(写真:mits/PIXTA)

家でも外出先でも電源が取れるところではスマホをコンセントにつながないと気が済まない人をよく見かける。私はそれを見て、喫煙者が喫煙所を探し回っているのを思い浮かべてしまう。ほぼ、中毒だ。完全にバッテリーがヘタってしまったスマホを使っているなら仕方ないが、最新のスマホでもそれをやっているのだ。

完全にクセになっているのだと思うが、スマホをこまめに充電するのは、実はバッテリーに一番よくない。それはなぜか。

ちなみに最近のスマホには“ケア充電”なる機能があり、どのようなタイミングで充電を行ってもバッテリーに負担がないように設計されている。しかし、そのこと=充電を求めさまよう必要はそもそもないということだ。

負担をかけずバッテリー寿命を延ばすコツ

ケア充電は、充電すべきではないタイミングでは、電源をつないでもスマホを充電しなかったり、充電速度を遅くしてバッテリーへの負担を軽減するというもの。その仕組みや設定方法、それから急速充電やQi2が端末のバッテリー寿命にどう影響するかなどを含め、解説する。

「スマホ充電を根本から変える3つの処方箋」

現代社会において、スマートフォンは私たちの生活に欠かせない存在となっている。しかし、その便利さと引き換えに、多くの人々が新たな"依存症"に苦しんでいる。そにひとつに、スマートフォンの充電に関する過度の不安と強迫的な行動が挙げられる。

しかし、皮肉なことに、このような“こまめな充電行為”は、長期的に見るとバッテリーにとって最悪の扱い方だ。なぜ、このような矛盾が生じるのか。その仕組みを理解するには、スマートフォンの電源であるリチウムイオンバッテリーの特性を知る必要がある。

知っておきたい正しい充電方法

スマホに搭載されているリチウムイオンバッテリーは消耗品だ。日々使用する中で徐々に蓄電能力は失われていく。充電と放電を繰り返すたびに、バッテリーの容量は少しずつ減少していくという宿命を背負っているのだ。一般的な目安として約500回の充放電サイクルを経ると、バッテリー容量は初期の70%から80%程度にまで低下する。つまり、毎日充電を行う使用者なら、1年半ほどでバッテリーの劣化を実感し始める。

しかし、この劣化プロセスは私たちの日常的な充電習慣によってさらに加速される可能性がある。

バッテリーの寿命を延ばすには、充電管理を適切に行う必要がある。理想的なのは、バッテリー残量を20%〜80%の範囲内に保つことだ。極端な低充電(20%以下)や常時満充電(100%)は避けるべきだが、現代のスマートフォンには過充電防止機能が搭載されているため、100%充電してもさほど問題はない。

温度管理も重要な要素だ。35℃以上の高温環境での使用や充電は、バッテリー劣化を加速させる。夏の暑い日に充電しながら使ったり、カメラで動画撮影すると発熱を招き、バッテリーに負担をかける。

では、スマホバッテリー問題にどう立ち向かえばよいのだろうか。効果的な対策は私たちの身近なところに存在している。本記事では、スマートフォンの充電問題を根本から変える3つの処方箋を紹介する。

処方箋1:充電の最適化機能を活用する

スマートフォンの価格上昇に伴い、買い替えサイクルの長期化から業界全体でバッテリー劣化を防ぐ充電制御技術が課題となっている。すでに多くのメーカーが、独自の充電最適化機能を搭載している。これらの機能を活用することで、バッテリーの寿命を延ばし、充電に関する不安を軽減できる。

iPhoneには「バッテリー充電の最適化」という項目があり、Galaxyにも「バッテリーを保護」という項目がある。Xperiaやarrowsも同様の機能を搭載する。これらはユーザーの充電パターンを学習し、バッテリーの劣化を抑制する仕組みを採用している。


iPhoneでは、「設定」→「バッテリー」→「バッテリーの状態と充電」と辿るとバッテリーの状態を確認できる。バッテリー充電の最適化は、ここからオンにできる(筆者撮影)

こうした充電最適化技術は、あえてゆっくり充電してバッテリーの消耗を抑える仕組みになっている。例えば、夜間に充電する習慣がある場合、80%まで急速充電した後、朝まで残りの充電を遅らせることで、バッテリーにかかる負荷を軽減する。また、充電が一定レベルに達すると充電速度を落とし、バッテリーへの負担を軽減する機能もある。

これらの機能を活用するには、スマートフォンの設定を確認し、該当する機能を有効にする必要がある(初期設定ではオフになっていることが多い)。たいていの場合、「設定」→「バッテリー」または「電池」の項目にある。

充電の最適化機能を活用することで、バッテリーの寿命を延ばすだけでなく、充電に関する日々の不安も軽減できるだろう。

処方箋2:バッテリーを交換する

すでに劣化を感じている場合、直接的な解決策はバッテリー交換だ。多くのユーザーは、スマートフォンのバッテリーは交換できないと思い込んでいるか、面倒そうと感じているようだ。

ガラケー時代には、電池パックは最も簡単に交換できた。現在のスマートフォンは電池は筐体に内蔵されており、簡単に交換できる機種は少ない。京セラのTORQUEシリーズのようなアウトドア向けの機種を除けば、電池パック交換式のスマホは絶滅危惧種と言える。

しかし、多くのスマートフォンは、メーカー修理という形でバッテリー交換を受け付けている。この選択肢は、思いのほか手軽で効果的な解決策だ。


一定の条件を満たせば、無償でバッテリーを交換できるのはiPhoneユーザーにとって大きな魅力(写真:forden/PIXTA)

iPhoneの場合、AppleCare+に加入しているか、または標準保証期間内(1年)であれば、バッテリーの最大容量が80%未満になった場合、無償で交換できる。これは多くのiPhoneユーザーにとって非常に魅力的な選択肢となるだろう。

交換のメリットは、新品同様のバッテリー性能を取り戻せることだ。初期費用と、本体を預ける手間がかかるが、長期的に見れば最も経済的な選択肢だ。

処方箋3:バッテリーシェアサービスを利用する

スマホのバッテリー切れが心配でならない人にとって、モバイルバッテリーのシェアサービスは魅力的な選択肢といえる。近年、コンビニやカフェ、駅ナカなどでモバイルバッテリーを手軽にレンタルできるサービスが広がっている。出かける際、駅のレンタルボックスでバッテリーを借り、帰りにコンビニで返却するといったふうに気軽に利用できる。

業界最大手「ChargeSPOT」は、国内に4万台以上のバッテリースタンドを設置し、多くのユーザーが利用している。貸出はスマホアプリで行い、返却はバッテリーをボックスに預けるだけと非常にスムーズ。利用料は1時間未満が330円、1時間以上3時間未満が430円となっている。


コンビニ店頭に設置されたChargeSPOT(提供:INFORICH)

サブスクリプション型サービスの「ChargeSPOT Pass」もある。月額390円で1回までレンタルでき、2回目以降は1回ごとに390円の追加料金が発生する仕組みだ。月額料は上限1950円に設定されているので、頻繁に利用する人にとっては経済的にもお得な選択肢となる。

日頃から1と2で紹介した方法でバッテリーの健康を維持することが大切だが、どうしても充電が必要な場面で、ChargeSPOTのようなモバイルバッテリーのシェアサービスを上手に活用するといいだろう。自分のライフスタイルに合ったプランを選び、賢く利用することで“スマホ充電ゾンビ”にならずに済むかもしれない。

(石井 徹 : モバイル・ITライター)