古巣への想いを話してくれた鄭大世。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

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 鄭大世はFC町田ゼルビアを退団(2022年)した後、古巣に対してある感情を抱いていた。

「自分が活躍したクラブには愛着を持てるけど、そうじゃないクラブには愛着を持てないのが正直な感想でした」

 ただ、「僕が退団した後、ガラッと環境もスタッフも変わった町田を最初は他人事のように見ていましたが、彼らの試合をチェックしていくうちに引き込まれている自分がいました」。

「(昨季は)どこまで行くんだろう、どうせ勝てないでしょ。夏に落ちるでしょ、最後もたつくでしょと思ったら、『あっ、(J1に)昇格した』ってなって。『昇格してもダメだろう』って考えていたら、(2節に)名古屋、(3節には)鹿島に勝って。特に鹿島を無力化させた戦いぶりが素晴らしくて、その時点で僕は『町田が優勝する』と言いました。それくらいセンセーショナルでした」

 鄭大世が惹かれたのは、「絶対に失点しない戦術」「リスクを排除したサッカー」をしている部分。彼は「逆に新しい」と新鮮さを感じたという。

 確かに、著者も現場で取材して町田の組織的なサッカーは「美しい」と感じた。ただ、そこに対して鄭大世は持論を展開した。

「結果論でもあると思います。勝っているチームについては勝因を探します。一方で、降格圏にいるチームについては負けている理由を探します。要するに、町田の組織が美しく見えるのは勝っているからと、そんな見方もできます」
 
 そんな鄭大世が「これだけは間違いない」と主張したことがある。

「黒田(剛)監督だけが凄いわけじゃない。そこは皆さんに分かってほしい。ヘッドコーチには実績十分のミョンヒさん(金明輝)がいて、ビルドアップなどを徹底的に教えていると思います。監督とコーチのやりたいことを上手く融合させて、今の結果が出ている。それは選手たちも言っています」

 今季J1リーグの29試合を終えて町田は2位。夏場はやや苦しんでおり、前半戦ほどの勢いは感じられない。ここから、果たしてどうなるか。

 鄭大世は「負け始めたら戻れない可能性はある」と指摘する。

 シーズン終盤戦、町田の底力が問われそうだ。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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