文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

浙江省海寧市の塩官観潮公園で、銭塘江の大潮を見る人々。(2023年8月4日撮影、海寧=新華社記者/黄宗治)

 【新華社北京7月12日】中国の若者の間でここ数年、中国の文化や伝統を楽しむ旅行が盛り上がっている。無形文化遺産の体験や各地の博物館の見学、歴史ある町の散策などが、若者の観光消費の増加を促している。

文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

四川省の九寨溝風景区にある五彩池。(2022年1月6日、ドローンから、九寨溝=新華社配信/王雪城)

 中国文化への理解が深まるとして人気なのが、国語の教科書に出てくるスポットへの旅だ。一部の旅行サイトは夏のピークシーズンに備え、学生向けに特別ツアーを打ち出している。小学6年の教科書に載っている老舍の散文「草原」の舞台である内モンゴルを旅し、作中に出てくる乳製品の「奶豆腐」を味わう。小学4年の教科書で読んだ「五彩池」の神秘的な景色を体験しに、四川省の九寨溝に出かける。観光客はニーズに合わせてツアーを組み、教科書で読んだ場所へと「飛び込む」ことができる。

文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

湖北省荊州市にある人気急上昇中の荊州博物館。(4月13日撮影、荊州=新華社記者/伍志尊)

 教科書に出てくる場所は、子ども連れの旅行の目的地としてもぴったりだ。小学生の苕苕(びょうびょう)さんは両親と共に、小学4年の教科書に載っている「観潮」で読んだ銭塘江の海潮逆流を見に、浙江省海寧市塩官鎮を訪れた。大雨に見舞われたものの、6月の最良の観潮シーズンに間に合った。教科書の中の知識が自分の目で見たリアルな光景へと変わり、歴史ある観潮文化の重みと地学のおもしろさを感じたという。

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青海省西寧市の青海チベット文化博物院で、世界一長いタンカ(チベット仏教の仏画)としてギネス世界記録に認定された「中国チベット族文化芸術彩絵大観」を鑑賞する来場者。(資料写真、西寧=新華社記者/張竜)

 博物館の見学も旅行の新たな目玉となっている。オンライン旅行会社(OTA)大手、携程集団(トリップドットコムグループ)のデータによると、国内の博物館のチケット予約販売数は今年に入り、前年の倍以上に増えている。若者の間で中国的な要素への関心が高まり、博物館も人工知能(AI)や3D復元の技術などを駆使して新たな楽しみ方を生み出し、インタラクション性を高める中、ますます多くの観光客が博物館を目当てに旅するようになっている。

文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

北京市の中国考古博物館の展示ホールでインタラクティブスクリーンを体験する来場者。(2023年9月15日撮影、北京=新華社記者/李賀)

 「お宝」が眠るマイナーな博物館にも光が当たっている。同社のデータによると、今年の博物館チケット注文数に占める三線都市(地方の主要都市)以下の博物館の割合は3割に達し、前年から7ポイント上がった。今年の人気博物館ランキングにはこれまで知名度の高くなかった博物館が複数ランクイン。うち青海チベット文化博物院(青海省西寧市)のチケット注文数は前年同期の約3.1倍、濰坊世界風箏(たこ)博物館(山東省濰坊市)のチケット注文数は7倍以上となった。

文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

陝西省西安市の大唐芙蓉園で、漢服を着て記念撮影する観光客。(2月2日撮影、西安=新華社記者/邵瑞)

 旅先で中国の伝統的な衣装に着替え、「映え写真」をSNS(交流サイト)にアップすることも流行している。もっとも写真の撮影は目的ではないらしい。大事なのは体験することで、衣装は着ること自体が楽しいとともに、地方の特色ある街並みや民族文化に「没入」する手段になるのだという。生活関連サービス大手の美団のデータでは、「漢服(漢民族の伝統衣装)メークアップ」の検索数は今年4月以降、前年同期の2.4倍に増えた。地域別では陝西省西安市、河南省洛陽市、江蘇省蘇州市がトップ3に入った。古い街並みに「没入」できる漢服レンタルやメーキャップなどのサービスは、現地の各種消費の増加を促し、観光客を呼び込む際立った効果を上げている。

文化楽しむ旅行、中国の若者に人気 漢服姿で「映え写真」

河南省洛陽市の洛邑古城で、漢服を着て記念撮影する観光客。(2023年10月24日撮影、洛陽=新華社記者/李嘉南)

 中国的な要素や文化を取り入れた旅行の盛り上がりは、若い世代の旅行消費の変化を反映している。若者は旅行に対し、ただの飲み食いや遊びだけでなく、文化の体験や感動の共有を求め始めている。上海市の復旦大学の顧暁鳴(こ・ぎょうめい)歴史学部・観光学部教授は、旅行の価値は日常との「違い」にあるとし、若者は旅先に根ざし、自分の美意識にも合ったものに魅力的な「違い」を見いだしていると指摘している。(記者/楊珏)