因縁のあった岸田首相と二階氏

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「年齢には制限があるか!?」「バカやろう」

 次期衆院選への不出馬を表明し、記者会見を行った自民党の二階俊博元幹事長(85)。当選13回で、現職の国会議員で最高齢の二階氏には近年、常に不出馬情報がつきまとっていたが、二階派(志帥会)の元会計責任者が政治資金パーティー収入の虚偽記載で在宅起訴されたことが直接的な引き金となった。一連の裏金問題での政治資金収支報告書への不記載額は3500万円を超え、5年余の幹事長時代に差配した政策活動費は約50億円と、ここ最近は特に金にまつわる話題で取り上げられがちな人物だった。

 今回の会見でも「バカやろう」などストレートな物言いが反響を呼んでいるが、金の問題に関連しても、率直というか独特のコメントを残している。

因縁のあった岸田首相と二階氏

 本人の思いが感じ取れる肉声を改めて紹介しておこう。

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 今回の会見で二階氏は、自派閥の元会計責任者が政治資金パーティー収入の虚偽記載で在宅起訴されたことについて謝罪し、次期衆院選に不出馬の意向を表明した。記者からの質問に「(出馬について)年齢には制限があるか!?」「お前もその年(が)来るんだよ」「ばかやろう」と不快感を示すなど、良し悪しは完全に別として本人らしさを貫いた会見だった。

選挙区事情とは無縁ではない

「会見では、記者からの質問の大半を付き添った最側近の林幹雄元幹事長代理がこなしました。林氏が秘書のように付き添うのはもう随分前からで、代わって質問に答えるのも同様。二階氏は85歳という年齢もあって集中力がなかなか続かず、会話がスムーズに行かないということが続いていたようで、それが今回の会見にも現れていたように感じました」
 と、政治部デスク。

「表向きは二階派の元会計責任者がパーティー券収入の虚偽記載で在宅起訴されたことの責任を取った形でしたが、選挙区事情とは無縁ではないでしょう」(同)

 二階氏の地元・和歌山県は次期衆院選から議席が1減となる。それを見越して、次世代の“和歌山キング”である世耕弘成前参院幹事長が衆院に鞍替えすることが想定されていた。

「二階氏の弱点は後継者。世耕氏は二階氏が目の黒いうちは戦いを挑まないものの、不出馬を表明した場合、鞍替え濃厚と言われてきたのです」(同)

二階氏と金

 今回の不出馬表明で、世耕氏を自由に動かせてしまうことにならないのだろうか。

「世耕氏もまた今回の裏金疑惑で安倍派(清和会)の幹部として党の処分を免れず、8段階ある処分のうち、非公認が下るとされています。それを岸田文雄首相(総裁)が二階氏に伝えた後に会見が行われたようです。処分のことを踏まえれば世耕氏が次期衆院選に無所属で出馬して、二階氏の後継者と対峙する可能性は低いように感じられます。その場合、一回見送りになるということですね。ただ、次期衆院選の際に総裁が岸田氏ではない可能性もあり、党内がどうなっているかもわからないので、予断を許さない状況ではあります」(同)

 ところで、二階氏をめぐってはかねて金の問題がつきまとってきた。

 2019年7月の参院選広島選挙区に出馬した河井案里陣営に党本部から1億5000万円が流れていた件でも名前が取りざたされた。

「選挙時に党から支給される額としては“一桁違う”との指摘がありました。その後、河井氏や夫で選挙を取り仕切った克行法相が公選法違反容疑で逮捕・起訴され、その公判で二階氏の名前が飛び出しましたのです」(同)

企業で考えてもらえれば

 2020年10月、案里被告の公判で検察側の証人として出廷した自民党の広島県議が案里被告からカネを受け取る際に、「当選おめでとうございます。二階幹事長から預かってきた」と話したと証言したのだ。これについて、「案里被告はよくブラックジョークを言うので、ジョークだと思った」と県議は付言したが、「1億5000万円の支出=二階氏」という構図が流布していった。

 しかし、二階氏はこの見方にいたく不満だったようだ。

「二階氏は、“企業で考えてもらえれば分かりますよね。社長が言ったから初めて経理なり総務なりが動くわけでしょ。独断で総務部長がどうのこうのっていうのはあり得ませんよ”と言っていたようですね。この場合、社長は総裁、総務部長が自分のこと。暗に当時の安倍晋三首相(総裁)の指示をほのめかしたということでしょう」(同)

 結局、自民党はこの1億5000万円は買収の原資に使われていないとすることで幕引きを図っている。しかし、世間ではなかなかその説明が受け入れられていないのも事実だろう。

約50億円の政策活動費

 また、その後は、二階氏が歴代最長の5年超にわたって幹事長の職にある中で、約50億円の政策活動費を差配していたことが度々問題視されてきた。

「二階氏本人は“私利私欲を満たすようなことはなかった”などと話しているようです。が、その一方で二階氏が幹事長職にこだわったのが、この政策活動費だったとも言われています。一般に“幹事長は党の金を自由に使える”と言う時にはこの政策活動費のことを指します。政治資金収支報告書に記載義務がなく、領収書も不要なので実質的にさまざまな用途に使用可能な“財布”と言われており、一説には二階派の勢力拡大の助けとなったとされています」(同)

 この政策活動費についても二階氏は「企業で考えてもらえれば分かりますよね。社長が言ったから……」などと弁明するのだろうか。

デイリー新潮編集部