愛する男性のために、自分の“心”を差し出す宿命を背負うことから始まる『君が心をくれたから』。“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリーは、異国情緒あふれるノスタルジックな街・長崎を舞台に描かれ、美しくも切ない物語が日本じゅうに感動を与えています。主人公を演じる永野芽郁さんにドラマの見どころを聞きました。

永野芽郁さん「新たな挑戦として、この難しい役に臨んでいます」

本作の脚本家は、これまでに『桜のような僕の恋人』や『今夜、ロマンス劇場で』などの純愛小説を数多く手がけてきた宇山佳佑さん。そして、“心を奪われる”主人公・逢原雨(あいはらあめ)を永野芽郁さんが演じています。

「この作品はファンタジーですが、登場人物ひとりひとりの感情にはうそがないと思いました。“心を奪われる”ということを表現するのはすごく難しいので、今もっている私の表現力のすべてを使ってもたりないかもしれませんが、新たな挑戦として、この難しい役に臨んでいます」

●強さとはかなさと弱さのバランスが観る人を引きつける

雨は幼い頃に母親から虐待されたことが理由で、自分に自信がもてず、他人と関わらないようにして生きてきました。そんな彼女にただひとり明るく声をかけてくれたのが朝野太陽(山田裕貴)です。彼とともに過ごすうちに、初めて前向きになれた雨は、パティシエになる夢をかなえるために上京します。

ところが、夢半ばで挫折して長崎に帰郷。そこで太陽と数年ぶりの再会を果たしますが、喜びもつかの間、彼が事故に遭ってしまい…。悲しみに暮れる雨の前にあの世からの案内人・日下(斎藤 工)と千秋(松本若菜)が現れ、「君が“心”を差し出すならば、奇跡を起こしてあげよう」と取り引きをもちかけるのでした。

「雨はずっと自分を卑下しながら生きてきました。表面上は笑えるけれど、心の底からはうまく笑えないような、胸のなかにいろいろなものを秘めた人です。でも、太陽君のために自分の“心”を差し出せるような強さをもっているので、その強さとはかなさと弱さのバランスが観る人を引きつけるんだと思います」

人間のリアルな部分を描いている作品

雨が差し出した“心”とは“五感”のこと。人は五感を通じて心を育んでいく生き物であり、いわば五感は心の入り口です。雨は3か月間かけて、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を1つずつ奪われていきます。それは暗闇のなかでたった1人、死ぬまで孤独に生き続けるのと同じこと。太陽は雨にとって、自分のすべてを差し出せる、かけがえのない存在なのです。

「だれかのことを純粋に思ったり、なにかをしてあげたりすることは、とてもすてきだとあらためて感じました。その半面、だれかを思ってなにかをすることが、相手にとっては酷な場合もあるという、人間のリアルな部分が描かれている作品です。心がモヤモヤしていたり、先のことが不安だったりしている方がこのドラマを観て、少しでも救われてくれればうれしいです」