日経平均株価は4万2000円台の最高値をつけた後、急落。いよいよ株価の大暴落が始まったのだろうか(写真は2008年、ブルームバーグ)

ついに株価の大暴落が始まったのか? わからない。

相場の大転換点が来ているのか? 間違いない。

この2つの問いは、決定的に違う。なぜなら、バブルであることは判断できても、バブルが厳密にいつ崩壊し始めるかはわからないからだ。

だから、大暴落が始まった正確な時点(ポイント)は事後的にしか判断できないが、大局的には、バブルの上昇局面か、高原状態か、暴落局面か、次のバブルまでの停滞局面か、これらの4局面のいつに当たるかは判断できるからだ。

相場の大転換点が来ているのは99.9%間違いない


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら

確かに、判断できるといっても、それは100%客観的な事実として確定はできない。しかし、世の中のすべての事象は確定できないものなのだ。

哲学者カール・ポパー(1902〜1994)の言葉を借りるまでもなく、科学的理論とはすべて仮説にすぎないのであり、バブルであるかどうかの判断も永久に確定はできない(1929年の大暴落も、2008年のリーマンショックも、1万年後から見れば、調整局面にすぎないかもしれない)。

だから、あくまで判断にすぎないのだが、相場の大転換点が来ていることは、まともに金融市場を観察している99%の人にとっては間違いのない事実と思えることであり、私の個人的な判断としても99.9%間違いないと主張できる。

一方、大暴落の開始であり、今後、反転して現在の水準を超えてくるかどうかは、誠実に自分の判断を言葉にする人にとってはわからないとしか言えないし、私もなんとも言えないと言うしかない。

しかし、そうだとしても、これは調整局面であり買い場であるということは99.9%ない。もし、そういうアドバイスをする人や証券会社があれば、今後、一生、彼らを信用しないほうがいい。

なぜなら、ここから反転するとしても、日経平均株価で言えば4万5000円になる可能性は極めて小さいが、3万2000円になる可能性はそれなりにあるからだ。明らかに下落するリスクの大きさのほうが上回っている。反転と継続下落の可能性が五分五分であったとしても、「買い場である」という判断は99.9%できない局面だ。

多くの人が「下落の確率が高い」と思っている3つの理由

そして、より重要なことに、反転と下落が五分五分ではなく、多くの人が下落の確率のほうが高いと思っている。理由は以下の3つだ。

第1に、下落の原因が米国株の大幅下落によるものだからだ。その下落は、ダウ30種平均株価では直近6営業日のうち4日間、ナスダック総合指数は7営業日のうち6日間も下がっているからだ(現地時間7月25日現在)。下落幅も比較的大きく、24日の下落はナスダックで3.6%にもなった。

第2に、米国株の下落は同国の中央銀行であるFEDの金融政策の見通しの変化によるものでなく、自動車メーカーであるテスラの決算などからハイテク株が連鎖的に大幅下落となったからだ。つまり、決算要因が主体であり、また、これまでの上昇を牽引してきた同社も含めた「マグニフィセント7」やその他のハイテク株によるものだからだ。これは、金融相場ではなく、企業業績というファンダメンタル中のファンダメンタルのニュースによるものだからだ。

第3に、25日の日本株においては、出来高が最近の低調ぶりから一変して大商いとなったからだ。中長期の現物の売りも出てきているとみられ、先物主導の上げ相場の調整とは異なる様相を呈しているからだ。

さらに、私としては、大転換点であることを確信させる重要な材料がある。それは、2度目の暴落局面だと考えるからだ。

バブルの典型的な特徴とは何か

バブルは二度崩壊する。これは、私がリーマン崩壊前から主張しているバブルの特徴だ。リーマンショックのときは、1年前の2007年8月にパリバショックがあった。これでどう見ても、世界的な債券市場、とりわけ仕組み債の市場は完全崩壊していたのに、なぜか株式市場は上昇を続けた。

しかし、実質的にはパリバでバブルは崩壊していたのである。賢明な投資家、余裕のある投資家たちはそこで手仕舞いをしていたのであり、余裕のない、あるいは強欲な最後まで儲けたい投資家たちが最後のバブルにも乗ろうとしたのである。前者の代表格がゴールドマン・サックスであり、後者がリーマン・ブラザーズである。

そして、そのほか多くの投資家たちは1回目のバブル崩壊でそれまでの含み益を吐き出し、飛びこそしなかったが余力がなくなっていた。しかし、逃げ切れずに損切りができなかったり、いったん相場が戻す局面で「これはバブル崩壊でない」との願望を満たすような材料を信じて、本当は不安なまま、びくびくしながら乗り続けていたのだ。

そのような状態では、二度目のショックが来るともたない。みながいっせいに逃げ出す。リーマンショックはあまりに明確であったから迷う余地がなかったが、あれほど明確でなくとも2回目の暴落ではみな逃げざるをえない。

私は、こうした状態が今の局面に当てはまると思う。2008年のリーマン(約1カ月で40%超の暴落)のことを考えると、今はそれほど下落していないように見える。

だが、例えば日本株なら、日経平均は2024年3月下旬にピークを迎え、4月に入って継続的な下落となり、4月19日には取引時間中には3万7000円を割る場面もあった。これが1回目の大幅下落であり、取引時間中で比較すると下落率は10%を超えた。

今回は2回目である。7月11日に4万2000円を超えたあと、12日以降、26日までの10営業日のうち9日間下落した。この間、1000円超の下げが2回もあり、トータルで10%以上の調整となっている。

したがって、明らかな2回目の暴落であり、上げの反動でも何かしらのショックによるパニック売りでもない。ただの継続的な大幅下落なのだ。これは局面転換確定と判断するべきと考える。

日経平均は5月末以降も下落しているから、今回は3度目以上という見方もできる。そうなると、何度も上下を繰り返しているだけで、バブルが2回崩壊するというのと異なって循環的な動きではないか、という見方をしたくなる人もいるだろうが、おそらくそれは違う。

高値圏で不安になる投資家、チャートも典型的な動き

理由は2つある。もし、循環で乱高下を1カ月というような単位で繰り返しているとすると、それ自体がバブルのピークであることを表している。2000年のテックバブルの崩壊、1929年の大暴落のときも、最後の局面は上昇と下落を高い水準のところで繰り返し、そこから大暴落となった。ピークにおいては期待と不安が入り混じり、投資家のセンチメント(心理)が大きく揺れ動く。

このようにセンチメントが揺れ動くことこそが不安の象徴であり、バブルがもう終わるんじゃないかという不安をほとんどの投資家が抱えていることを示している。

第2に、仮に今回の大幅下落が3回目だとしても、3度目の今回のピークが飛びぬけて「とんがっている」からだ。つまり、チャートで見ると、今回は急激に上がり、そして急激に下がるというバブルの最後の最後に典型的に見られる動きを示しているからだ。

7月9日、10日、11日と3日間連続で大幅上昇し、12日にどかんと下がり、その後も下落を続け、そして、25日はさらにどかんと急落した。12日からの大幅下落局面で、さらにとどめを刺すように約8年ぶりの大きな下げになるというのは、崩壊決定、局面の大転換を示していると判断するべきと考える。

留保点としては、「25日の下落には、急激な円高進行が下落の理由の半分程度あるのではないか」「それは株式市場のバブルと関係なく、日銀の政策変更、利上げの見通しが急に出てきたから」、だから「7月30〜31日の日銀政策決定会合後は材料出尽くしとなり、円安に戻っていけば、株価も反転するのではないか」、などという見方があることだ。

今後、円高トレンド(というか極端な円安の終了)が継続するかどうかは見方が分かれており、判断は難しい。日銀が7月30〜31日の金融決定会合で、本当に利上げするかどうかも予想は割れている。しかし、私は、これは、日本株を買う材料にはならないと考える。理由は2つある。

投資家の心理は悪化、しかも「山高ければ谷深し」 

第1には、円高で株価下落が増幅されたかもしれないが、実際に株価が下がってしまえば、投資家のポジションは悪化し、財務状況もセンチメントも壊れてしまっている。それは、もし円安方向に揺り戻しがあっても、株の損失は戻らない。

もし、センチメントが強気であれば、次のチャンスには逆に買い向かうのであるが、今回はセンチメントが傷んでしまったと私は見ているので、その場合は買い戻す流れにはならない。企業の決算が非常によければ別だが、為替の戻しは間接的な要因であり、また、円安への揺り戻しがあっても、これ以上の円安にはなりにくいこと、今後、再び円高に戻ること、とりわけ、7月末に日銀が利上げしなくとも年内の利上げは確実であることを考えると、買い戻す意欲のある投資家は多くないと考える。

第2に、世界的な株価調整となれば、2023年と2024年前半に世界よりもよい大きく上げた日本株は、その分、下げも大きくなるのが自然なので、世界的な株価下落が反転しない限り、日本株だけの理由で戻るとは考えられないからである。

このように考えると「小幡はいつも暴落すると言っている」という説を唱える人にとっても、いつもの私と違って、暴落の蓋然性の高さを静かに議論している書きっぷりは不気味に見えるかもしれない。

もし、あなたがそう感じたとしたら、それはこの文章がそうさせるのではなく、あなたの心の中に潜んだ不安がそうさせるのだ。ということは、そういうことなのだ。

(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論などを語るコーナーです。あらかじめご了承ください)

競馬である。27日から新潟競馬場での開催が始まる。

今夏の新潟は注目である。なぜなら、気候変動対策、人馬の熱中症回避のために本格的に動いたからだ。

27日のレース時間を見ると、第1レースの時間も従来から繰り上げるだけでなく、11時35分発走の第5レースを終えたあと、3時間程度の昼休みを設け、準メインレースを第6レースとして15時10分発走、次のメインレースは第7レースで15時45分発走となる。それ以外のレースは16時以降とし、最終12レースは18時25分発走というスケジュールとなる。

酷暑対策は評価するが中途半端、ここは思い切って…

酷暑対策に踏み切ったのはすばらしいが、いかにも中途半端だ。馬も騎手も観客も約3時間、どこで休んでいればいいのか。家に帰って昼寝できるのならいいが、そうでない以上、かなり体力的にしんどい。

そして、準メイン、メインの時間は、これまでと変わらない。テレビ放映への配慮かもしれないが、しかし、メインが終わったあと、その後のレースの馬券が従来と同じように売れるとは思えない。終わりの時間も「ナイター」にならないように、ということかもしれない。

さまざまな妥協の産物だが、あまり解決にならないのではないか。まず、15時台は十分に暑いし、パドックなども考慮に入れれば、実際は14時台にはスタートしているから、最も暑い時間帯を回避できているわけではない。

やはり、ここは思い切って「馬券の売り上げ最優先主義」をこの時期だけ棚上げし、7月後半から8月中旬までは、北海道競馬だけ、にしたらどうだろう。札幌・函館の同時開催である。

絶対、JRA(日本中央競馬会)関係者は誰も賛成しなそうだが、私がこの欄で提唱してきた「北海道の第3のトレーニングセンター」が完成すれば、キャパシティーの問題は解決する。そうなれば、滋賀県の栗東と茨城県の美浦からのシステマティックな航空輸送の仕組みの確立もやらざるをえなくなり、よいこと尽くめではないか。

問題は馬券が売れなくなることであるが、メインのあとに5レースもやることに比べれば、売り上げ減少は限定的になると思われる。また思い切った北海道キャンペーンを、別の団体であるホッカイドウ競馬と連携して門別競馬との連続・共同開催を行うだけでなく、セレクトセール、セレクションセール、サマートレーニングセール、という当歳馬、1歳馬、2歳馬の競り市なども加え、大々的なキャンペーンをするべきではないか。

28日に札幌競馬場で行われるクイーンカップを始め、函館2歳ステークス、札幌2歳ステークスなどのこれまでの重賞に加えて、3歳戦のサマーダービーなども新設する。さらにG2競争として行われている札幌記念を、G1の宝塚記念のような、ファン投票によるチャンピオンレースに格上げし、欧米の秋のレースへの前哨戦(好走した馬には遠征費用を大胆に補助する)とするなど、盛り上げたらよいと思う。ぜひ検討をお願いしたい。

新潟の「千直」は「ダートの実力馬」で勝負

さて、28日の新潟のメイン重賞(第7レース、15時45分発走)は、名物「新潟千直」、芝1000メートル競走のアイビスサマーダッシュ(G3)である。血統評論家達が「新潟千直はダート血統でも走る」といっているが、確かによく知られた事実ではあるが、その理由はあまり理解されていない。

日本の芝の競馬とダート競馬の違いは、芝かダートかというサーフェスの問題ではなく、レースのあり方の問題だ。芝はとにかく直線までためて、直線に向いたときの位置取りと切れ味で勝負、ということであり、器用に短時間で加速できる馬が勝ちやすいレースになる。一方、ダートは最初からある程度の力で走っていって、直線でどれだけ余力があるか、というレースである。

つまり、芝は器用さ、ダートはスピードの持続力が要求されるので、実はダート競馬のほうが実力が重要なのである。芝の直線競馬も最初からみな飛ばすため、1000メートルスピードの持続力が必要になり、スピードに関するスタミナが必要になる(スピードとスタミナは相反するという考えは間違いである)が、コーナーを上手に回る器用さは必要とされないため、本質的にはダートのレースと似た能力が必要とされるのである。

日本の競走馬がさらにレベルアップするためには、ダートレースと新潟の芝の直線競馬の位置づけをもっともっと上げる必要がある。

ということで、本命は、ダートの実力馬チェイスザドリーム。前走、初めての芝のレースが新潟千直となったが、1番人気で完勝した。ここも極端な内枠でなければ完勝だろう。単勝。 

※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は8月3日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(小幡 績 : 慶応義塾大学大学院教授)