岩手県の花巻市と聞くと、何を連想するだろう。

筆者はやはり、「SHOHEI OHTANI」。今や世界のスーパースターとなった大谷翔平選手の出身高校が、花巻東高校であることは野球好きな人はもちろん、その他の多くの人にもよく知られているはずだ。

でも花巻って、どこ?  そして、どんなところ?  と突っ込まれると、スラスラ説明できる人は少ないかもしれない。


2024年1月7日(少し前のことで恐縮だが)、X(旧ツイッター)に、そんな花巻に関する写真が投稿され、話題となった。

高速道路(東北縦貫自動車道)花巻インターチェンジの光景のようだ。

ポストに添えられていた「花巻IC名物・怒涛スポット列挙」というコメントの通り、まさに疾風怒濤のごとき数の案内看板ではないか。数えてみると20か所もある。この中から目的地を見つけるのも、なかなか至難の技と言える。

「しらかみ」(@Akitashirakamii)さんの投稿には、1万件近い「いいね」のほか、こんな声が寄せられている。

「立ち止まらないと確認できないわw」
「動体視力鍛えられそうで草」
「いつ見ても強烈......」

さて、改めて。観光スポットがこんなにたくさんある花巻とは、いったいどんなところ?

ただ並んでるワケじゃなかった!

投稿者・しらかみさんが標識を見たのは、1月7日午前10時ごろ。東北道花巻インターチェンジの料金所を過ぎた地点で、助手席から撮影したという。

「料金所を通過した後の一瞬で目に飛び込んできたのですが、情報量としてはかなり多いかな......というのが正直な感想です(笑)。初めて見た人にとってはなかなかに壮観だと思います」
「標識にもあるように宮沢賢治に関する施設や花巻温泉、志戸平温泉、鉛温泉などなど楽しめる場所は盛りだくさんの街だと思います。以前花巻に立ち寄った際(昨年4月)はマルカンビル大食堂のソフトクリームを食べて街中を散策しました。また行きたい街です」(「しらかみ」さん)

次にJタウンネット記者は花巻市役所を取材。すると話題の標識は、ただ観光スポットを並べているわけではないのだと分かった。

板をズラリと並べた案内標識は、2006年に設置されたものだという。

「観光案内看板として作成したものですが、花巻ICは市の玄関口であり、通常設置している観光案内看板とは違う、少し目立つようなものにしようと考え、宮沢賢治の作品の一つである『月夜のでんしんばしら』をイメージしたデザインにしました」(花巻市観光課企画管理係)

花巻が生んだ詩人・作家である宮沢賢治の作品がヒントだったとは......。『月夜のでんしんばしら』とはどんな作品だったか、読み返してみたくなる。

そして、花巻ICの看板を見る際の注意として、花巻市役所は次のようにコメントした。

「標識の設置場所が花巻IC降り口付近のため、近くの駐車場に停めて、走行車両に注意しながら見ていただくようお願いします」

くれぐれも安全運転を。

で、花巻ってどんな街?

ところで花巻っていったいどの辺りにあるのか? 東北在住者ならともかく、とくに西日本方面の人にはピンと来ないのではないか。そこで下の地図を見ていただこう。

岩手県のほぼ真ん中、というより、東北の真ん中と言ってもいいかもしれない。青森、秋田、仙台にも、高速道路のネットワークで結ばれているようだ。東北を縦断するにも、横断するにも、花巻は拠点となりそうだ。このロケーション上のメリットについて聞いてみた。

「岩手県の空の玄関である『いわて花巻空港』をはじめ、高速道路(花巻IC・花巻南IC・花巻PAスマートIC(2024年3月20日供用開始予定)、花巻空港IC、東和IC)、東北新幹線(新花巻駅)が整備されていることから、物流や生産活動の拠点として、多くの企業に立地・操業いただいています。また、東北でも有数の温泉地である花巻温泉郷などへも多くの観光客が訪れるなど、北東北でも有数の拠点性を活かした産業振興が進展していると考えています」
「岩手県の県南地域では、今後も半導体や自動車産業の集積が見込まれており、新たな関連企業等を市内に誘導する好機を迎えているほか、運輸・物流業においては『2024年問題』に対応するため、倉庫機能を兼ねた中継施設等の需要が増大することが見込まれています」(商工労政課企業立地推進室)

また上の図をご参照いただこう。企業立地について、花巻市ならではの支援制度がいろいろ整備されているようだ。

「空き工場や空き地の情報提供、県や関係機関との連携・協働による既立地企業へのフォローアップ、人材確保支援など、多様な企業ニーズへの対応を通じ、本市への企業誘致の加速化と集積化を図りたいと考えています」
「現在、新たな産業団地[(仮称)花南産業団地]の整備を進めているほか、農業振興地域内の農用地区域を含む全市エリアを対象に、民間主導による開発に対して市が一定の支援を行うなど、民間事業者と市の双方による市内への産業用地の確保について検討してきたいと考えています」(商工労政課企業立地推進室)

――というわけで、花巻市も大谷翔平選手に負けず劣らず、要注目の存在らしい。