石破おろしが始まった…いつまでもつのか「安倍・麻生を叩きつぶした」“国賊内閣”が解散を急いでまで隠したいこと

写真拡大

 石破茂内閣が誕生した。総裁選では麻生太郎が対抗馬の高市早苗に流れたが、岸田文雄氏、菅義偉氏を味方につけて総理の座を勝ち取った。これまで自民党の主流派から冷や飯を食わされ続けた因縁からか、石破氏は旧安倍派を内閣から一掃した。そして就任後の初めての記者会見で衆議院の解散を宣言し、「10月9日解散表明、15日公示、27日投開票」というスケジェールを示した。石破総理はもともと、解散権の濫用に関して自民党内いながら批判していた立場だった。それなのに、今般の豹変ぶりには国民も開いた口が塞がらない。自民党内ではもうすでに石破おろしに向けた準備が着々と進められているという。ルポ作家の日野百草氏が取材した――。

姑息…裏金も壺も、選挙で再任されたら信任うけたことになる

「これ、裏金・壺解散ですよね。野党の準備が整わないまま、不意打ちで解散して禊を済まそうという魂胆でしょう。裏金も壺も、問題は解決していないのに」

 関西、地元で発足した地域政党に所属する地方議員がこう語る。彼は地方議会だけでなく国会議員秘書経験もあり、その経験からも問題は解決していないとする。

「裏金も壺も、選挙で再選されたら選挙民の信任を受けた、禊は済んだとなってしまいかねません」

 2022年から2023年にかけて、この国の政治に激震をもたらした自民党の政治資金パーティー裏金事件および旧統一教会との疑惑。派閥消滅、一部の自民党の有力議員が役職を追われ、党を離党することになった。

 ギリギリで総裁選出馬を断念したとされる岸田首相も実質的なギブアップとされる。自民党の歴史で6人目の現職出馬断念、6月には各世論調査で20%を割る低支持率にまで落ち込んだ岸田内閣、これで選挙戦は無理だった、ということか。

 そして「党内でもっとも人気がない」とまで言われた石破茂氏が総裁に選ばれ、第102代首相になった。今年の春にタイムマシンかなんかで戻って「今年の秋には石破さんが首相になる」なんて言ったら信じる人はほとんどいないだろう。筆者の旧知のマスコミ関係者も、与野党の政治関係者すら事前に石破総裁で予想する者は少なかった。それほどまでの「激震」だった。

「地元利権で当選している議員は何をしようと当選します」

 その石破新首相は新総裁として9月30日、首相就任前にも関わらず「解散」を明言、10月27日に衆院選を実施するとした。これが憲法違反かはグレーだが、元々7条解散と69条解散で日本国憲法そのものが体系的に矛盾をはらんでいるとする憲法学者もある。詳しくは措くがGHQ間接統治時代の残滓ともいえる。

 ともあれ石破新首相はいきなり解散に打って出た。3年ぶりの衆院選、有権者は3年間の膿を出す機会をようやく得たと言うべきか。

 しかし先の地方議員はそうならないことを危惧する。

「地元利権で当選している議員は何をしようと当選しますから『選挙で信任されたから裏金も壺も問題なし』になってしまうかもしれません。とくに代々世襲で利権誘導を生業にしてきた議員の地盤は盤石ですし」

 自民党は裏金問題で39人の大量処分を出し、旧統一教会問題についても「いままで統一教会と知らなかった」「あくまで支援団体のひとつ」と釈明に追われた。それでも再選すれば信任、禊が済んだ、になるということか。

 ちなみに旧統一教会と親密な関係にあった議員はとくにインターネットのSNSなどでは「壺議員」と呼ばれて久しい。旧統一教会の霊感商法では高額な壺が使われ、旧統一教会問題が騒がれた2022年の「今年の漢字」に「壺」が入ったりもした。

 その意味でも今回、自民党の裏金と壺で「裏金・壺解散」ということか。

「テレビ報道で裏金や旧統一教会をあまりやらなくなったのもありますが、いまだに情報がテレビの地上波や紙の新聞だけといった高齢の方々はもう忘れている印象です。私の選挙区でも有権者の方々にはピンと来ていない方々も多い。本来、旧統一教会問題や裏金問題で解散して国民の信を問うはずなのにしてこなかった、旧来の手口にまんまとはまっているように思います」

確かに壺も裏金も自民党は禊を済ませていない

 人は忘れやすいものとはいえ本当にコロナ禍も含め、忘れるものだなとは思う。確かに壺も裏金も自民党は解決していない。壺と裏金、一部野党関係者もそうか。

 自民党の若手地方議員は「野党だって壺議員や裏金議員はいる」としてこう話す。

「だからこそ与党野党関係なく、壺や裏金に関与した議員はもっと追求すべきだと思います。それが自分の党のためにもなります。私は自民党であってもこうした疑惑に関与した議員は政治の世界から退場していただくべきと考えています。多くの心ある自民党員だって本音はそうでしょう」

 彼は与野党関係なく国民に対する裏切りでもある壺議員や裏金議員、その両方という議員は退場で構わないと話すが、実際に若手議員や50代から下の有権者は与野党関係なく「壺・裏金」の議員に落選して欲しいという意見が多数を占める。SNSなどは今回の解散総選挙でさっそく「裏金・壺」議員の落選運動が展開されている。

 しかし現実は厳しいという声もある。現役だった昭和の時代から日本の政治を知る革新系の元国会議員は長年の経験からこう語る。

「リクルート事件も東京佐川急便事件もすべて解散総選挙でうやむやになった。それで自民党が下野することもあったが、結局短期間で元に戻った。とくに地方は代々の世襲と利権で有権者の「仕事」と密接に絡んでいる。何をしようと仕事さえくれれば支持するという経営者と、その従業員がそういう壺だ、裏金だの議員を支えている」

野田代表は石破首相の解散に対して「深い失望」

 世襲でなく、まして都市部が地盤だった彼はそうした盤石な地盤というわけにはいかなかったという事情もあるのだろうが、世襲状態で「うちのお殿さま」とまるで幕藩体制の藩主のような存在になってしまっている議員やそういう地方もあることは事実である。さすがにやばいと思ってか、引退を早めて息子を後継候補に立て始める議員も出始めた。

 冒頭の地方議員はあえて壺と裏金に言及した理由を改めて語ってくれた。

「現役世代の多くは壺と裏金に対して本当に怒っている。壺はたくさんの被害者を出し続けたのに自民党は放置どころか議員の多くが加担してきた。それで知らぬ存ぜぬを通して議員を続けている。裏金に至っては脱税の疑いがあるのでは。一般国民なら国税や税務署から普通に脱税と指摘されるかもしれないのに議員はされない、世襲議員は一家安泰、そりゃ怒りますって」

 自民党の石破新総裁、新首相よりひと足先に新代表となった立憲民主党の野田佳彦新代表も「裏金事件というのは脱税事件」と改めて指摘している。また野田代表は石破首相の解散に対して「深い失望」とも語った。新首相、新代表同士の国会論戦となるはずが討論前に解散でうやむや、日本維新の会の馬場伸幸代表はこれに対して「敵前逃亡内閣」とした。

こんな石破茂で自民党はもつのか

 10月4日、石破首相の所信表明演説でも「裏金」というヤジが飛んだ。「深い反省」と言いっ放しのまま、論戦なきままの「裏金・壺解散」で壺も裏金も話題にせず、とっとと解散して禊を済ませたい、信任されたで逃げ切りたい、その思惑が見え見えだと多くの国民が感じていることは事実だろう。

 3年ぶりとなる運命の10月27日の衆院選、これまで跋扈してきた裏金議員、壺議員、その両方の議員がどうなるのか、2021年の衆院選ではコロナ禍に自民党261議席(追加公認含む)の圧倒的勝利、しかし投票率は55.93%(総務省)で有権者の半分くらいしか選挙に行っていない。信任というより無関心、それが問題という声もある。

 2022年に政治として表面化した旧統一教会問題、そして2023年に発覚した裏金問題。それで自民党、石破新首相はまんまと不意打ちとも言える解散、自民党支持者やそうでない保守層の中にもSNSを中心に「せめて高市さんだったら」「だから高市さんにすればよかったのに」と、いまだ接戦で敗れた高市早苗氏を推す声も大きい。

そうした総裁選の余波収まらぬ中で石破新首相の解散勝負、これで自民党はもつのか、総選挙を乗り切ることができるのだろうか。