この記事をまとめると

■いま物流では2024年問題の最中にある

■問題発生の起源1990年に施行された物流二法だ

■物流の1990年問題について詳しく解説する

1990年に物流二法が施行された

 2024年4月1日より始まった働き方改革関連法の物流業界への本格適用。「2024年問題」と呼ばれるこの業界の課題が発生した背景には、ひとえにトラックドライバーの長時間労働や積み下ろし作業など、付帯業務といった過酷な労働環境と、業界全体の運賃の下落にともなうドライバーの報酬の低下にある。この2024年問題の発生の起源は、じつは1990年に施行された「物流二法」にあった。2024年問題を引き起こしたのは「1990年問題」なのだ。

 物流二法とは、1990年12月1日に当時の運輸省によって作られた「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」のふたつの法律。これは物流業界の規制緩和を行う法律で、貨物自動車運送事業法はトラック事業の規制を道路運送法から独立させ、運送業の免許製を許可制に切り替え、さらに路線トラックと区域トラック事業の免許区制を廃止した。貨物運送取扱事業法は運送取次事業を登録制、利用運送は許可制に変更、そして運賃も従来の認可制から事前届け出制に改めた。

 1990年は折しもバブル経済まっただなか。日本の血流である物流が車両とドライバーの不足により滞っていたところを、この物流二法の施行により新たに登録された2万の運送会社、70万人のトラックドライバーが解消させたわけだ。しかし、その翌年から1993年にかけた株価や地価の急落をきっかけにバブル崩壊が発生。景気が低迷するとともに一気に増えた運送会社による過当競争が始まり、それにともない運賃の値下げ競争を引き起こし、そのしわ寄せは賃金低下と労働時間の増加という形でドライバーに降りかかることとなった。

 物流二法の施行以前は、トラックドライバーといえば花形の「稼げる職業」といわれ、事実1970〜1980年代にトラック業界で活躍していたドライバーは、当時相当な報酬を得て、大きな運送会社を起業して成功したり、相当な財産を残している人たちが多く存在する。しかし、規制緩和とバブル崩壊以降は時給単価もどんどん下落。若者世代に敬遠される職業になってしまい、かつ現役ドライバーの高齢化も進み、人手不足→輸送力不足が確実となるといわれている。

 働き方改革関連法の物流業界への本格適用は、トラックドライバーの労働時間を年間960時間に規制することで、過酷な労働環境を改善することを進めている。しかし、その時間規制だけをするだけでは、ドライバーの賃金も減少するという負のスパイラルになりかねないともいわれている。ひとりのドライバーが走ることができる時間が減れば、それはそのドライバーの輸送力も減るということになる。それは売上の減少→賃金の低下ということになってしまう。

 これを解決するには、運賃の値上げは避けて通れないことは間違いない。また、その値上げが達成できたとしても、ドライバーひとりあたりの運行時間は法的に規制されているため、運行便数は減ったままだ。その穴埋めをするためにはドライバーとトラックを増やす必要がある。それを担うドライバーを確保するためにはいま以上の売り上げを生み出さねばならない。そのためにも運賃の値上げは必須。1990年以前の運賃に戻すのは難しいかもしれないが、運送会社と荷主、そして行政が一貫してその取り組みを行い、わたしたち消費者もその値上げを理解しなければ、真の「働き方改革」は実現できないだろう。