【超損!】医師が診察室で「もったいない」と感じる患者の口グセ2選
人体の構造は、美しくてよくできている――。外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、Twitter(外科医けいゆう)アカウント10万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介し、人体の面白さ、医学の奥深さを伝える『すばらしい人体』。坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)から「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」と絶賛されている。今回は、「山本先生、人体や医学のことを教えてください」をテーマに、弊社の新人編集者による著者インタビューをお届けする。取材・構成/秋岡敬子(ダイヤモンド社書籍編集局)。
「痛い!」だけでは伝わらない
――医師から見て「患者に言われると嫌なこと」があったら教えてください。
山本健人氏(以下、山本) 患者さんに言われて嫌なことは特にありません。ただ、医師に接するときのコミュニケーションのコツ、というのはいくつかあります。
1つは、痛みの伝え方です。
症状を伝えるとき、多くの患者さんは「いかに痛いか」を一番に伝えたい、と強く考える傾向があります。一方、医師がたいてい一番関心を持つのは、「痛みの時間的な経過」です。痛みの経過、つまり、いつから痛みが始まり、今に至るまでどんなふうに変化してきたか、という情報は、とても大切なのです。
もちろん「痛みの強さ」も重要な情報ですが、同じ病気が体の中で起こっていても、痛みを軽く感じる人と重く感じる人とでは個人差がかなり大きいんですね。
また、「症状が増減する因子は何なのか」も重要です。「どんなことをしたときに症状が悪くなるのか、良くなるのか」といった症状を変化させる原因に関する情報があると、医師も病状を推測しやすくなります。
これを知っておくと、待合室で痛みがおさまってしまっても、「一番痛い時を診てほしかった!」と残念に思う必要はなくなりますよね。
――確かに、「さっきまであんなに痛かったのに……!」と待合室で悔しくなることってありますよね。
医師が本当に知りたいこと
山本 医師にとっては、患者さんの痛みが弱まったとしても「痛みが軽くなることもある」という重要な情報になるんです。
「痛みの時間経過や、どうすれば症状が変化するのか」を医師に説明するには、ある程度頭の中で準備が必要です。診察室に入る前に、記憶を整理しておくのがお勧めです。
――私もこれまで診察室で対峙する医師の方には「どのくらい痛いのか」を熱弁していました(笑)。これからは気を付けたいと思います!
「先生だったらどうしますか」は意味がない?
――その他にコミュニケーションのコツはありますか?
山本 もう一つは、僕たち医師がよく聞かれる「先生だったらどうしますか」という質問ですね。聞かれて嫌というわけでは全くありませんが、その患者さんにとってベストな回答が医師から返ってこないかもしれない、ということに注意が必要です。
どういった治療をするかという方針は、病気そのものだけで決まるものではありません。その患者さんの年齢や家族構成、仕事の種類、どのくらいの頻度で通院できるのか、通院にはどんな交通手段を利用するのかといった様々な背景があります。それによってベストな治療は変わることがあるんです。
現代の医療では、1つの病気に対して色んな治療の選択肢があります。「この病気だったらこれ」という一対一のものではないんです。
そういった背景を踏まえると、「先生だったらどうしますか」という質問には「私はあなたには完全にはなりきれないので、あなたにとってベストな回答をするのは難しい」とまずお伝えすることになります。そのうえで、「私ならこうします」と言うようにしています。
また、「先生のお母さんだったらどうしますか」といった質問もよくあります。こう質問する患者さんは、そこで返ってくる医師の答えを選ぶ可能性が高く、医師の個人的な考えに誘導される恐れがあるんですよね。その点に注意が必要であることを僕は伝えるようにしています。
(本稿は、『すばらしい人体』の著者・山本健人氏へのインタビューをもとに構成した)