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終身雇用と年功序列が崩れたといわれる現代社会。転職も珍しくなくなり、「上司が年下」というケースも。なかには同じ会社を退職した人物と、転職先で再び顔を合わせるということもあるようだ。矢野大輔さん(仮名・40代)も、そのような経験を持っている。
◆毎日上司から怒鳴られる日々

矢野さんは大学を卒業後、システム開発会社に入社。研修を経て、開発部に配属された。そこで出会った上司に、かなり厳しく叱責される日々を過ごしたという。

「私はパソコンに不慣れで、全く知識がありませんでした。入社したのも、面接に落ちて、そこしか受からなかったから(笑)。ところが『プログラマーとして育てたい』という名目で、システム部に配属されてしまい……。私はタイピングもままならない素人なのに。入社からはしばらくは、毎日上司から出されるプログラミングに関する勉強をしていましたが、毎回『なんでこんなのがわからないんだ!』と怒鳴られていました」

◆仕事が終わるまで家に帰らせてもらえない…

矢野さんによると、この上司は仕事に厳しい人物だったという。

「納期の遅れを絶対に許さない人でした。私以外の社員でも『納期が絶対』で、体調や精神のバランスを崩す社員が続出。それでも『納期が近いんだから出てこい』『仕事が終わらないなら、休むな』と強い口調で叱責するんです。1つ上の先輩は病院で血を吐いたそうで、『体調最悪だけど、それでも休むわけにはいかない』と出社してきました。かなり激情型で激しく叱責するので、注意することができる人がいませんでした。また、深夜や休日など、業務時間外でも仕事のメールが来る。仕事熱心なのはわかるけど、ついていけないなという感じでした」

矢野さんもかなりの激務が続いたという。

「右も左もわからない私も、システム開発の仕事を入れられました。上司は『これぐらいならできる』と言われて。しかし、言語意味が理解できず、仕方なく質問しては叱責される日々を過ごしました。この時点で辞めたかったのですが、就職活動に苦労したため、他に行く宛もなく、ひたすら耐えていました。1週間、毎日終電で帰るということもありましたね」

エンジニアとしては優秀なため、注意はするも…

仕事に対して厳しく、社員に無理をさせる上司。会社側は問題視しなかったのだろうか?

「会社にとっては必ず納期までに仕事を終わらせる人物です。かなり評価されているようでした。ある社員が『厳しすぎてついていけない』と訴えたのですが、その社員の部署を異動させたのみでした。会社は年俸制で残業代もつけませんし、重宝する存在なんでしょう。黙認という感じでした。上司の『なにがなんでも納期に間に合わせる』というのは、会社の考えを投影したものなんだろうな、と思いました。

しかし、入社から2年後に上司が突然退職しました。私は話したくもないので、理由を知りませんでしたが、先輩社員によると『もっと良い会社が見つかった。年収も倍、キャリアアップも見込める。俺はこの会社にいるような男じゃない』と自信満々に話していたそうです。私としては、目の上のたんこぶが取れたというか、本当に良かったなと。同僚とは、『あんなプライドが高く、激情型の人物が他の会社でやっていけるのか』と話していました」

◆別の会社に転職し、順調に昇進していく

矢野さんもその後、別のシステム会社に転職したそう。

「上司の退職から2年後、私も『納期になにがなんでも間に合わせろ』という社風に嫌気が差した私は、技術を身につけたところで別のシステム会社に転職しました。転職先では叱責する上司もいないし、ある程度社員の体調も考慮してくれる。自分もこの会社で出世したいと思い勉強を重ね努力した結果、課長に昇進することができました。課長になってからは開発ではなく、マネージメント業が中心になりました。自分が入社時に上司から受けた『なんでこんなことがわからないんだ』という叱責は、絶対にしないと誓い、反面教師にしていました」