デザイン会社が母体であることを活かしたハイセンスな空間作り、ビブグルマンシェフによる新感覚の天ぷらなど、独自のスタイルを売りにした次世代の酒場が増えている。

そこに集うのが、東京の夜を盛り上げるイケオジ予備軍たち。感度の高い彼らはただ飲むわけじゃなく、持ち前の審美眼に日々磨きをかけているのだ。

人気エリアである、渋谷・代々木公園・代々木上原・中目黒・虎ノ門から、センス高き酒場6軒をご紹介!


【イケオジ予備軍】
仕事と仲間、プライベートも感度高く過ごしたい


スタートアップで波に乗り、同年代よりお金も時間も余裕もある。しっかりと仕事をしつつ、仲間との良い時間も大切に。トレーニングも欠かせない。

そんな次世代のイケオジたちが集うのは、感度の高いエリアにしかないセンス良き酒場。最先端のアートやカルチャー、ファッションに囲まれて、酒場で洗練の時間を楽しんでいる。


1.渋谷でも最先端を行く、天ぷらとワインで醸し出す大人のセンス
『テンキ』@渋谷



シルバーの星形天井とオリジナルで作った恐竜型ライトが、ナチュラルな資材と調和する店内。店内の一角には、スタンディングスペースも用意される

ワイン好きの大人をご機嫌に飲ませるビストロライクな空間


店に入っても、天ぷら店な気はしない。ワインが並び、ヨーロピアンスタイルと大谷石など日本の資材、アンティークが融合する空間は、洒落たビストロのようだ。しかし、カウンターの中では確かに揚げている。

昨春にここ『テンキ』を作ったのは、ビブグルマンにも輝いたフレンチシェフ・亀谷 剛さん。

「揚げ物は世界中にあって、海外ではよくソースを合わせて食べます。その食べ方を天ぷらに落とし込み、寄り添う白ワインを提案して、新しい天ぷらの楽しみ方を作れたら」と亀谷さん。


具材に合わせて衣とソースを巧みに変えるかつてない天ぷら


「ホタテ」(¥900)は、衣にセモリナ粉を使い、青海苔とレモンを効かせたソースでサッパリと。




「海老」と同じ衣に、ツナのソースや葉野菜を合わせた「ズッキーニ」¥650。



タイ料理の“シュリンプトースト”から着想を得た「海老」¥800。薄力粉、米粉、イーストなどを混ぜて発酵させた、生地のカリフワ食感がヤミツキに


名物の「海老」が分かりやすい。

エビつみれでエビを包み、ビールで溶いて発酵させた生地で揚げ、エビの頭の出汁が効いたアメリケーヌソースとベアルネーズソースを纏わせ、とまるでフレンチのひと皿。



「テンキWINE」など、白を中心に約300種のナチュラルワインを用意。店員によって各天ぷらに薦める銘柄が変わるのも面白い。グラス¥800〜


合わせるのは店オリジナルのオレンジに近い白ワイン。

エビの旨みにジューシーなかんきつのニュアンスが重なれば、その瞬間を誰かに教えたくなる。実際、常連イケオジが後輩や彼女を連れる姿もちらほら。


アートのような美しい前菜も!

きゅうりのマリネやバジルのオイルを添えた「締め鯵のカルパッチョ」¥1,200


確かな基盤をもつシェフが作った絶妙な“抜け感”にこそ、遊び上手は惹かれるのだ。



2.細路地に潜むデザイナーズ酒場では、落ち着いた大人のデートが叶う
『Hone』@渋谷



神泉駅から徒歩1分と至近だが、入口は路地裏の階段を上った奥にあり分かりづらい

路地のさらに奥に潜むエントランスによって完全なる隠れ家に


ただでさえ人通りの少ない狭い路地にあるが、入口はさらに奥まったところに。

このロケーションにまず心をつかまれる『Hone』が、さらに魅力的なのは抜群のセンスをそのまま形にしたような店内。



1階はタイル張りのカウンターを中心とした立ち飲みスペースで、食事の前後に立ち寄れるだけでなく、ここだけを目的に訪れる客もいる


入ってすぐのスタンディングスペースから然りで、弧を描くカウンターに、オープンキッチンが備わって熱気は十分。入店早々テンションも上がるのだ。



古い木造建築をリノベーションした『Hone』。ガラス天板に仕掛けを施したユニークな円卓上にデザイナーズランプが吊るされ、奥にはバーカウンターも備わる


デートで行くなら2階レストランへ。

座る場所によって景色の変わる、さまざまなテーブルがあるが、ベストは円卓。ガラス天板から階下のキッチンがのぞける構造には会話も弾むだろう。


ナチュラルワインで統一されたセラーから、自由にピックアップ

世界各国のナチュラルワインを約200種ストックするウォークインセラー。茅場町のレストラン『caveman』のヘッドソムリエがセレクトを担当


近くには中に入って自らボトルが選べるウォークインセラーもあり、希少なナチュラルワインに出合えることも。

そんな空間を手掛けたのは、デザインを本業とするクリエイティブプロダクションと知って納得。

料理もフレンチで基礎をみっちり学んだシェフが、美しい皿で独自の世界観を披露している。




ビストロの定番をパテ仕立てにして提供する「ブーダンノワール 甘夏と丸人参」¥2,200。




コク深いが、食後感は軽やかな「ヤングコーンとフェンネルのバタースパゲッティ」¥2,200。



「黒毛和牛イチボの炭火焼」(¥4,200)は、千葉から毎週届く野菜を付け合わせに


ただ飲んで食べているだけで、センスが磨かれるように感じるのは連れ立った相手も同じようで、その笑顔を見ていると鼻高々になる。



3.奥渋のムードを纏った店主による、和仏折衷な小料理が美女を虜に
『Arbre』@代々木公園



黒縁メガネでラフな装いにさりげなく“味付け”した佐藤さん。コースターはレザーブランド「REEL」で、黒檀の江戸木箸は曳舟・大黒屋謹製


「目指したのは小料理屋です」と、さわやかに笑う店主の佐藤幹樹さん。

確かに、カウンター主体で8坪という規模からすると一般的な小料理屋そのものだが、受ける印象は別物で唯一無二に映る。



アジアンヴィンテージの照明をはじめ、什器も厳選


「自分も料理人だから志を抱く人が作ったモノだけを扱いたい」と調度品など、細部に至るまで自分好みで統一。

イマドキな佐藤さんの佇まいも相まって、店内には小洒落た空気が漂い、大人ならひいきにしたくなる。


味わいもポーションも大人にちょうどいい、優しくも独創的な料理

1日以上煮て骨まで柔らかい「鮎のオイル煮」¥1,600。枝豆、きゅうり、大葉で仕立てた「グリーンガスパチョ的ソース」で清涼感を添えている


何より、料理が素晴らしい。

仕入れに応じて季節感を表現するが、夏の鮎はコンフィを応用したオイル煮に。



ソース代わりに、肝とすみぶくろを特製醤油に漬け込んだ“墨醤油”を添えた「スミイカ カリフラワー お造り」¥1,400


スミイカならお造りのアクセントにカリフラワーを。「絶妙にずらすのが面白い」と洋のエッセンスをちりばめる。

実は佐藤さん、正統派で修業したフレンチシェフ。縁あって休日に手伝った銀座の日本料理店で和食の面白さに目覚め、最後に勤めた代々木上原『ランタン』でカジュアルの可能性を実感。昨年、独立して『Arbre』を開いた。

和食に深入りしていないのにこの完成度には驚くばかりだが、それこそがセンスなのだろう。居心地の良さは言わずもがなで、淑女のファンも多い。



4.頼れる変形カウンターとSNS映えな名物の数々が、今宵の盛り上がりを約束
『kosamme』@中目黒



この形状には「テーブルでの会話を楽しむ時間も、カウンターらしい店との関わりも楽しんでほしい」との意図がある。シーンにピッタリ合う席を選ぶべし

距離感や角度が絶妙に異なるカウンターが幅広いシーンに対応


未体験の変形カウンターに、一瞬で目を奪われる。キッチンをぐるりと囲み、所々が突き出て、カウンターとテーブルが合体した造り。今春に開業した『kosamme』のそんな個性は斬新かつ効果的だ。

デートなら、小さな山で近い距離感と斜め45度の視線を感じられて、仲間となら先端のほぼテーブルになった席で盛り上がれる。

さらにBGMは平成のJ-POP。例えば椎名林檎や宇多田ヒカルなど、誰もが学生時代に聞いた名曲が流れ、「懐かしい!」と初めての食事でも打ち解ける。


プレゼンや色使いに食指が動く華やかな“酒場料理”

「おばんざい盛り合わせ」(¥980)は、わら焼きまぐろ刺しや合鴨ロースト、茄子の旨煮が並ぶ


乾杯して「おばんざい盛り合わせ」をつまめば胃袋のつかみもOK。



ジャーマンポテトの上にマッシュポテトを絞る「モンブランポテサラ」¥780


ポテサラを頼むとモンブランのように目の前で仕上げられ、その遊び心もまた心憎い。



白だしで炊いた茨城産秋田こまちがベースの名物「ウニとイクラの土鍋ごはん」¥3,800


〆の土鍋ご飯はうにといくらがてんこ盛りで、最後までいまっぽさが効いている。


オリジナルグラスで供されるお酒も多彩

サワーが豊富で、グラスのポップなイラストにも注目。右から「緑茶ハイ」¥580、「コールドレモンサワー」¥650、「日本酒みかんサワー」¥680、「梅乃宿あらごしもも酒」¥630


店名の“kosamme(=小雨)”には雨宿りの気分で気軽に入ってほしいという意味が込められているが、実際は雨がやんでもいたくなるような場所。

食べ慣れた大人もホッとする心地良さは、令和に求められる酒場の条件だ。



5.空間も音も一家言ありのジャンルレス酒場で、男の株は爆上がりする
『Uké』@虎ノ門



中央の大テーブルの他、陶芸家の手掛けた花器など、「作者の顔が見えるものばかりを集めた」と西さん。照明、アート、器などは西さんが自らセレクトしたという

創造性あふれる人気シェフ&バーテンダーがコラボ!


最新の話題店が集う美食街「T-MARKET」において『Uké』は、最も注目を集める1軒。

理由は時代の最先端を行くキーパーソンが共同で手掛けているから。



右から、イノベーティブ、薪火と多彩なジャンルに挑戦する西さん。立ち飲みリカーショップ、カクテルバー&スタジオとお酒の新しい価値を引き出す野村さん。親交の深い同志による待望のコラボだ


そのふたりとは、イノベーティブフレンチ『Neki』のシェフ・西 恭平さんと、『NOMURA SHOTEN』などで知られるトップバーテンダー・野村空人さん。

「ジャンルレスな居酒屋」をテーマに、それぞれが料理とドリンクを創作している。



サクラチップで香りをつけたポテトと卵でお酒が進む「燻製ポテサラ/カラスミ/ミモレット」¥1,100


ポテサラなどの定番に、洗練を加えたらというお手本のような洒落た料理があり、お酒も“前割り焼酎”の進化版といえるタップカクテルが象徴するように斬新。




「キハダマグロ/大葉ジェノベーゼ/美生柑」(¥1,600)は、高知から届く神経締めの鮮魚をカルパッチョスタイルで提供。


独自のビアテイスト飲料やタップカクテルが新感覚!


ビアタップを使って注ぐ特製タップカクテルは、メスカル入り「ほうじ茶割り」(¥1,300)とラム香る「烏龍茶割り」(¥1,200)。

焼酎などを割る独自のビアテイスト飲料「ノッピー」(¥1,100)は、夏場に最高。



「聴覚情報も空間作りには大切」と、『Neki』で音にこだわってレコードを流してきた西さん。新店では“環境音楽”アンビエントを中心に、その時の店のムードに合わせた1枚を選んでいる


シンプルモダンでリラックスできる店内は、ふたりと旧知の仲である「CLOCK」のデザイナーが担当したもので、左官仕上げの大テーブルなど、作者の息遣いが感じられるインテリアを随所にそろえている。

BGMも手を抜かず、こだわりのアナログレコードを用意したのもさすが。

あらゆる点で大人が日常的に通いたくなる居酒屋は、駅直結の利便性とも相まってスマートな大人の切り札になるだろう。



6.“上原”らしい空間で、元パティシエの繊細な感性を分かち合う
『nanca』@代々木上原



大理石のカウンターと磨かれたコンクリートが、しっぽりと大人のムードを醸し出す店内

肩の力が抜けたスタイリッシュさが、上原酒場の真骨頂


代々木上原の人気ビストロ『36.5℃ kitchen』の系列酒場と聞けば、もうセンスがいいに決まっている。

同店が入るビル1階に昨夏開業した『nanca』は、緩さとお洒落さが入り混じるコンクリート打ちっぱなし空間。



ナチュラルワインの空ボトルが並ぶ店内に、雑誌のカバーなども撮影する写真家・北岡稔章さんの作品が映える。展示作品は随時変更される


オーナー・宮本 岳さんの“上原”友達の建築家が内装を手掛け、壁には親交のある写真家の作品が。

いわば“イケオジ予備軍が作った店”だから、その空気感を好む客が集まる。


初めて口にする食材の組み合わせが、知的好奇心を刺激


舌も肥える彼らを満足させるのが、シェフの萩原ちひろさん。

元パティシエの彼女が作るのは、群馬で農業を営む実家の野菜をたっぷり使った、シェアして楽しい料理だ。



柔らかく煮た軟骨を、辛みそねぎや大葉などと一緒に食べる「豚軟骨のポッサム」¥2,000


「飲みながら箸で食べられるように」の気遣いから生まれた“巻かないポッサム”は色合いも美しく女性人気No.1。



「生しらす焼き茄子マリネ」(¥1,500)は、仕上げに濃厚な“からせんじゅ”を削って旨みをプラス


その感性は組み合わせの妙にも表れ、例えば生しらすに合わせるのは、焼き茄子、魚卵の燻製、焦がしにんにく醤油。

そこにオレンジワインを飲めば気持ちいいほどハマる。


これ目当てでも訪れたい期間限定デザートで〆る!

軽やかなデザートとして作った「甘夏のコンポートとゴルゴンゾーラのムース」¥1,400。クレイジーピーが効き、ワインにも合う


ふと、「なんかいい夜だね」が口をつく店名どおりの酒場なのだ。


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