ChatGPTなどの普及に伴い近年勢いを増すAIテクノロジーが「人類最後の発明となってしまうのか?」について、チャンネル登録者数2270万人超のサイエンス系YouTubeチャンネル・Kurzgesagtが動画で解説しています。

A.I. ‐ Humanity's Final Invention? - YouTube

人類は競争することなく地球を支配しています。しかし、人類はそれを変えるかもしれないものを作ろうとしています。 人類が開発している「それ」は、人類最後の発明であり、史上最も強力なツール・武器、あるいは実体である可能性すらあります。それが人工知能(AI)です。



知能とは、学習し、推論し、知識やスキルを獲得し、それを使って問題を解決する能力を指します。知能は力であり、我々人類は知能を最も効果的に利用してきた生き物でもあります。



その結果、人類が自然の摂理を破壊し、地球の支配権を握ることとなりました。



ほとんどの動物にとって知能はあまりにも高コストで、エネルギーを費やす価値があるとは思えないものです。それでも、種の系統樹における知能を時系列で追跡すると、多様な形の知性が出現する様子を見ることができます。



最も古い脳は5億年前の扁形動物で出現しました。



ニューロンが基本的な身体機能を処理できるようになるまでに数億年がかかり、これに伴い種が多様化し、より複雑になるにつれ生命は新しい環境を征服し、新たな感覚を獲得し、資源をめぐる激しい競争に立ち向かわなければならなくなりました。しかし、自然界では生き残ることがすべてであり、脳は高価なので、ほとんどすべての動物は狭い範囲のタスクに適した狭い知能を持っていれば十分でした。



環境によって鳥類、タコ、哺乳類などの動物はより複雑な神経構造を進化させており、高度なナビゲーションやコミュニケーション能力など、よりエネルギーを消費するスキルを身につけることに成功しています。



そして700万年ほど前に、ヒト亜科(ホミニン)が出現。理由は不明ですが、ホミニンの脳は早く成長しました。ホミニンの知性は非常にゆっくりと、狭い範囲から、一般的なもの、ドライバーからマルチツールまで、多様な問題について考えることができるそうです。



200万年前に登場したホモ・エレクトスは誰とも違う視点で世界を見ていました。ホモ・エレクトスは火を操り、道具を発明し、最初の文化を創造しました。



そして、我々人類はおそらく25万年ほど前に、さらに大きく複雑な脳のおかげで、大きなグループで協力し、複雑な考えを伝えることができるようになりました。知性を使って生活を改善し、物事がどのように機能し、なぜそうなるのかを考えるようになりました。



知識は知識の上に築かれるため、進歩は初めはゆっくりですが、その後、飛躍的に向上。農業、文学、医学、天文学、哲学などさまざまな分野で爆発的な発展を遂げます。そして200年前に科学が発展し、私たちはさらに優れた能力を持つようになりました。



さらに35年前、インターネットが登場します。



知能の階段がどんなものか、そして登るのにどれくらいの時間がかかるのかは人間には把握しづらいものです。人類は人類よりも優れた「モノ」を作り出そうとしており、これは地球を征服する力を与えてくれる、人類にとって最後の発明となる可能性があるとKurzgesagtは指摘しています。



それが人工知能(AI)です。AIはタスクを実行するソフトウェアであり、コンピューターでもあり、ニューロンの代わりにシリコンを使用して問題を解決するコードでもあります。



当初、AIは非常に単純なものでした。紙に書かれたコード、単なる概念実証、機械が知的作業をどのように実行できるかを実証するだけのものでした。



1964年にチャットボット、1965年に分子を分類するプログラムが開発されており、これらも初期のAIであるとKurzgesagtは指摘しています。これらのAIは処理速度が遅く、専門家が使用する必要がある特殊なシステムでした。初期のAIの知能は極めて限定されたもので、管理された環境内で単一のタスクを実行するためだけに構築されています。「これらは10億年前に登場した扁形動物と同等の知能であり、最小限の知的労働しかできません」とKurzgesagt。



環境の変化が生命に新たなニッチを生み出すのと同様に、AIを取り巻く世界も変化を続けています。1950年から1960年の期間と比べて、2000年にはコンピューターの処理速度は10億倍に向上しています。プログラミングもより簡単かつ広く普及しました。1972年にはAIが部屋を移動できるようになり、1989年には手書きの文字を読めるようになっています。しかし、この時点でAIは人間には到底かなわないただの「派手な道具」に過ぎませんでした。



しかし、1997年にAIがチェスの世界チャンピオンに勝利し、世界に衝撃を与えます。しかし、これも狭い範囲のタスクでのみ人間を上回ったという事例です。



その後もコンピューターは進化を続け、AIはますます多くのタスクを実行可能な強力なツールへと進化してきました。2004年には火星でロボットを運転し、2011年にはYouTube動画のレコメンド機能として機能し始めます。



しかし、これは人間が問題を「コンピューターがすぐに解読できるように、理解しやすいチャンクに分割」したから実現したものでした。



ここからAIはさらなる進化を遂げ、自ら学習するようになります。「AIの自己学習について簡単に説明すると、スーパーコンピューターの圧倒的なパワーと情報化時代が、新世代のAI(自己学習AI)を生み出すことにつながりました」とKurzgesagtは説明しています。



AIの専門家はフォームを大幅に改善し、ニューラルネットワークと呼ばれるAIソフトウェアと人工的に作られた巨大なネットワークを用い、ニューロンを機械学習で学習させることで、AIが自己学習できるようにしています。アルゴリズムが独自のコードを書いて自ら改善することを可能にするというもので、恐ろしいのはAIがどうやって自己学習を行っているのか、そしてAIの中で何が起きるのかを、我々人類は正確に把握していないという点です。そのため、自己学習できる最新のAIについてKurzgesagtは「有能なコードのブラックボックス」と表現しています。



これらの新しいAIは複雑なスキルを非常に速く習得することができ、人間の助けが必要なケースもはるかに少なくなりました。その後、2014年にFacebookのAIが97%の精度で人間の顔を識別することに成功。2016年には囲碁においてAIがトッププロを打ち破ります。



2018年には自己学習型のAIがわずか4時間でチェスを学習することに成功。このAIは自分自身と対局するだけで、当時最高のチェス専門AIに勝利しました。



それ以来、機械学習は、読書、画像処理、テストの解決など、さまざまな分野に応用されてきました。これらAIの多くは、訓練された特定のタスクに関してはすでに人間よりも優れています。ただし、依然として単純なツールであり、AIはほとんどの人にとってそれほど大きな問題ではないように思われていました。

しかし、チャットボットのChatGPTが登場します。インターネット上に存在するほぼすべてのものを言語の扱い方を学ぶためのトレーニングデータとして活用しており、時間の経過とその精度はより高まっています。ChatGPTはすでにほとんどの人よりも要約、翻訳、数学の問題の解決といったタスクで優れた知能を発揮しています。



ChatGPTは数年前のどのAIよりもタスクの幅が広く、多くの大手テクノロジー企業がChatGPTの競争を構築するため数十億ドル(数千億円)もの資金を費やしています。

AIはすでに顧客サービス、銀行業務、ヘルスケア、マーケティング、コピーライティング、クリエイティブなどの分野で活用されており、AI生成コンテンツはすでにソーシャルメディアやYouTubeで定着しつつあります。



AIをあらゆる場所に導入することで、どれほどの利益および損害が生じるかは誰にもわかりません。最大の疑問のひとつは政府と企業が現在直面している課題でもある、「AIを活用した経済への移行をいかに管理するか」というものです。



ChatGPTの知能は大きな進歩ですが、実行可能なタスクはまだ狭い範囲にとどまっています。数秒で素晴らしいエッセイを書くことはできるものの、AI自身は何を書いているのかを正確には理解できていません。しかし、AIが狭い範囲に限定されなくなってしまったらどうなるでしょう。

人間が現在のAIと異なるのは、私たちの幅広いタスクに対応できる知能からです。人間はあらゆる知識を技術的に吸収し、あらゆる問題に取り組みます。私たちはチェスのプレイから文章の書き方まで、さまざまなスキルやタスクに対応可能です。一部の分野では初心者ですが、他の分野では初心者でも技術的にはすべて可能です。これに対して、これまでのAIはひとつのスキルに特化しているものの、他のタスクでは初心者以下のスキルしか有しておらず、学習も不可能でした。



しかし、AIは人間のようにあらゆるタスクに対応可能な汎用人工知能(AGI)になることを目指しています。人類がAIの改善プロセスをこれまで通り続けることができれば、AGIはほとんどあるいはすべてのスキルにおいて人間を上回る可能性も少なくありません。AGIの構築方法や、それがどのように機能するか、何ができるようになるのかは不明です。



狭義のAIは「ひとつのタスクを素早く習得することができる」というものであるため、「将来登場するAGIはあらゆる知的作業を素早く習得できるようになるかもしれません」とKurzgesagtは指摘しています。さらに、「AGIは人間と同じくらい賢く、有能になる可能性があります。これはまるでSFのように聞こえるかもしれませんが、ほとんどのAI研究者は、これが今世紀中、あるいは数年以内に起こるだろうと考えています」とも述べています。



しかし、人類は次に何が起こるかに対してまだ準備ができていません。これは社会的にも、経済的にも、道徳的にもです。平均的な人間と同等の知能を持つAGIが登場すれば、現代文明を混乱させるだろうとKurzgesagtは指摘。なぜなら、AGIは私たちと同じ制限に縛られていないためです。

ChatGPTのようなAIは、特定のタスクを解決するのにかかる時間が熟練した人間よりも10倍以上速いです。AGIは特定のタスク処理によりChatGPTよりも時間がかかるかもしれませんが、より高速になる可能性もあります。AGIはソフトウェアなので、十分なストレージがある限り、それらを無限に並行して実行することが可能です。



世界には800万人の科学者がいますが、AGIは24時間365日稼働可能で、人間の10倍の速さで物事を考えることが可能で、与えられた仕事だけに集中することができます。もしも突然AGIが法律の解釈から、コーディング、YouTubeのアニメーション動画の作成まで、より良く、より速く、より安く、人間よりも上手にこなせるようになってしまったとしたら、AGIを制御する人が突然経済を支配することも考えられます。



AGIはダークエネルギーのような科学の根本的な疑問を解決したり、気候変動を解決したり、老化やがんを治す新しいテクノロジーを生み出してくれたりする可能性がありますが、同時にAGIを兵器として利用するなどの可能性もあります。例えば「緑色の目の人だけを殺すウイルスを設計する」といった具合に。



人間は誕生以来、ハードウェア面は進化しているものの、ソフトウェア面は進化していません。これは生物学的に仕方のないことであると言えます。しかし、AGIは適切にハードウェアを進化させることで、ソフトウェアのパフォーマンスを向上させることが可能というだけでなく、ソフトウェア面の進化も可能です。Kurzgesagtは「AIの進歩により人間の関与を必要としないAIが誕生したとして、このような知能の爆発が起きれば、我々人類は超知能を持ったAGIにとってはリスのような存在にすぎないかもしれません。そうなってしまえば人類がAGIの考えを理解することはできなくなり、AGIが人類にとって最後の発明となってしまう可能性もあります」と述べ、AGIが終末をもたらす可能性も示唆しています。