アメリカの証券取引委員会(SEC)が2024年1月10日に、ビットコインに直接投資する上場投資信託(ETF)についての11件の申請を承認しました。仮想通貨ウォレットや取引所を利用しなくても、従来の株式取引と同じ枠組みでビットコインに投資できるようになったことで、仮想通貨市場の活況に一層の弾みがつくとみられています。

SEC.gov | Statement on the Approval of Spot Bitcoin Exchange-Traded Products

https://www.sec.gov/news/statement/gensler-statement-spot-bitcoin-011023

Spot Bitcoin ETFs Approved to Launch in US by Gensler’s SEC - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-10/spot-bitcoin-etfs-approved-to-launch-in-us-by-gensler-s-sec

US approves first spot bitcoin ETF applications for 11 issuers | TechCrunch

https://techcrunch.com/2024/01/10/sec-approves-spot-bitcoin-etf/

First Bitcoin ETFs approved by US regulators - The Verge

https://www.theverge.com/2024/1/10/24026863/bitcoin-etf-sec-crypto-finance

ETFとは、証券会社などで株と同様に売買することができる投資信託のことです。これまで、ビットコインの先物価格に連動するETFは承認されていましたが、ビットコインに直接投資するETFは承認されていませんでした。



2024年1月10日には、何者かに乗っ取られたSECのX(旧Twitter)アカウントが「ビットコインETFを承認した」と偽情報を発信する一幕がありましたが、SECは今回改めて正式にビットコイン現物ETFを承認しました。これは、最初のビットコインのブロック(ジェネシスブロック)がマイニングされてから15年目、仮想通貨取引所・Geminiの設立者であるタイラー・ウィンクルボス氏とキャメロン・ウィンクルボス氏らが2013年に最初のビットコインETFを申請してから10年目のことです。

今回SECの承認を受けたのは、特に注目されていたブラックロックやフィデリティなどの大手から、デジタル資産に特化した資産運用会社・Valkyrieまで幅広い11社で、期限までに申請していたすべてのETFが承認されました。具体的な銘柄は以下の通り。

・iShares Bitcoin Trust

・ARK 21Shares Bitcoin ETF

・Bitwise Bitcoin ETP Trust

・WisdomTree Bitcoin Fund

・Fidelity Wise Origin Bitcoin Trust

・VanEck Bitcoin Trust

・Invesco Galaxy Bitcoin ETF

・Valkyrie Bitcoin Fund

・Hashdex Bitcoin ETF

・Franklin Bitcoin ETF

かねてからビットコイン現物ETFの期待が高まっていたこともあり、今回の承認を受けた初動は小幅な増加にとどまりました。



ビットコインに投資するETFが伝統的な金融市場で取引できるようになったことで、これまで仮想通貨に投資してこなかった個人投資家や、年金基金などの機関投資家がデジタル資産にアクセスしやすくなると指摘されています。

アメリカ・デューク大学の経済学者であるキャンベル・ハーベイ氏は、「今回の承認は、個人投資家と機関投資家の両方が複雑な問題を心配することなく、仮想通貨を資産としてポートフォリオに組み込みやすくなったことを意味しています。ETFは特にポートフォリオへの資産の追加を簡単にします」と話しました。

仮想通貨市場がビットコインETFを歓迎する一方、SECはしぶしぶ承認したとの態度を露骨に示しています。SECのゲイリー・ゲンスラー委員長は声明で、「本日、特定のビットコイン現物上場取引型金融商品の上場と取引を承認しましたが、ビットコインを承認または支持しているわけではありません。投資家は、ビットコインや仮想通貨貨に価値が関連付けられている商品に関連する無数のリスクについて引き続き注意する必要があります」と述べて、注意を呼びかけました。



前述の通り、SECは10年にわたりビットコインETFを拒否してきました。しかし、今回承認を受けた11社にも含まれているグレースケールがSECを訴えた際、連邦控訴裁判所がSECによる申請の却下を「勝手かつ気まぐれ」として決定を覆したことにより、承認を余儀なくされました。

ゲンスラー氏は「コロンビア特別区控訴裁判所は、グレースケールが申請したETFの上場と取引を不承認とした理由について、SECが十分な説明をできていないと判断し、審査を差し戻しました。このような状況や、承認にまつわる議論に基づき、私は、このビットコイン現物ETFの上場および取引を承認することが最も持続可能な道であると感じています」と述べて、グレースケール訴訟での敗訴が今回の承認に結びついたと説明しました。