何者かが自分に不都合な記事やサイトを検索結果から消すべく、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を悪用した大規模な検閲キャンペーンを行っていると、海外メディアのTax Policy Associatesが報告しました。

The epidemic of fraudulent DMCA takedowns

https://taxpolicy.org.uk/2024/02/17/the-invisible-campaign-to-censor-the-internet/

大量のDMCA申請を使った一連の検閲キャンペーンが発覚した発端は、Tax Policy AssociatesがSNSで活動する詐欺的な広告会社「Mogul Press」についての記事を2023年11月に公開したことでした。

Tax Policy Associatesはその後、何者かがこの記事に関するDMCA申請をGoogleに送り、記事を検索結果から除外させようとしたことを突き止めます。

その手法は、Tax Policy Associatesの記事の文面を偽のサイトにそっくりコピーしてから、Tax Policy Associatesが自分たちの記事を盗用したとGoogleに訴えるというものだったとのこと。

Tax Policy Associatesを標的にしたDMCA申請は、アラブ首長国連邦(UAE)とアメリカの実態のない企業によるものでした。また、2通の申請はどちらも文面がほぼ同じで、「completely infringing(完全に権利を侵害している)」という文言が使われていました。



このフレーズが、いかにも弁護士らしく振る舞おうとしている素人くさい書きぶりだったことから、Tax Policy AssociatesはDMCA申請を集積したデータベースであるLumenで「completely infringing」を検索しました。

その結果、申請者名に「Media Corporation」が、文章に「completely infringing」が入っているDMCA申請だけで180件もあることが判明しました。なお、記事作成時点では194件に増えています。



申請者名は「Arthur Media Corporation」「Louis Media Corporation」「Tessler Media Corporation」という具合に、ランダムな人名に「Media Corporation」をくっつけた企業名です。

同様の手法はこれまでにも報告されており、過去にはEU一般データ保護規則(GDPR)を悪用して汚職事件の報道を封殺しようとしたEliminaliaというスペイン企業について、非営利団体のRest of WorldとForbidden Storiesがそれぞれ報じています。

Tax Policy Associatesが今回見つけた検閲キャンペーンがEliminaliaによるものなのか、Mogul Pressに雇われた別の業者によるものなのかは不明とのこと。



Tax Policy Associatesは性犯罪に関する記事や、政治献金の疑惑についての報道、ある学生が反ユダヤ主義者であると主張する記事など、インターネット上に存在するさまざまな記事に関する削除申請が、「○○Media Corporation」によって行われていることを確認しています。また、ギャンブルサイトに関する、ライバル業者と思われる者からの申請も散見されました。

GoogleはTax Policy Associatesの問い合わせに対し、「私たちは、不正な削除の試みに対抗すべく強固なツールとプロセスを導入しています。また、コピー記事の日付を変えてオリジナル記事に見せるようなよく知られた手口も含め、不正のシグナルを検出できるよう、自動化されたレビューと人間によるレビューを組み合わせて活用しています」と述べました。

しかし、Googleは申請者の身元確認を行っておらず、同一記事に対して複数の申請者が著作権侵害を訴えるような、明らかに不正な申請も受理してしまっています。

こうした点からTax Policy Associatesは「残念ながら不正申請を防ぐGoogleの試みは機能していないようです」とコメントしました。