近頃はスーパー、コンビニにおいて「恵方巻」は一大市場となっているようです(写真:JIRI/PIXTA)

70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発した8万部突破のレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』に続き、『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん2 ベスト107レシピ』が発売され、発売7日で増刷するなど反響を呼んでいる。

『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「平気で『恵方巻』を買う人が知らない超残念な真実」について語る。

「恵方巻商戦」花盛りだが…1万円を超える商品も

「私は毎年大手スーパーで買うの。ここのは具がいろいろ入っていて豪華でお得。パートを早めに切り上げて買いに行きます」というのは2児の母・Aさんです。


「うちはもう近くのコンビニですね。仕事終わりにスーパーに行くと売り切れていたことがあったので、今はもっぱらコンビニで予約して買ってます」

こちらは1児の父・Bさん。

何の話かというと「恵方巻」です。

近頃はスーパー、コンビニにおいて「恵方巻」は一大市場となっているようです。のぼりを立てたり、チラシを配ったりして恵方巻商戦も盛んです。

ズワイガニなどの豪華食材を使ってセットで1万円を超えるものもあるそうですから驚きます。

恵方巻は、いまでこそ全国区となりましたが、元は関西で考案されたもので、縁起でも神事でもなんでもない……という話を聞いたことがあります。

真偽のほどはわかりませんが、私の生まれ育った北九州にもそんな風習はありませんでした。

それはともかくとして、私が不思議でしかたがないのは、「なぜわざわざ恵方巻を買うのか」ということです。

下記は、Aさん、Bさんの購入した恵方巻の原材料です。

恵方巻のすごい添加物

*Aさん購入品
【原材料】
サーモン巻(酢飯、サーモン、海苔)、海鮮巻(酢飯、サーモン、アマエビ、イカ、イクラしょうゆ漬け、大葉、海苔、ごま、醤油、みりん、ごま油)、田舎巻(酢飯、かんぴょう、シイタケ、ゴボウ、ニンジン、卵焼き、キュウリ、おぼろ、海苔)、ねぎマグロ巻(酢飯、マグロ叩き加工品、きゅうり、ねぎ、大葉、海苔)
【添加物】
pH調整剤、調味料(アミノ酸等)、グリシン、加工デンプン、着色料(カラメル、コチニール)、ソルビット、酸化防止剤(V.C、V.E)

*Bさん購入品
【原材料】
胡麻炒りだし酢飯、サーモントラウト酢漬マヨネーズ和え、伊達巻、味付いくら、干瓢煮、椎茸煮、キュウリ、海苔
【添加物】
調味料(アミノ酸等)、トレハロース、pH調整剤、酢酸Na、糊料(加工デンプン、増粘多糖類)、酒精、グリシン、カラメル色素、酵素、香料、香辛料

日持ちを良くするための「pH調整剤」「酸化防止剤」、味を調える調味料、きれいな色を付ける「着色料」など、両方ともかなりの添加物が使われています。

スーパーなどの場合、具材は出来合いのものを仕入れ、店内で巻き上げる店も多いのですが、各食材にはさまざまな添加物が使用されています。

こうした原材料に使われる添加物を「キャリーオーバー」といいますが、そこまで考えると品目はもっと増えるでしょう。

ちょっと前に恵方巻の大量廃棄が問題になったことを覚えているでしょうか。「このぐらいは売れるだろう」という「見込み生産」をするので、余った分は廃棄処分になってしまうのです。

また余った分を従業員に自腹で買い取らせる「押し付け販売」の問題もありました。

今はそれもだいぶ改善されているようですし、廃棄についても某コンビニではカットした端材を使って作るなど、企業努力をしているようです。しかし、それだけで全部の廃棄問題が解消されるとも思えません

大量の添加物を使って作り、余った分は廃棄、あるいは押し付け販売……。

そこまでして市販の恵方巻を必死で売り、みんなが一斉に買う理由が私にはわかりません

「添加物の味」が強く、素材の味が全然わからない?

今回、私も市販の恵方巻を買って試食してみましたが、想像通りの添加物の強い味でした。いや想像以上かもしれません。「化学調味料」や「グリシン」の味が強く、素材の味が全然わからないのです。


それからなんといっても「酢飯」がおいしくない

ツンとしたとげとげしい味に、醸造酢のキツい匂いがプンプンして、私が家で作る「酢飯」とは別物です。

どちらも使われているお酢は「日本人が知らない『"外食・惣菜"の安い酢』の裏側」で述べた安い醸造酢だと思われます。

寿司の味を決めるのは「酢飯」です。そしてもちろん酢飯は使われる「お酢」で決まります

そのお酢が現在の日本では「ピンキリ」になってしまっているのは、さきの回も含めたお酢シリーズ(「平気で『安い酢』を買う人が知らない超残念な真実」「平気で『飲むお酢』を買う人の超ヤバい深刻盲点」「日本人が知らない『激安のお酢』のヤバすぎる裏側」)で述べた通りです。

「日持ち」や「見栄え」をよくするために添加物が多く使われて、味も添加物で調えられた恵方巻

AさんもBさんも小さなお子さんがいらっしゃるそうですが、こんな添加物がたくさん入ったものを食べさせることに抵抗はないのでしょうか。

恵方巻は自宅で簡単に作れる!「すし酢の素」も不要

巻き寿司を作るなんて、それほど面倒なことではありません。いいお酢を使って酢飯さえ作れば、芯になるものは漬物と卵焼き、ほうれん草ぐらいで十分です。

「安部ごはん」では魔法の調味料として「甘酢」の作り方を紹介していますが、この「甘酢」さえ作り置きしておけば、塩を混ぜるだけであっという間に酢飯が完成します。

わざわざ「すし酢の素」を買わなくても、酢飯は「魔法の調味料」さえあれば、自宅で簡単に作れるのです。

それから、ちょっと奮発して、いい海苔を使って巻いてみてください。酢飯と海苔さえおいしければ、それだけで巻き寿司はご馳走です。

うちでは恵方巻は食べませんが、巻き寿司は孫の大好物ですから、しょっちゅう作っています。

もちろん甘酢で作った酢飯で作るのですが、これに食べ慣れると市販の寿司酢で作ったものは口に合わないらしく、「おいしくない」といって食べません

私が15年かけて開発した「安部ごはん」でも、「魔法の調味料」である「甘酢」を使った「カンタンパーティー混ぜ寿司」「アレンジ自在! のせるだけ! お好み漬け物寿司」などさまざまな寿司を紹介しています。

「簡単なのに、すごくおいしい」と大変評判のいい一品です。ぜひ参考にしてみてください。


安部氏が開発した「魔法の調味料」さえあれば、簡単につくれる「カンタンパーティー混ぜ寿司」。大人も子どもも喜ぶ大人気の一品(撮影:佳川奈央)

(安部 司 : 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事)