子どもが反抗するのは、単に反抗期だからという言葉で片付けられるものではなく、もしかしたら親が「イライラ期」に入っているだけなのかもしれないのです(写真:NOBU/PIXTA)

【質問】

小6女子と中2男子の2人の子がいます。2人とも反抗期に入ったのか親として対応が大変です。「ああ言えば、こういう言う」など口答えもしてきます。特に勉強や生活面ではすべて反抗してくる状態です。この反抗期は一体いつまで続くのかと思うと、憂鬱になります。どうすれば、子どもを言い聞かせることができるでしょうか?

大内さん(仮名)

思春期は理由のわからないイライラを抱える期間

子どもの反抗期は一般に、「第1次反抗期が1歳〜3歳半、中間反抗期が5歳〜10歳、第2次反抗期が11歳〜17歳で、特に思春期と言われる時期とも重なる第2次反抗期は、子どもたちは理由のわからないイライラを抱える期間」と言われます。

確かにその通りかもしれませんが、筆者は異なった視点を持っています。これまで4500人以上の子どもたちを直接指導し、1万3000人以上の保護者の方から相談を受けてきた経験に基づくお話になりますが、「子どもの反抗期」は、もしかしたら「親のイライラ期」なのかもしれないということです。特に大内さんのお子さんの年齢からすると第2次反抗期ですが、それは子どもが反抗期だから反抗しているのではなく、親がイライラ期だから、子どもを反抗する状況にしてしまっているのかもしれないのです。

ですから、「子どもをどうやって言い聞かせるのか」ではなく、「親が自分の今の状態を理解すること」が現在の状態を解決する近道だと考えます。

通常、子どもの反抗期と親のイライラ期の関係には次の2つのケースがあります。

(1)子どものイライラに親が巻き込まれ、親が余計なことを言ったり、やったりして子どもが反抗し親がイライラ期に入るケース

親が子どもに巻き込まれる場面は多々あります。これは第1次反抗期から中間反抗期では特にそうです。子どもはまだ自分の感情をコントロールすることはできず、本能のおもむくままに行動と発言を繰り返すことが少なくありません。そのとき親が、子ども視点ではなく、大人視点で対応してしまうとイライラが発生し、子どもには通じない理屈や力技で子どもに言うことを聞かせようとします。しかし、大抵は、子どもの猛烈な反発にあい、失敗に終わります。このような日々が一定期間続くと「親のイライラ期」に入ります。

(2)親がもともとイライラ期であるため、子どもの短所や欠点、不足点が目につき子どもに「指示・命令・脅迫・説得」構文を使った声かけが頻発することで、子どもが反抗するケース

子どもが反抗するということは、そもそも先に親が何か言ったり、やったりしなければ、子どもは反抗のしようがないということです。

保護者から受ける相談の多くは、「子どもが反抗する場面」から話が始まります。子どもの反抗の前に“何か”があるわけです。では、その何かはなぜ起こるでしょうか。

第2次反抗期は親も大変な時期

子どもが第2次反抗期と言われる年齢帯はちょうど親も大変な時期です。子どもを育てて10年以上がたち、子どもの学校の勉強は難しくなり、テストの点数が気になり、成績なるものが出され、部活や受験や進路を考え、「もう○歳なんだからこれくらいできて当たり前」という考えも芽生えます。子どもがスマホを持つ時期でもあり、ゲームや動画視聴などの管理をどうするかも気になります。このように親として子どもに求めることがかなり増えてきます。一方、親も日常の家事に加え、フルタイムの仕事をしていれば、管理職として仕事場でも責任とプレッシャーの中で働いているかもしれません。つまり、親がイライラ期に入っている可能性が高いのです。

大内さんのケースはおそらく(2)のケースだと考えられます。ではどうすればいいでしょうか。

一般には、子どもが反抗期に入ったら、親は「子どもの話をよく聞く、否定しない、すぐに怒らない、子どもを信頼する、見守る」ことが大切と言われますが、それができれば誰も苦労はしません。ましてや、それができないイライラ期に入っているのですから、いきなりそのような対応はできないと思います。

まずは「子どもの話をよく聞く、否定しない、すぐに怒らない、子どもを信頼する、見守る」ことができる親の心理状態を作らなければ、いくら努力してそのような振る舞いをしても、すぐに元に戻ってしまいます。

そこで、そのような心理状態になるために、「子どもの5つの特徴」について認識してみてください。この5つがわかると、親がイライラ期に入っていても、子どもへの見方が変わっていくと思います。見方が変われば、声かけや態度が自然と変わっていきます。その結果、子どもの反抗は減り、良好な親子関係を築くことができます。

【イライラ期の親が知るべき子どもの5つの特徴】

(1)親は成長していないが、子どもは日々成長している

親はすでに肉体的にも精神的にも成長は鈍化しており、それほど大きな変化は日々ありません。しかし、子どもは変化の連続です。去年の子どもと今年の子どもはかなり変わっているはずです。その変わっていることを見ずに、親が抱いた期待と目の前の子どもの状態を比較したら、期待値は常に現実より高いため、いつまでも期待通りにはなりません。今の状態がずっと続くことはありません。必ず変わっていくものです。子どもは日々、変化していくからです。

先回りして準備や声かけをするのは適度に

(2)子どもは「今」にフォーカスしており、親は「未来」にフォーカスしている

大人になると過去、現在、未来という時間軸が出てきます。未来の概念があるから、今は不安になり準備をします。しかし、子どもはまだこの時間軸が確立していないことが少なくありません。すると、子どもは「今」だけにフォーカスし、今楽しいことだけ、今やりたいことだけをやる傾向にあります。大内さんの場合はお子さんの年齢からして、もうじき時間軸が出てくるようになりますが、親がいつまでも先回りして準備や声かけをしていたら、子どもの自律は遅れますので、適度にされるのがよいと思います。

(3)子どもはまだたった○年しか、この世界を経験していない

子どもが10歳なら、たった10年しかこの世界を経験していません。しかも行動範囲と思考範囲が狭い中での経験です。そのような子どもと、何十年も生きてきてさまざまな経験をした大人では、思考の視点も深さも異なります。

そのような異なる親子で、バトルする、言い合いするのはおかしさがあります。他人の子であれば、そんなに本気で“戦う”ことはないのに、我が子になるとなぜかバトルが始まります。それは感情が前面に出てしまうからだと思いますが、そのようなとき、ふと「まだ○年しかこの世界を知らないからね」と思い返すと、冷静になれるときがあります。

(4)子どもは自分の気持ちを表現する適切な言葉を知らないし、正確に表現もできない

子どもは、大人ほどボキャブラリーが豊富ではありません。ですから、自分の気持ちを適切な言葉を使って表現することができません。例えばネガティブな状態を表現する場合、「やりたくない」「嫌い」と使用頻度の高い言葉を使って表現するのみです。その背景に自分が置かれた事情があっても、それを正確に表現することもできません。すると親が問い詰めていくことになりますが、そのとき質問をするのではなく、怒り口調で問うため、子どもは心を閉ざしていきます。子どもの口から出てきた言葉は、本音ではない可能性もあることを知っておくといいと思います。

(5)子どもは親のやっていることをよく見ているし、話もよく聞いている

子どもは親のやっていることをよく見ていますし、言葉もよく聞いています。例えば、手いたずらばかりしていて話を聞いていない子に「話をしっかり聞きなさい!」と怒る人がいますが、実は子どもはよく“聞いて”います。聞いてはいますが、親が子どもに「指示・命令・脅迫・説得」構文で話した内容は受け入れません。ですから聞いていないと勘違いしてしまうのです。

直接言い聞かせるより、間接的に耳に入れる

逆にこの特徴を活かす方法もあります。子どもに直接言い聞かせる話をするよりも、間接的に耳に入れる方法です。すると、子どもの心に伝わり、行動することがあります。

例えば、頑固で親の言うことをいっさい聞かない夜ふかし型の兄がいたとき、妹に「早寝早起きすると翌日絶好調になるみたいよ」と兄が聞こえるところで話をすると、それを小耳にした兄はいつしか行動が変わることがあります。これを間接話法と筆者は名付けています。このように、直接言われるよりも、横で話をしていることのほうが気になるという人間の特徴を活かす方法があります。


以上、子どもが反抗するのは、単に反抗期だからという言葉で片付けられるものではなく、もしかしたら親が「イライラ期」に入っているだけなのかもしれないという話でした。もし、イライラ期であれば、5つの子どもの特徴を思い返してみてください。すると気持ちが少し変わってきます。

その結果、「子どもの話をよく聞く、否定しない、すぐに怒らない、子どもを信頼する、見守る」がやりやすくなっていくと思います。


この連載の記事一覧はこちら

(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)