もうすぐバレンタインデー。「フランスでは、老夫婦が腕を組んだり手をつないで仲よく歩いている姿を見ると、とてもほほえましく思います」と話すのは、フランス文化研究者のペレ信子さん。しかし、そのステージにたどり着くためには様々な努力があるそうです。フランス人と結婚して30年になるペレ信子さんが、見聞きしたコツを教えてくれました。

子育て中でも週に1回は夫婦でデートをする

以前アメリカに住んでいたときのことです。子どもが小さくて1日の暮らしを回すのに精一杯でした。隣の家にはフランス人が住んでいました。その家には5歳の男の子と2歳の女の子がいましたが、夜にご夫婦が2人で腕を組んで出かけているのを何回か見かけました。

そのカップルと道端で会って立ち話になったとき、「そういえばこの前、出かけてましたよね」と聞きました。「そうなの。毎週水曜日の午後6時にベビーシッターが来て、夫婦で散歩したり夕食に出たり。とにかく2人の時間をつくっている」と教えてくれました。

子育てに必死で、夫婦だけで出かけるなんて考えもつかなかった当時の私には、そのやり方が新鮮で「やろうと思えば2人の時間ってつくれるんだ」と目の前がパッと明るなりました。

それからは毎週とはいきませんでしたが、たまに夫婦で外食にいくことにしました。そこで、2人でいることは楽しいなと再発見。結局は子どものことを話したりしているのですが。

相手のことを憶測にとどめず、とにかく意見交換する

夫婦で意見が合わないときに、細かく自分の考えを説明しなくてもわかってくれればいいのにと思うことがあります。なぜ意見が合わないのかを深掘りすると、話が長くなって、その時間がとても重く暗いものに感じてしまうからだと思います。

できればいつも気分よく過ごしていたいけれど、毎日一緒にいれば、そうはいかないこともあります。もし相手が日本人だったら以心伝心で説明しなくても済むのかしら、と思うこともしばしば。自分がどうしてこう思うのか、面倒でも理由をしっかりフランス人のパートナーには話さなければ納得してもらえません。

それでも意見が交わらないこともありますが、もともと違う環境で育ってきた人間同士。意見が違っても当然、とどこか悟っているところもあります。

意見が違うのだ、と理解することはあきらめと同時に、相手を認めることに役立っているのでしょう。

フランス人が絶対ゆずらない夫婦同室、同ベッドのルール

以前、フランス人の夫と日本人の妻、という組み合わせのカップルばかりでディナーをよくしていました。日本に住む日仏カップルとして、文化の違いや子育てなどに同じような悩みを持つ同士でした。

あるディナーのとき、お酒がほどよく入っていたこともあるでしょう、ベッドルームの話になりました。

あるフランス人が、「妻が小さい子どもと同じ部屋で寝ていた頃は夫婦の危機だった」と言い出しました。「夜中に子どもの面倒を見るのにその方が便利だったからよ」と奥さんは言い返しました。日本人妻同士、「わかるわ〜」と言う感じでみんなうなずきました。
それに対して、フランス人の夫たちは「とんでもない!」と興奮し出しました。常に夫婦は同じ部屋、同じベッドで寝るべきなのだ、と。

子育て期や仕事などで寝る時間に差があることもあるし、いびきや寝返りなど睡眠を妨げる原因を避けるために、別室・別ベッドは合理的に思えます。しかし、どのフランス人も「ベッドを分けると言うなら、それは離婚への第一歩だ」と真剣です。そのただならぬ雰囲気に日本人チームは圧倒されました。

両親も祖父母もそうやってきた、と言うその信念と、毎日の暮らしにとっての合理性。これもまた、どちらが正しいと決められない文化の違いの一つではありますが、同室・同ベッドが夫婦円満のコツだと思うフランス人が多いのは事実です。

愛は1日にしてならず

 子どもが小さいときはあえて2人の時間をつくり、意見交換を面倒がらず、忙しくて話せなくても夜は2人の空間で過ごす。そんなルーティーンをないがしろにしないと言う心がけによって、気持ちも近くにいられるのかもしれません。フランス人は、常に相手と向き合うことを大切にしていることを感じています。