Apple Intelligenceってなに? 次期OSのポイントは? アップルがWWDCで発表した7つの見どころをおさらい
アップルが世界開発者会議「WWDC」をカリフォルニア州クパティーノの本社・Apple Parkで開催しました。独自開発による「Apple Intelligence=AI」や、秋に正式公開を控える新OSの話題など、現地を取材中の筆者が「注目の話題・7選」としてお届けします。
WWDC24の基調講演は世界中にインターネット中継されました。アップルのサイトには動画アーカイブも公開中です。基調講演の間、現地はどうなっているかと言えば、Apple Parkに巨大な屋外ステージが設置され、世界中から集まった総勢1000人は超えていそうなデベロッパーとジャーナリストがスクリーンに上映されるビデオを見ています。
配信の場合と違うのは、カンファレンスの直前にティム・クックCEOと、ソフトウェアエンジニアリング担当 上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏がスクリーンの前に登壇して生スピーチをすることです。「みんな、今日は集まってくれてありがとう! 最高のWWDCにしようぜ!」みたいな、音楽の野外フェスのような楽しいノリが感じられます。
では、今年のWWDC24で発表されたハイライトを振り返ってみましょう。
注目その1 iPhoneの画面をカスタマイズ
iPhoneのOSであるiOSは、今秋に最新バージョンのiOS 18が公開を予定しています。一番楽しそうなポイントは、ホーム画面にロック画面、コントロールセンターのデザインを、ユーザーがより自分好みにカスタマイズできるようになることです。
アイコンの置き方や壁紙などはいまでも自由に変えられますが、今度は「アイコンの色」をモノトーンでダークな雰囲気に統一することも可能になります。
フルスクリーンデザインのiPhoneは、画面の右上側から下にスワイプすると表示されるコントロールセンターもカスタマイズの自由度が高まります。他社製アプリのコントロールも常備できるので、よく使うアプリなどをそろえると便利かもしれません。なお、グーグルのAndroid OSも2023年に登場したAndroid 14からホーム画面のカスタマイズが自由にできるようになりました。
筆者的にはSafariや写真、ミュージックなどさまざまなアプリのアイコンが並んでいる方がiPhoneらしくて好きですが、実際に使ってみたらとことんカスタマイズしてみたくもなりそうです。7月に新OSのパブリックベータ版が公開されるので、また機会があればレポートします。
注目その2 手書きの数式も計算するiPadOSの「計算機」アプリ
5月にiPad Pro、iPad Airの新製品が発売されたばかりですが、次期iPadOS 18によってiPadライフがますます充実しそうです。
iPhoneには長らく搭載されていながら、なぜかiPadには存在していなかったアップル純正の「計算機」アプリがついに登場です。しかも強力な新機能「計算メモ」は要注目。ユーザーがApple Pencilを使って手で書いた数式を、シンプルなものから複雑なものまで自動で認識して正しい答えを導き出します。イラストが混在していても、計算式や方程式の部分だけを認識。とにかくすごい機能ですが、筆者は高校数学からドロップアウトした赤点魔王なので、この機能の便利さについて身をもって知る日は来ないかもしれません……。
注目その3 AirPodsが“うなずく”ジェスチャーに対応
第2世代のAirPods Pro(USB-C/Lightning)のファームウェアが秋に更新されると、イヤホンを耳に装着したまま首を縦横に振るジェスチャー操作で通話やSiriの読み上げに応答できるようになります。首を縦に振ると「はい」、横に振ると「いいえ」の操作入力に代わります。満員電車の中など声を出しづらい環境で便利に使えると思います。
また、AirPods ProをiPhone、iPad、Macに接続していれば、音声通話中にユーザーのバックグラウンドノイズを消して、通話音声だけを分離しながら聞こえやすくする機能も加わります。ノイズ抑制効果がどれぐらい鮮やかなのか気になるところです。
注目その4 健康状態を見守るApple Watchの「バイタル」アプリ
Apple Watchの次期watchOS 11には、ウォッチを身に着けて過ごすユーザーの心拍数、呼吸数、手首皮膚温、睡眠時間、血中に取り込まれた酸素のレベルの各項目を「健康指標」として画面に横並びにしながら一望できる「バイタル」アプリが新設されます。
Apple Watchでいつも健康状態を計測し続けることで、健康指標が通常の値から飛び出たときにはバイタルアプリの表示が変わり、ペアリングしているiPhoneなどのデバイスに通知が届きます。もはやApple Watchはユーザーの健康を絶えず見守り続ける“ウェアラブル・ドクター”です。
注目その5 MacでiPhoneを操作
次期macOSの名称は「Sequoia(セコイア)」に決定しました。Mac OS X 10.9のマーベリックス以降続く、カリフォルニア州の有名な地名シリーズが継続。セコイア自体はヒノキ科セコイア属の樹木の名称でもあります。
macOSにはiPhoneをMacのWebカメラとして使える「連係カメラ」のようなコンビネーションを活かした機能があります。次期OSには連係シリーズの新機能として「iPhoneミラーリング」が加わります。
機能をオンにすると、MacとワイヤレスでつながっているiPhoneの画面がMacのディスプレイに再現されます。iPhoneの画面操作はMacのキーボード、トラックパッド、マウスを使います。iPhoneとMacの間でデータのドラッグ&ドロップもできるそうです。AirDrop(エアドロ)するよりも効率よくデータを共有できるのか、興味深いところ。またMacで仕事に集中している間、iPhoneだけに入れているアプリの通知を確認したいときなどにiPhoneミラーリングが便利に感じられるかもしれません。
注目その6 Apple Vision Proが日本にやってくる
米国では今年の2月2日に先行発売された“空間コンピュータ”「Apple Vision Pro」の、日本発売日が6月28日に決まりました。6月11日にリリースされたvisionOS 1.2から先行してプラットフォームの日本語対応も始まっているようです。
価格は59万9800円(税込)からという、やはりとても高価なデバイスですが、日本の動画サービスであるU-NEXTや、日本経済新聞社、Yahoo! JAPANなどが独自のアプリコンテンツをvisionOSに向けて今月から配信を開始します。販売は全国のApple Store店舗とオンラインで取り扱われますが、実機を体験できるストアの数は限られるようです。6月14日午前10時の予約注文開始以降に発表される詳細を要確認です。
注目その7 Apple Intelligenceの登場でSiriも大きく変わる
アップルがOpenAIのChatGPTやDall-E、グーグルのGeminiなどのライバルに対抗する独自の生成AIプラットフォーム「Apple Intelligence」を発表しました。略して“AI”。
今年の秋にiOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaの一部として、無料でApple Intelligenceに関連する機能がベータ版として実装される予定ですが、対象となる地域が米国に限られます。また、対応するデバイスもiPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Max、M1以降を搭載したiPadとMacのみになります。
ユーザーが書いたテキストの清書や校正、受信した長いメールの要約、メモアプリが対応する「音声の録音・書き起こし・要約」といった機能が使え、これらは仕事で大活躍しそうです。
生成AIによる画像生成も可能で、任意のテキストをプロンプトに入力してオリジナルの絵文字をつくる「Genmoji」や、テーマ、コスチューム、アクセサリ、場所など指定した条件に合った画像を生成する「Image Playground」の機能がそろいます。
Apple Intelligenceによって生まれ変わるSiriは、デバイスを使うユーザーのことを学びながら、よりパーソナルなコミュニケーションができるようになります。たとえば友だちがメッセージアプリから転居先の住所を送ってきたら、「この住所を彼の連絡先カードに追加して」とSiriにお願いすると、「これ」や「彼」など曖昧な指示語も理解しながら正しい操作を実行します。
iPhoneの場合は、「Hey Siri」と話しかけた後に、Siriのアイコンがポップアップするのではなく、画面の周囲が虹色に光る新しいユーザーインターフェース効果にも注目です。
Apple Intelligenceについてはとにかく「日本語化」の時期が気になるところ。先行するOpenAIやグーグルの生成AIに対して、Apple Intelligenceが洗練されたインターフェースの使い勝手も含めて、どんなAIのミライを見せてくれるのか楽しみです。
次点 Apple Parkの食事が美味しかった!
筆者は2022年のWWDCから現地取材に参加しています。今回はWWDCのイベントで使われるスペースに限られるものの、社屋内のカフェテリアに入って食事を楽しむこともできました。バーガーやメキシカン風の餃子(?)のような食事がやたらと美味しかったです。食に関わるボキャブラリーが貧困で申し訳ありません。
【フォトギャラリー】(Apple Parkの様子をまとめてご覧ください)