資産形成は、時代の流れで決まります(写真:クラビー/PIXTA)

これまで投資をしてこなかった人も、投資を始めるようになってきました。しかし、お金の本質を知らないと、逆に損をしてしまいます。85歳の現役投資家である石井勝利氏の新刊『85歳、現役・投資家のお金の哲学』から一部抜粋・再構成のうえ、時代の流れに沿って、投資で資産形成をするための考え方をご紹介します。

お金や仕事は時代の流れで決まる

資産形成は、時代の流れで決まります。今は、株価が上がり、不動産価格も上昇しています。

このようなときは、株式投資のスキルを上げて、少ない資金からでも、時代の流れに乗った銘柄で長期に投資することでリターンが得られます。

台湾有事などのリスクもあり、今は防衛関連、中でも三菱重工業が安定して買われる時代です。また、東京の地価上昇、人の集まり、海外からの資金流入もあり、三井不動産など、不動産株に妙味があります。

また、インバウンドの消費はコロナ前の水準を超えており、ホテルやテーマパークにチャンスがあり、この分野の代表も三井不動産です。人の移動から考えれば、JR関連、私鉄などに収益のチャンスがあります。

いま、東京の中心では、日本人に加えて、外国人、とくに台湾や欧米人が目立ちます。彼らは、日本の食を堪能し、「コト消費」に向かっています。関連の開発業者、ホテル業界が伸びます。

また、生成AIの活用は時代の流れです。これに関連する半導体製造装置は、目先の上げ下げがあっても、全体としては上がっていくでしょう。

政府も日本人を「貯蓄優先」から、株、投信などのリスク商品に誘導する「新NISA」に力を入れています。

証券業界も「投資初心者」の育成に力を入れています。とくに、将来ある若い世代に向けて啓発しており、企業も「優待」や「配当」など株主還元に積極的です。

この点で、日本を代表する企業に注目です。トヨタ自動車、ホンダ、三菱重工業、三越伊勢丹ホールディングス、高島屋、三菱電機、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、第一生命ホールディングス、JR各社などに長期で注目しましょう。

地価は、東京、大阪の上昇が目立ちますが、本命は東京。その中でも、千代田区、中央区、港区、渋谷区などの人気とブランド力が鮮明です。

それらに手が届かない人の中では、首都圏へのアクセスのいい郊外の一戸建て、マンションの人気が今後も継続するでしょう。ただし、リゾートマンション、ゴルフ会員権は、不要不急であり、絶対ではないので、よほどの資産家ではない限り安易に手を出さないほうが賢明です。

不動産、投資商品は、リスクがありますが、長期で考えれば、資産価値が上がり、供給に限度がありますので、投資先としては有効です。

お金を増やすには、勉強と経験が肝心だ

日本人には、昔から「守銭奴」とか、「お金は汚い」という言い方があります。しかし、「新NISA」が始まった2024年からは、日本では誰もが投資商品に手を出し、資産づくりに頑張る流れになっています。

本屋に行っても、ネットでも、「新NISA」に関する宣伝が盛んです。これは時代の流れであり、アメリカに比べれば遅すぎるほどです。私たちは、リスク商品である投資信託や株式投資で資産づくりに頑張らなければならないのです。

「私は投資には興味がない」といった遅れた考え方は許される時代ではありません。投資はギャンブルではありません。金融商品には価格変動というリスクはありますが、対象となる企業は、将来に向かい、成長企業として、社会に必要なビジネスを展開していきますので、自分に合ったテーマの銘柄を応援する気持ちで、お金を投じ、その成長の見返りをいただくことになるのです。

最初は、毎月1万円からでも構いません。しかし、対象の企業の業務の中身、業績、株価と割安・割高などなど、判断を求められます。投資判断の物差しであるPER(株価収益率)、PBR(純資産倍率)といった指標も理解しなければなりません。

株価がデータ通りに変化するとは限りませんが、株価は業績の変動にある程度、連動するのは間違いないのです。それに、生成AIというような時代の流れに沿ったブームや、円安で流れ込んでくるインバウンドの動向にも目を向けなければなりません。

その先に、安定した資産運用の成果があります。人から言われたからではなく、自分で投資対象の判断ができるようにすることが、お金を増やす見返りとなります。

それと、もう一つ。株価などの変動商品は、アメリカなどの経済動向、金利、政府の政策などにも影響を受けます。リスク商品なので、お金を入れるタイミング、逃げるタイミングも必要であり、機敏な動き、判断ができるようにしていくことが、安定的な資産運用の鍵となります。

私たちの時代よりも、いまの小学生や赤ちゃんの時代になれば、投資はいっそう当たり前となっていることでしょう。子供たちにバカにされないように、努力を惜しまないようにしましょう。

リスクがあっても踏み出す勇気を

お金を増やす、儲けるためには、多少のリスクがあっても、「ハイリターン」の株式投資や投資信託にお金を向けることが基本です。これらは、理にかなった動きをしますので、経験と知識があれば、高いリターンを得る可能性があります。


一方、教わらなくても、多くの人が手を出すのが、パチンコ、競馬、競輪です。これらは、たまには儲かるが、トータルでは負ける。胴元、お店がシステム的に一定の収益を上げ、残った分を分け合う仕組みですから、勝ち続けられることはないし、長くやっていればお金が増える、ということはありません。

それに対して、株式投資などは、市場にお金が流れ込んでいるときは、買った後に上がる可能性がありますので、収益のチャンスがあります。もちろん、市場からお金が退避しているときは、株価は下がりやすいので逃げなければなりません。

ただ、今の経済、将来の経済になくてはならない事業展開、製品の提供をしている企業は、多少の上げ下げがあっても、利益が伸びる、人気が上がる可能性がありますので、中長期で保有しましょう。

下げたとしても、「逆張り」買いのチャンスがあります。このように、株式投資などで稼ぐには、相場の流れ、企業業績、割安か、割高か、これらを判断する知識や経験値が大きく影響します。

リスク商品である限り、失敗もあります。しかし、失敗をして学ぶという経験の蓄積も、後でチャンスが来たときに大きく稼ぐ準備になりますので、多少の失敗は受け入れて挑戦しましょう。

大切なのは、全資産を傾けず、余裕資金で勝負すること。一か八かの勝負は、失敗すると、身動きが取れなくなりますので、大切な考え方です。

(石井 勝利 : 個人投資家)