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(カナダ・トロントから現地レポート) ジェームズ・オバーの人気コミック『ザ・クロウ』を原作とした1994年の映画『クロウ/飛翔伝説』のリメイク版『The Crow(原題)』がいよいよ2024年8月23日に北米公開。恋人の死をきっかけに復讐の道を歩むことになる青年エリックは、『IT/イット』シリーズのペニーワイズ役で知られるビル・スカルスガルドが抜擢された。人気シンガー・ソングライターのFKAツイッグスがエリックの恋人役を務めるほか、『アビエイター』などのダニー・ヒューストン、『誘拐の掟』のラウラ・ビルン、『デイズ・オブ・グローリー』のサミ・ブアジラらが出演する。

Bill Skarsgård and FKA twigs in THE CROW. Photo Credit: Larry Horricks for Lionsgate

孤独な青年エリック(ビル・スカルスガルド)は、刑務所で出会ったシェリー(FKAツイッグス)と深く恋に落ち、幸せな時間を過ごしていた。しかし、シェリーがエリックに隠していた“暗い過去”がやがて2人を窮地に追いやり、犯罪王のヴィンセント・ローグ(ダニー・ヒューストン)とその手下に狙われてしまう。2人は残酷にも殺されてしまうのだが、エリックは死後、クロノスと出会う。クロノスは生者の世界と死者の世界を隔てる門番のような存在で、エリックに驚異的な力を授け、生者の世界へと戻す。エリックは不死身の体となり、復讐心を燃やして自分とシェリーを殺した人物を追うことに……。

Bill Skarsgård in THE CROW. Photo Credit: Larry Horricks for Lionsgate

冷酷なヴィンセントが自分の手を汚さず人を殺していくシーンが前半に、深い悲しみを抱えたエリックが敵を残虐していくシーンが後半にあり、どちらも息を何度も呑んでしまうほど過激に仕上がっている。ショッキングなシーンが詰め込まれた本作で注目すべきは、主人公エリックの恐ろしい成長だ。エリックは不死身だが痛みを感じる体で、飛び出た骨をもとの位置に戻す時に人間らしく絶叫するのだが、復讐を果たしていく過程でその人間らしさが無くなっていく。体を酷使し、銃弾を浴びながらも鬼の形相で容赦無く敵を追い込んでいくシーンが最大の見どころ。武器として使うのはナイフや銃だけでなく、日本刀も。『キル・ビル』を彷彿とさせる“思い切ったグロさ”満載のアクションシーンが展開され、ビル・スカルスガルドの身体能力を最大限に生かした見事なパフォーマンスに魅了される。

本作は、制作発表当初から注目を集めていた。1994年のオリジナル版映画である『クロウ/飛翔伝説』は、“スターの悲劇”でも話題になった作品だ。ブルース・リーの息子で主演ブランドン・リー(当時28歳)は、撮影中に小道具の銃による不慮の事故で命を落とした。この事故があったことから、『The Crow(原題)』での撮影現場では銃の使用が禁止に。監督のルパート・サンダースは安全な撮影環境にこだわり、軍隊並みの訓練を受けた武器係が雇われた。しかし、監督は十分な安全手順がないと感じ、最終的には「撮影現場で武器の発砲はしない」と決定を下した。実弾も空砲も使わずに、発射機構のないエアソフトガンのみで撮影したこの作品。前述したような銃撃戦が何度も登場するが、フェイクさは微塵も感じられない。リアリティを追求するための相当な工夫がなされたのだろう。

ちなみに主演のビルは、この作品を“リメイク版”として捉えていないようだ。米のインタビューで「私たちはあの映画(『クロウ/飛翔伝説』)をリメイクしようとしていなかったし、その意図もありませんでした」「あの映画と彼(ブランドン・リー)の演技は象徴的なもので、一切手を加えるべきではないと感じています」と述べ、全く違う作品を作ろうとチャレンジしたことに喜びを感じているという。

しかし、本作はリメイク版として発表されていることから、すでに多くの人からオリジナル版と比較されている。映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、『クロウ/飛翔伝説』の批評家スコアが86%、オーディエンススコアが90%だったのに対し、本作は批評家スコア21%、オーディエンススコア64%となっている(8月30日時点)。中には「オリジナル版のような映像的センスがない」との声も。しかし、ビルの言うように“全く違う”作品といった視点で鑑賞することで、よりこの映画の世界に浸れるはずだ。

『The Crow(原題)』の日本公開日は未定。