2回線で同時に待ち受け可能なデュアルSIM対応のAndroidが増えている。写真はデュアルeSIMに対応したPixel 8(筆者撮影)

2つの通信キャリアの回線を同時に利用する「デュアルSIM」が、Androidスマホにも広がっている。元々は、回線を問わずに使えるSIMフリースマホで一般的な機能だったが、端末に内蔵されたチップに契約者情報を書き込めるeSIMの普及に伴い、2022〜23年ごろから物理的なSIMカードとeSIMの両方を使える端末が急増。今では、新たに発売されるスマホのほとんどが、物理SIMとeSIMのデュアルSIM仕様になっている。

キャリア変更なしで通信料金を節約できる

これを有効にすると、2回線で着信を待ち受けられるようになり、2つの電話番号を使い分けられる。1枚目のSIMカードを電話に使い、2回線目のeSIMでデータ通信するといったことも可能。うまく組み合わせれば、キャリアを変更する手間をかけずに通信料金を節約することにもつながる。キャリアを分けておけば、災害や通信障害などのいざというときにつながる確率も上がるため、バックアップとしてもオススメだ。

また、端末によってはデュアルSIM設定時に、電話の着信音やSMSの通知音を鳴らし分けることが可能。こうした設定がない端末のために、着信音をSIMごとに切り替えるアプリも存在する。また、それぞれの電話番号で連絡を取れるよう、LINEなどの電話番号に紐づくアプリを2つインストールできる端末も存在する。ここでは、そんなデュアルSIMにまつわる裏ワザを紹介していきたい。

ここ2、3年でeSIMが普及したことに伴い、デュアルSIM対応端末のバリエーションも急拡大している。今では、キャリアが販売する端末のほとんどが物理SIMとeSIMの両方を備えており、2つの回線を同時に利用できる。eSIMは、オンラインで比較的簡単に発行でき、SIMカードのように店舗に行ったり、郵送されてくるのを待ったりする必要もない。設定もシンプル。Pixel 8の場合、「設定」で「ネットワークとインターネット」を開き、「SIM」という項目で「SIMの追加」を選択したあと、「新しいeSIMをダウンロード」をタップするだけでQRコード読み込み用のカメラが起動する。

通信料が安くなる?「デュアルSIM」

デュアルSIMでスマホを使うメリットはさまざまだ。例えば、仕事用とプライベート用で電話番号を分けたいときに、端末を1台で済ませることができる。また、音声通話とデータ通信のSIMカードを分け、料金を節約するといったことも可能だ。節約だけなら番号ポータビリティでキャリアを移ってしまう手もあるが、固定回線とのセット割を受けていたり、家族で契約していたりすると、手間がかかるのも事実。デュアルSIMであれば、データ通信料の安い回線を追加し、元々の回線の料金プランを変更するだけで済む。


通話とデータ通信に別々のSIMを使って料金を節約することができる。筆者は、より快適にデータ通信ができるよう、ドコモの音声通話とソフトバンクのデータ通信を組み合わせて使っている(筆者撮影)

一例を挙げると、元々がドコモでデータ容量が無制限の「eximo」を契約していた人は、「irumo」の0.5GBプランに変更すれば、最大で7000円弱、料金が安くなる。ここに、データ容量無制限の楽天モバイル回線をeSIMで追加し、データ通信はそちらに任せてしまうとする。楽天モバイルの料金は3278円。これだけで、毎月3000円以上、料金が安くなる。楽天モバイル1回線に集約すればより料金は下がるものの、こちらのほうが手間はかからない。音声通話や0.5GBまでのデータ通信はドコモのエリアで使えるため、いざというときに安心だ。

ドコモ、au、ソフトバンクなどの大手キャリアは、無制限の料金プランがメインブランドに据えられており、低容量のプランが割高に設定されている。例えば、auの場合、スマホミニプランは1GB以下だと3465円だが、3GBを超えると6215円に金額が跳ね上がってしまう。これをそのまま使うより、スマホミニプランでauの契約を残しながら、データ通信だけを格安SIMにするほうが安上がりだ。例えば、IIJmioの場合、データ通信専用のeSIMは5GBでわずか660円。スマホミニプランの1GB以下の料金に足しても、4000円強で済む。さらに、固定回線がIIJならセット割引でこの660円が無料になる。

また、海外で利用するためのローミング専業キャリアが増えており、海外旅行、海外出張時にこれらをデュアルSIMで使うことで、料金を節約できる。一例を挙げると、ドコモ、au、ソフトバンクではそれぞれ24時間につき980円程度の料金がかかる。これに対し、ローミングキャリアのAiraloは、アメリカなら1GBが4.5ドル(約665円)、5GBでも16ドル(約2368円)。1週間程度の滞在であれば、数千円の差になる。デュアルSIMであれば、日本の電話番号で電話を受けつつ、こうしたローミングキャリアでデータ通信することが可能だ。

ちなみに、通常の端末は、SIMカードとeSIMの両方でデュアルSIM化するため、組み合わせを考える必要がある。メインの回線がSIMカードだった場合、追加する回線はeSIMにしなければならない。逆もしかりで、メインにしている回線がeSIMの場合、追加する回線はSIMカードである必要がある。ただ、会社によっては物理的なSIMカードを発行していない場合がある。海外で利用するローミングキャリアがそれだ。この場合、メインの回線をeSIMにしていると、それをオフにしなければならない。逆に、現地で買ったプリペイドSIMがSIMカードだけという場合、メイン回線がSIMカードだと同時利用ができなくなってしまう。

この組み合わせを柔軟にできるのが、「デュアルeSIM」に対応した端末。デュアルeSIMのスマホは、SIMカードとeSIMだけでなく、eSIMとeSIMの組み合わせでもデュアルSIMになる。現状、このデュアルeSIMに対応しているのは、Pixel 7以降のPixelと、楽天モバイルの専用モデルである「Rakuten Hand 5G」のみ。選択肢は非常に限定されているが、AndroidでデュアルSIMをフル活用したい際にはこうした端末を選択するようにしたい。

電話番号ごとに鳴らし分けられる着信音

2つの電話番号を使い分けることができるのも、デュアルSIMの魅力だ。仕事用とプライベート用の電話番号を別にして公私をきっちり分けたり、店舗の会員登録やアンケート等に答える際に登録する電話番号を別のものにしておいたり、SMS認証が必要なサービスのアカウントを2つ作ったりと、さまざまな用途に活用できる。こうした用途で利用する際に便利なのが、回線ごとに着信音を鳴らし分ける設定だ。

Androidスマホの中には、このような機能に対応している機種と、対応していない機種がある。例えば「Galaxy Z Fold5」の場合、「設定」の「サウンドとバイブ」で「着信音」や「通知音」を選択すると、回線ごとに音を設定することができる。メイン回線とサブ回線を別々の着信音にしておけば、音を聞くだけでどちらに電話がかかってきたかがわかるというわけだ。どちらの回線への着信かは画面にも表示されるが、異なる音にしていたほうが直感的に判断しやすいだろう。XperiaやOPPOのRenoシリーズなど、幅広い端末がこうした機能を備えている。


多くのAndroid端末は、SIMごとに着信音を設定できる(筆者撮影)

一方で、Pixelシリーズは、残念ながら着信音の鳴らし分けには対応していない。シャープのAQUOSシリーズも、同様の設定には非対応だ。Androidスマホの中では、比較的メーカーの独自カスタマイズが少ない端末は、このような機能を備えていないケースがある。そのまま使うと少々不便なため、このようなときにはアプリを使って着信音を鳴らし分けられるよう、カスタマイズするといいだろう。

今回は、Google Playストアでダウンロードできる「DualSimRinger」というアプリを利用した(アプリ内課金で110円)。このアプリを常駐させておくと、SIMごとに電話の着信音を鳴らし分けることが可能になる。回線ごとの音量も設定できるため、メイン回線の着信音は普通に鳴らし、2回線目は無音にしておくといった用途にも使える。

Pixel 8の場合、このアプリをインストールしたあと、設定で「Call Mode」を「1」に変更し、「Debugging mode」有効にしたところ、SIM1とSIM2で別々の着信音を鳴らすことができた。インストール直後の標準状態でも利用はできたが、何度か着信していると設定した着信音が鳴らなくなってしまうこともあったので注意したい。また、アプリの画面からは、SMSの通知音もSIMごとに分けられるように見えるが、タップしてもチェックがつかない。アプリの設定は端末によって異なり、マニュアルもないため試行錯誤が必要。少々ハードルが高いことは念頭に置いておきたい。

LINEの2アカウント同時運用が可能

端末によっては、LINEのようなメッセンジャーアプリを2つインストールできるものがある。本来、LINEやFacebookのMessengerは、スマホ1台につき1つしかインストールできず、アカウントの切り替えもしづらい。複数アカウントを使い分けたいときに、不便な仕様と言えるだろう。こうした状況を解決するため、アプリを無理やり2つインストールしてしまう機能を搭載している端末がある。Galaxyの「デュアルメッセンジャー」や、OPPO端末の「アプリクローン」などがそれだ。Xiaomiの端末にも「ツインアプリ」という機能がある。

デュアルSIMで使っていないときにも、これらの機能は利用できるが、こうしたメッセンジャーアプリは、電話番号を紐づけて利用することが多い。その意味では、デュアルSIMと相性がいい機能と言えるだろう。人によって教えるアカウントを変えたり、仕事とプライベートで別々のアカウントを用意していたりするようなときには、この機能が活躍するはずだ。スマホの2台持ちなどで使い分けていた人は、それを1台に集約することができる。


1台に2つのLINEなどをインストールできるGalaxyのデュアルメッセンジャーも、デュアルSIMと高相性の機能だ(筆者撮影)

ここでは、Galaxyシリーズのデュアルメッセンジャーを例に、その使い方を紹介していこう。まず、「設定」を開き、「便利な機能」をいうメニューをタップする。次に、画面下にある「デュアルメッセンジャー」を選択。インストールしたアプリの中で、この機能に対応するものの一覧が表示される。デュアルメッセンジャーという名称からもわかるように、主にLINEやMessengerが対象だが、FacebookやSkypeなども2つのアカウントを使い分けられるようだ。

また、1つ目と2つ目、それぞれのアカウントごとに読み取らせる連絡先のリストを選択することが可能。LINEには、アップロードした連絡先の情報を使って、ユーザー同士を自動的にマッチングさせる機能がある。ただし、これを普通に使うと、2つ目のLINEの友だちリストが1つ目のLINEと同じになってしまう。連絡先を分けるのは、こうした事態を防ぐため。デュアルメッセンジャーの設定で、「個別の連絡先リストを使用」をオンにすると、2つ目のアカウントに対応させたい連絡先を選ぶことができる。

デュアルSIM環境で便利な機能

2つ目のLINEなどのメッセンジャーは、別アプリとして機能するため、個別に通知音などを設定することも可能だ。このように便利な機能だが、すべてのアプリに利用できるわけではなく、デュアルメッセンジャーのリストに表示されたものだけに限定されるのが難点。LINEやMessengerには対応している一方で、筆者がインストールしているアプリの中では、InstagramやX(旧Twitter)が表示されなかった。利用可能なアプリに制約はあるが、デュアルSIM環境では便利なため、対応端末を持っている人は使ってみることをお勧めしたい。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)