関連画像

写真拡大

領収書を頼んだら、宛名を間違えられた…。そんな経験はないでしょうか。

横山さんは9月、フードデリバリーをネットで注文した際、「あて名は『横山』宛でお願いします」と打ち込んだところ、そのまま領収書に「あて名は『横山』宛でお願いします様」と書かれてしまったといいます。

「一瞬、え?って思いました(笑)」

弁護士ドットコムニュースの取材に対し、横山さんは領収書の宛名に気づいた時のことを話してくれました。

「個人事業主なので、経費以外のものでも領収書をもらう習慣がついているんですが、この時は、お腹が空いていたので先に届いたお料理を食べて、その後確認したら、こんなことになっていて(笑)いつも利用しているデリバリーですが、初めてでした」

横山さんがあまりに面白いのでこの領収書をSNSに投稿すると、多くの人たちから反響があったといいます。

中には、「私は『上で良いです』って言ったら…『ウェディ様』でした」というコメントを寄せた人もいます。

ネット上には、ほかにも「上様、品代で」でお願いしたら、「上様死なないで」と書かれた、「オガタでお願いします」と言ったら「大型様」になっていた、「無記名で結構です」が「無記名で結構です様」になっていた、といったトンデモ領収書のエピソードがあふれています。

また、間違いではなくても、「上様」という書き方です。実際の名前や会社名とは異なりますが、慣例としてよく使われています。

こうした領収書の書き方は、法的な問題はないのでしょうか。冨本和男弁護士に聞きました。

● 宛名を正しく書かなくてもペナルティはない

--普段、私たちが何気なく使っている領収書には、法的にどのような意味があるのでしょうか。

領収書は、お金を支払ったことの「証明資料」としての意味があります。

相手がお金を受領したことを争った場合、領収書を証拠としてお金を支払ったことを主張することになります。民法で領収書は「受取証書」の一種で、弁済者は弁済受領者に対して受取証書の交付を請求することができます(民法486条)。

--領収書の宛名を正しく書くことは義務付けられていないのでしょうか。また、領収書の宛名を正しく書かないことに、ペナルティはないのでしょうか。

正しく書くことを義務付けた規定までは見当たりませんが、「証明資料」とするために書いていただくわけですので、お金を受領した者には求められれば正しく書く義務があるのではと考えます。

とはいえ、正しく書かなかったことについて、ペナルティまではありません。

● 宛名を正しく書くことが求められる場合は?

--会社では領収書の宛名を正しく書くことを求めていることが多いですが、その理由をお教えください。

領収書は自社がお金を支払ったことを証明するための資料になるからです。領収書を所持していれば、一応、所持者が領収書作成者にお金を支払ったようにも思えますが、他から領収書を不正に入手したのではとの疑いを払拭するため宛名を正しく書いていただくのがベストだからです。

--領収書の宛名を正しく書くことが求められるのは、どのような場合でしょうか。

消費税を納付する事業者からお金を受領した場合です。

消費税を納付する事業者としては、インボイスの要件を充たさない領収書を受領しても仕入額控除の対象とできず、多くの消費税を納税させられることになります。

消費税納付事業者としては、支払った分を仕入額控除の対象とするため、簡易インボイスが認められている事業者以外の事業者にお金を支払った場合、「交付を受ける事業者の氏名または名称」として領収書に宛名を記載してもらう必要があります。

なお、タクシーやスーパー等不特定かつ多数の方に対する事業の場合、宛名のない領収書を簡易インボイスとして発行することが認められています。不特定多数の人を相手に宛名を記載しなければならないとすると事業に支障が生じるおそれが想定されるからです。

そこで、簡易インボイスの発行が認められる事業者から領収書を受領した場合、その領収書をもって仕入税額控除の対象とすることができます。

【編集部注】記事中に誤解を招くような表現がありましたので一部内容を修正しています(2024年10月8日10:40)

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp