超巨大なショッピングモールが空港内に入居するシンガポールの空の玄関口「チャンギ国際空港」。特異な施設を運用する狙いはなんなのでしょうか。

10階建ての建物に巨大な滝!

 海外には、「ここは本当に空港か?」と疑いたくなるような特異な施設をもつ空港が存在します。その代表例がシンガポールのチャンギ国際空港。巨大なショッピングモールが、空港内に入居しているのです。その狙いはなんなのでしょうか。


チャンギ国際空港(加賀幸雄撮影)。

 チャンギ国際空港内に2019年にオープンしたドーム型ショッピングモール「ジュエル」は、10階建て(地上5階、地下5階)で、空港内の特異な施設として知られています。

同空港には旅客ターミナルビルが4つありますが、「ジュエル」は第1旅客ターミナルビルに直結。その内装も圧巻で、室内として世界最大級と言われる高さ約40mの滝があり、周囲を約2000本の木々がとり囲んでいるのです。

 さらにこの森を取り囲むように280店以上のレストランやブランドショップが並び、屋上庭園もあります。森の間を、第1〜3旅客ターミナルビルを結ぶ旅客輸送用の「スカイトレイン」が通り抜ける様子は、もはやショッピングモールというより、テーマパークのアトラクション施設に近しい要素があります。

 シンガポール政府観光局の公式サイトによると、同施設は「単なるショッピング施設ではなく、資生堂・フォレスト・バレーでは、自然の美しさとモダンな建物が融合しています」とも。癒しとショッピングを隣り合わせにしていることが分かります。

なぜここまで「デカいショッピングモール」を入れたのか

 チャンギ空港はもともと乗り継ぎ需要が非常に旺盛なうえに、どの旅客ターミナルビルもショッピングや飲食施設が充実していることで知られていました。コロナ禍後の今もそれは変わっていません。


チャンギ国際空港内にあるプール。ターミナルビル内も設備が充実している(乗りものニュース編集部撮影)。

「ジュエル」にはホテルもあり、空港内にいて退屈させないことで、乗り継ぎ客の快適性の充実も確保しています。癒しとショッピング施設を併合し旅客を惹きつけたうえで、次の便に乗るまでの時間を快適に過ごしてもらうことで、収益増化を目指したのです。

 世界のどの空港も、乗り継ぎ客にとっては「通過点」に過ぎなかったところ、現在は次の便に乗るまで、いかに快適な時間を乗客に過ごしてもらうかに、空港運営会社は注力しています。この手法は、シンガポールが見せたこれからの空港の一つの形と思えます。

 そして、チャンギ空港では、2030年代に第5旅客ターミナルビルのオープンを目指しています。ただ、既存の4つの旅客ターミナルビルと異なり滑走路を挟んだ東側に建てられるため、旅客をどのようジュエルにまで呼び込むのかも、今後のチャンギ国際空港の将来ビジョンのポイントになりそうです。