(※写真はイメージです/PIXTA)

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一生を添い遂げよう……そう誓い合って共に生きてきた夫婦でも、離婚という結果に至るケースも珍しくはありません。いわゆる熟年離婚。このとき、女性はイキイキとし、男性はしょんぼり、というのがお決まりのパターンのようです。

離婚件数は減少傾向も「熟年離婚」の割合は増加の一途

厚生労働省『令和5年 人口動態統計(確定数)の概況』によると、2023年の離婚件数は18万3,814件。前年比102.6%でした。昨今、離婚件数は2002年、28万9,836件をピークに減少傾向にありましたが、2020年以降は20万件を少々下回る程度で推移しています。

離婚で昨今増加傾向と語られるのが「熟年離婚」。一般的に婚姻20年以上の夫婦の離婚のことをいいますが、2023年は3万9,810件。前年から2.1%増となりました。また離婚件数に占める割合は23.5%。こちらは2009年の16.9%から一貫して増加傾向。離婚のなかでも、「ずっと一緒にいたのに……」という夫婦の離婚が増えているのです。

熟年離婚増加のきっかけになったといわれているのが年金分割。一定の条件を満たせば、婚姻期間中の厚生年金の年金納付記録を、離婚した当事者間で分割できる、という制度です。たとえ、年金を受け取るのはまだ先、というケースでも、分割請求をしておけば、年金受給のタイミングで、分割した分も含めた納付記録に基づき、年金を受給することができます。

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(平均年齢43.6歳)の平均月収は36.3万円、平均年収は596.9万円。常に給与は平均的というサラリーマンが29歳で結婚し、それから25年後に離婚に至ったとしましょう。

【年齢別サラリーマンの平均給与】

20〜24歳:23.2万円/ 359.5万円

25〜29歳:27.1万円/ 449.8万円

30〜34歳:30.7万円/ 516.7万円

35〜39歳:34.5万円/ 580.8万円

40〜44歳:38.0万円/ 631.3万円

45〜49歳:40.6万円/ 670.9万円

50〜54歳:42.8万円/ 707.2万円

55〜59歳:44.1万円/ 725.5万円

60〜64歳:37.2万円/ 571.5万円

※数値左より、平均月収/平均年収

このサラリーマンが20〜60歳まで働き、65歳から手にできる老齢厚生年金は月10.3万円。そして29〜54歳までの25年間、納付した保険料に基づく年金額は月6.85万円。これが分割対象になります。

専業主婦だったり、キャリアの中断が長いと、それだけ将来受け取れる年金は少なくなります。離婚したいけれど、生活ができないから我慢する、というのが一般的でした。しかし、婚姻期間中の年金も分割対象になったことで、老後を安定させることができるように。生活を理由に離婚を我慢しなくても良くなったわけです。

大企業の部長まで上り詰めた勝ち組サラリーマン…転落の理由

岡田浩一さん(仮名・61歳)も、結婚30年で離婚を経験したひとり。結婚して1男1女をもうけ、子どもは2人とも大学に進学し社会人に。マイホームも購入し、すでにローンも払い終えています。会社では大企業の部長にまで昇進。最高月収は120万円、60歳で定年を迎えた際、3,200万円と平均を大きく超える退職金を手にしました。サラリーマンのなかでも勝ち組といっても過言ではないという自負もありました。

これまでの経験を活かしてほしいと誘いがあり、定年を機に異なる会社に転職。新たなステージで奮闘しています。そんななか、妻からの離婚の申し出。まさに寝耳に水だったといいます。

離婚原因はさまざまありますが、ぐうの音も出ないものばかりだったとか。

・子育てや介護を妻だけに押しつけ感謝を伝えない

・仕事に没頭し、家庭を顧みない

・「俺は働いているんだぞ」などと、少々モラハラ気質

一番きつかったひと言は、「老後、一緒にいるイメージが描けない」。65歳くらいまで働き、仕事から引退したら妻と穏やかに暮らす……そんな老後を当たり前のように考えていただけに、大きなショックだったと振り返ります。

半年ほどの話し合いの末、離婚が成立。マイホームには妻が住み続けることになったので、岡田さんは会社近くのマンションで1人暮らしを始めることに。

――1人暮らしなんて学生のころ以来なので新鮮ですよ

そういうものの「家事力ゼロ」というだけあり、家は散らかり放題。またお湯を沸かすこと以外はできないので自炊はできず。食事はカップラーメンが定番だとか。

――カップラーメンにカット野菜をつけたら、栄養面も心配ないですよね

そうはいうものの、ひとり寂しくカップラーメンをすすっていると「惨めだな」と気分が沈んでしまうとか。

――こんな60代を迎えるなんて、思ってもいませんでした。正直、寂しいです……

孤独を感じる日々。いまは現役で仕事を続け、人との交流もあります。しかし、いずれは仕事を完全に引退する日が来るでしょう。そんな日を想像したときに目に浮かぶのは「孤独死」の3文字。そんな最期だけはごめんだと、最近は老人ホームの検索サイトで自分に合う施設はないか探すのが日課だといいます。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年 人口動態統計(確定数)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』