”という動物を知るきっかけになればと思い、投稿いたしました。

――どうして葉っぱの真ん中だけ食べるの?

葉には昆虫などの食害から身を守るために、“フェノール”という有害物質が含まれており、昆虫に食べられやすい葉の周り部分はそれが多く含まれているため、ムササビはそれを避けるために折りたたんで食べると言われています。

もちろんすべての葉を折りたたんで食べるわけではありません。小さな葉は綺麗に丸ごと食べることもありますし、葉の周りから食べることもあります。

――折りたたんで食べるのは一口だけ? 

葉の穴が大きいもの、小さいものがあるので、一口のものもあればそれ以上のものもあります。ムササビは、一度地面に落としたものは拾いません。食べかけで落としてしまったような葉もよく見かけます。

身近な場所にムササビがいるかも?

――そもそもムササビはどんな生き物なの?

体長80cmほどの国内最大級の樹上性のリスの仲間です。飛膜を広げて滑空しながら木々を飛び移り、様々な樹種の葉や芽、花、果実などを食べます。当園のムササビたちは、栗の実が大好物です。

――普通に生活していてムササビに遭遇するチャンスはある?

主に山林に生息していますが、お寺や神社の木々に住んでいたり、なかには家の屋根裏やベランダに住んでいたという情報もあります。

園内でも滑空するムササビを職員が目撃したり、鳴き声を聞いたりと、人間の生活圏に近い場所に生息していることもあります。

夜行性なので、昼間は巣穴の中にいるため出会うことは難しいと思いますが、食痕などのフィールドサインを頼りに根気強く探せば、どこかで出会えるかもしれません。

――他にもムササビの面白い生態などを教えて。

かわいらしい見た目とは裏腹に「グルルルルー」と大きく不思議な声で鳴きます。初めて聞いた時は驚きました。

同じリスの仲間で、飛膜があり滑空するモモンガと混同されることがありますが、見た目も大きさも全く異なります。モモンガは“空飛ぶハンカチ”、ムササビは“空飛ぶ座布団”などと言われています。

――投稿の反響をどう思う?

ここまでの反響をいただけるとは思いませんでしたが、多くの方にそうなんだ!と思っていただけたことは、本当にうれしく思っています。

これをきっかけに、ムササビをはじめ、日本の里山で逞しく生きるたくさんの野生動物たちにも思いを馳せていただけたら、光栄です。

知らない人も多かっただろうムササビの習性。似たような葉っぱを見つけたら、実は近くにいるのかもしれない。