ホンダ、薄型電池パックにインバーター小型化 新型EVにAI活用

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Maki Shiraki

[栃木県芳賀町 9日 ロイター] - ホンダはこのほど米テスラや中国BYDに対抗するため開発を進める新型の電気自動車(EV)商品群の具体的な技術を公開した。電池パックを薄くし、インバーターを小型化、動力装置のエネルギー効率を高めるなどした。三部敏宏社長は栃木県の研究所で開いた取材会で、生産技術でコストを抑え、人工知能(AI)技術などを活用し、「世界で勝てる価値」を作ると語った。

ホンダが26年から世界へ投入するEV商品群「0(ゼロ)シリーズ」は、同社が世界に先駆け日本で市販化した「レベル3」の自動運転技術を搭載。現在は高速道路で渋滞中に時速50キロ以下で走行する場合など一定の条件下でのみ運転者が前方から視線を外すことが可能だが、今後は徐々に使用できる場面や車速の範囲を広げ、一般道での走行も目指す。無線通信でEVの基本ソフトを更新して機能を追加。AIやセンサーなども駆使し、ユーザーが最新で高精度な技術を使えるようにする。

電力を制御するインバーターを含む動力装置(イーアクスル)も開発し、エネルギー損失を競合比17%以上低減。インバーターは一般的なEV比で約4割小型にして横置きを可能とし、全高を下げ車内空間を広げた。

電池パックは同約6%薄型化。接合技術で冷却水路を細くしたほか、電池ケースは6000トンの圧力で大型部品を一体成型する「メガキャスト」技術の設備で製造し、60超ある部品を5点に削減した。同設備は米オハイオ州の工場に6機導入。中国勢やテスラ同様、28年以降にボディ骨格部品にもメガキャストを採用し、同年稼働するカナダのEV工場に導入する。

三部社長は「BYDなどの中国勢やテスラと対抗するには今までの既存の価値観の延長戦上で戦っても勝てない」と述べた。ゼロの立ち上げに日産自動車との「協業の話が入ることはない」としたが、28年以降は一部入る可能性も示した。

調査会社カウンターポイントによると、EV市場はテスラがシェア約2割でトップ、BYDが15%程度で2位につける。日本勢はハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を含めた電動車全体では強いが、電気で100%走るEVとなると存在感は薄い。

三部社長は足元で成長が鈍化しているEV市場について「想定通り」とし、今後も「基本戦略を維持しながら変化への対応は十分可能だ」と話した。

ゼロは26年の北米を皮切りに30年までに小中大型7モデルを世界展開する計画で、航続距離約480キロ以上、15─80%の急速充電は10─15分へ時間短縮を図る。車体は従来比約100キロ軽量化し、電力消費量の効率化と衝突安全性を両立。EV専用工場で製造することで混流生産に比べ35%の生産コスト削減を狙う。

(白木真紀 編集:久保信博)