米国でも高まるウエディングドレスの リセール 需要。老舗ブライダルサロンもリセールeコマースに進出
創業83年のクラインフェルド・ブライダル(Kleinfeld Bridal)は6月18日、オンライン委託ショップ「クラインフェルド・アゲイン(Kleinfeld Again)」でリセールとeコマース事業に初進出した。このサイトではこれから結婚式を挙げる予定の花嫁や既に式を挙げた女性が、着用済みのウエディングドレスを購入・販売することができる。小売トレンドや独自の顧客調査、そしてTLCの人気番組『セイ・イエス・トゥ・ザ・ドレス(Say Yes to the Dress)』による世界的な認知度の高さに基づいて、同社エグゼクティブたちはこの新事業に「大きな可能性」を見出している。
クラインフェルド・ブライダルのCEOであるロニー・ロススタイン氏は、「このサイトを発表する前から、すでに顧客からの注文をヨーロッパに配送していた。当社ほどのリーチを持っているブランドはほかにない」と語った。
ニューヨークにあるクラインフェルドの店舗でウエディングドレスを選ぶ花嫁たちを取り上げた『セイ・イエス・トゥ・ザ・ドレス』は2007年以降新しいエピソードを紹介している。ロススタイン氏によるとこの番組は165カ国で放送されており、毎日ファンが記念写真の撮影のために店舗に訪れているという。クラインフェルド・ブライダルは現在、インスタグラムで150万人、TikTokで52万人のフォロワーを抱えている。
同社コンサルティングCMOであり、クラインフェルド・アゲインのローンチにいたるまでの顧客調査とマーケティング計画を主導したジェン・シャイプ氏によると、このリセールサイトの目的は手頃な価格帯と短期間で準備できるドレスに対する花嫁からのニーズの高まりに応えるものだという。
クラインフェルド・ブライダルは主に55人のデザイナーによるドレスを取り扱っており、すべてIRL(店舗)での予約を通して販売されている。クラインフェルドは年間2万着以上のドレスを販売しているとロススタイン氏は話す。
1941年にクラインフェルド・ブライダルが開業して以来、ブライダルウェア市場は進化してきた。D2Cブームのなかでいくつかのオンライン専売ブライダルブランドがその競争に加わり、それと同時にブライダルウェアにおけるリセールも徐々に普及しつつある。スティルホワイト(StillWhite)やPreOwnedWeddingDresses.comなどの専用サイトに加え、ポッシュマーク(Poshmark)やスレッドアップ(ThredUp)といった大手リセールeテイラーもブライダルドレスの購入先として利用されるようになった。
クラインフェルド・アゲインの最大の差別化要因はその審査プロセスにあるとロススタイン氏は言う。ドレスは購入者に送られる前に、まずクラインフェルドに送られる。ドレスの状態が販売者の説明と一致しているかどうかを同社専任の鑑定士3人のうち1人が審査するためだ。
シャイプ氏も「それがロレックス(Rolex)やどんなスニーカーであれ、正規品であることを保証するのはラグジュアリー業界の常識だ」と強調した。
クラインフェルドは販売手数料は取らず、ドレスがkleinfeldagain.comに掲載されている期間中、販売者に毎月9.95〜11.95ドル(約1600〜1900円)を請求する。販売者はドレスの価格を自由に設定することができ、さらに追加料金を支払うことでドレスを目立つ場所へ配置したりプロモーションを実施したりすることもできる。
またお直しを考慮して、ドレスのサイズとともに、通常小売店が記録している挙式当時の花嫁のサイズが商品リストに記載される。シャイプ氏によると、このサイトはShopify(ショッピファイ)を活用しており、簡単に利用できるように設計されているという。たとえば販売者は、競合サイトの商品リストへのリンクを貼り付けることでクラインフェルド・アゲインへの出品に必要な項目を自動入力することができる。
「何年ものあいだ花嫁は自分がドレスを着たあと、いつか娘が同じドレスを着てくれることを願いながらドレスをクリーニングして保管していたものだ」とロススタイン氏は話す。「しかし長年この仕事をしてきたなかで母親のドレスを着た花嫁は3人ほどだった。しかも我々はそのドレスのスタイルに変更を加え、裁断し直し、現代風にアレンジしなければならなかった」。
現在では「素晴らしい写真や動画」が簡単に手に入るようになったおかげで、花嫁は自分が着たドレスを(将来)娘に実際に見てもらうために保管し続けることに対して「あまり投資しなくなっている」と同氏は語った。
それと同時に、すべての花嫁が家族や友人とブライダルサロンをはしごしたりシャンパンを飲みながらランチをしたりするような、伝統的なドレスショッピング体験を夢見ているわけでもなくなっている。
「我々は多くの調査を実施した結果、この市場は自動車市場とよく似ていることを発見した。つまり購入者には2つのタイプがあるということだ。(自動車)ビジネスの大部分を占めるのは認定中古車を購入する顧客であり、それは新車販売には影響を及ぼさない」。
クラインフェルド・アゲインの顧客の大半は予算を超えたドレスを求めている花嫁と、挙式のために新しいドレスを購入する「ラグジュアリー好き」ではあるものの、2度目や3度目の挙式ではもっと手頃なドレスを望む花嫁になることを見込んでいるとシャイプ氏は説明した。
現在クラインフェルド・アゲインでは135のスタイルが提供されている。なかには1万ドル(約160万円)のリームアクラ(Reem Acra)のドレスが1400ドル(約22万円)で販売されていたり、ダニエル・フランケル(Danielle Frankel)のいくつかのスタイルを小売価格の約50%ほど値引きして販売したりしている。またこのサイトでは、クラインフェルド・ブライダルで購入されたものではないドレスや、同社では取り扱っていないブランドも歓迎している。したがってクラインフェルドは既存顧客との関係を拡大するだけではなく、クラインフェルド・アゲインによって以前花嫁だった人々との関係にも門戸を開いている。
ロススタイン氏によると、同社は過去数年間にドレスのレンタルサービスを試みたが、毎度お直しが必要だったためにこの計画は断念したという。
クラインフェルド・ブライダルのEメールリストやウェブサイト、ソーシャルチャネルに加え、クラインフェルド・アゲインはペイドメディアを通じてもプロモーションを実施している。また6月20日には、ブラボー(Bravo)のリアリティショー番組『サマーハウス(Summer House)』にも出演していたスターであるリンゼイ・ハバードとのパートナーシップが正式に開始された。ハバードはキャンセルした結婚式で着る予定だった3スタイルをクラインフェルド・アゲインで販売し、その収益は非営利団体に寄付されるという。
[原文:Luxury Briefing: A luxury brand holdout (finally) launches e-commerce]
Jill Manoff(翻訳:ぬえよしこ、編集:都築成果)
ニューヨークにあるクラインフェルドの店舗でウエディングドレスを選ぶ花嫁たちを取り上げた『セイ・イエス・トゥ・ザ・ドレス』は2007年以降新しいエピソードを紹介している。ロススタイン氏によるとこの番組は165カ国で放送されており、毎日ファンが記念写真の撮影のために店舗に訪れているという。クラインフェルド・ブライダルは現在、インスタグラムで150万人、TikTokで52万人のフォロワーを抱えている。
ウエディングドレスのリセールへ高まる需要
同社コンサルティングCMOであり、クラインフェルド・アゲインのローンチにいたるまでの顧客調査とマーケティング計画を主導したジェン・シャイプ氏によると、このリセールサイトの目的は手頃な価格帯と短期間で準備できるドレスに対する花嫁からのニーズの高まりに応えるものだという。
クラインフェルド・ブライダルは主に55人のデザイナーによるドレスを取り扱っており、すべてIRL(店舗)での予約を通して販売されている。クラインフェルドは年間2万着以上のドレスを販売しているとロススタイン氏は話す。
1941年にクラインフェルド・ブライダルが開業して以来、ブライダルウェア市場は進化してきた。D2Cブームのなかでいくつかのオンライン専売ブライダルブランドがその競争に加わり、それと同時にブライダルウェアにおけるリセールも徐々に普及しつつある。スティルホワイト(StillWhite)やPreOwnedWeddingDresses.comなどの専用サイトに加え、ポッシュマーク(Poshmark)やスレッドアップ(ThredUp)といった大手リセールeテイラーもブライダルドレスの購入先として利用されるようになった。
差別化要因は「審査プロセス」にあり
クラインフェルド・アゲインの最大の差別化要因はその審査プロセスにあるとロススタイン氏は言う。ドレスは購入者に送られる前に、まずクラインフェルドに送られる。ドレスの状態が販売者の説明と一致しているかどうかを同社専任の鑑定士3人のうち1人が審査するためだ。
シャイプ氏も「それがロレックス(Rolex)やどんなスニーカーであれ、正規品であることを保証するのはラグジュアリー業界の常識だ」と強調した。
クラインフェルドは販売手数料は取らず、ドレスがkleinfeldagain.comに掲載されている期間中、販売者に毎月9.95〜11.95ドル(約1600〜1900円)を請求する。販売者はドレスの価格を自由に設定することができ、さらに追加料金を支払うことでドレスを目立つ場所へ配置したりプロモーションを実施したりすることもできる。
またお直しを考慮して、ドレスのサイズとともに、通常小売店が記録している挙式当時の花嫁のサイズが商品リストに記載される。シャイプ氏によると、このサイトはShopify(ショッピファイ)を活用しており、簡単に利用できるように設計されているという。たとえば販売者は、競合サイトの商品リストへのリンクを貼り付けることでクラインフェルド・アゲインへの出品に必要な項目を自動入力することができる。
花嫁のウエディングドレスに対する認識の変遷
「何年ものあいだ花嫁は自分がドレスを着たあと、いつか娘が同じドレスを着てくれることを願いながらドレスをクリーニングして保管していたものだ」とロススタイン氏は話す。「しかし長年この仕事をしてきたなかで母親のドレスを着た花嫁は3人ほどだった。しかも我々はそのドレスのスタイルに変更を加え、裁断し直し、現代風にアレンジしなければならなかった」。
現在では「素晴らしい写真や動画」が簡単に手に入るようになったおかげで、花嫁は自分が着たドレスを(将来)娘に実際に見てもらうために保管し続けることに対して「あまり投資しなくなっている」と同氏は語った。
それと同時に、すべての花嫁が家族や友人とブライダルサロンをはしごしたりシャンパンを飲みながらランチをしたりするような、伝統的なドレスショッピング体験を夢見ているわけでもなくなっている。
「我々は多くの調査を実施した結果、この市場は自動車市場とよく似ていることを発見した。つまり購入者には2つのタイプがあるということだ。(自動車)ビジネスの大部分を占めるのは認定中古車を購入する顧客であり、それは新車販売には影響を及ぼさない」。
クラインフェルド・アゲインの顧客の大半は予算を超えたドレスを求めている花嫁と、挙式のために新しいドレスを購入する「ラグジュアリー好き」ではあるものの、2度目や3度目の挙式ではもっと手頃なドレスを望む花嫁になることを見込んでいるとシャイプ氏は説明した。
既存顧客以外とも関係を構築する
現在クラインフェルド・アゲインでは135のスタイルが提供されている。なかには1万ドル(約160万円)のリームアクラ(Reem Acra)のドレスが1400ドル(約22万円)で販売されていたり、ダニエル・フランケル(Danielle Frankel)のいくつかのスタイルを小売価格の約50%ほど値引きして販売したりしている。またこのサイトでは、クラインフェルド・ブライダルで購入されたものではないドレスや、同社では取り扱っていないブランドも歓迎している。したがってクラインフェルドは既存顧客との関係を拡大するだけではなく、クラインフェルド・アゲインによって以前花嫁だった人々との関係にも門戸を開いている。
ロススタイン氏によると、同社は過去数年間にドレスのレンタルサービスを試みたが、毎度お直しが必要だったためにこの計画は断念したという。
クラインフェルド・ブライダルのEメールリストやウェブサイト、ソーシャルチャネルに加え、クラインフェルド・アゲインはペイドメディアを通じてもプロモーションを実施している。また6月20日には、ブラボー(Bravo)のリアリティショー番組『サマーハウス(Summer House)』にも出演していたスターであるリンゼイ・ハバードとのパートナーシップが正式に開始された。ハバードはキャンセルした結婚式で着る予定だった3スタイルをクラインフェルド・アゲインで販売し、その収益は非営利団体に寄付されるという。
[原文:Luxury Briefing: A luxury brand holdout (finally) launches e-commerce]
Jill Manoff(翻訳:ぬえよしこ、編集:都築成果)