2歳GIの朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)が12月17日に行なわれる。

 ホープフルS(中山・芝2000m)が2017年からGIに昇格して以降、そちらにも多くの有力馬が参戦するようになったが、一昨年の覇者ドウデュースが翌年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制覇。2019年の勝ち馬サリオスが翌年のGI皐月賞(中山・芝2000m)とダービーでいずれも2着と好走しているように、朝日杯FSも今なお、翌年のクラシックを見据えるうえで重要な位置づけにあるレースと言える。

 馬券の傾向としては、日刊スポーツの太田尚樹記者が「ヒモ荒れが多いレースです」と言って、こう続ける。

「中山から阪神へ移設された2014年以降の9回で、1番人気は4勝、2着2回、3着2回と、複勝率88.9%。5着以下なし、と安定しています。やはり、紛れの少ない阪神マイルで開催されているのが要因でしょう。

 しかし一方で、ふた桁人気の馬が4回も馬券に絡んでいて、3連単では2014年に13万円超え、2016年に22万円超えの高配当が生まれています。1着〜3着まで人気どおりに決まった昨年にしても、16番人気のキョウエイブリッサが4着に入線。あやわ高配当、といったレースでした」

 そして、今年も「波乱含み」と太田記者は言う。

「人気が予想されるシュトラウス(牡2歳)やダノンマッキンリー(牡2歳)あたりが折り合いに不安を抱えており、伏兵陣にもチャンスがあると見ています」

 太田記者が名前を挙げた2頭の他、前走でGIIデイリー杯2歳S(11月11日/京都・芝1600m)を完勝したジャンタルマンタル(牡2歳)も有力視される1頭だが、これら人気の3頭はいずれも今回はテン乗り。無論、騎手の乗り替わりがすべてマイナスになるとは限らないが、まだ経験の浅い若駒ゆえ、それが懸念材料であることは間違いなく、波乱ムードは一段と増す。

 そういった状況のなか、伏兵候補となるのはどの馬か。太田記者は2頭の名前を挙げた。

「まず気になるのは、タガノエルピーダ(牝2歳)です。先週のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)を抽選で除外され、敢然と牡馬相手の戦いに挑んできました。

 予定が1週延びましたが、管理する斉藤崇史調教師は『全然大丈夫です。(先週の時点で)もうひとつ状態が上がりそうだったので』と、逆に上昇を見込んでいます」


朝日杯FSでの一発が期待されるタガノエルピーダ。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 阪神が舞台となってからの過去9年を見ても、牝馬は出走馬自体が少なく、馬券圏内に入ったのは、2018年のグランアレグリア(3着)のみ。かなり厳しい状況ではあるが、タガノエルピーダは牡馬相手の新馬戦(10月14日/京都・芝1600m)を快勝。馬場状態は異なるものの、同レースの勝ちタイムがデイリー杯2歳Sより速かった点などを含め、太田記者はここでも勝負になると踏んでいる。

「新馬戦はスローペースのなか、上がり33秒5の決め手を繰り出して、ゴール前で逃げ馬をきっちり捕えて勝利。ラスト2ハロンのレースラップが11秒0−11秒0という流れを捕らえたのは、高く評価できると思います。2着になった逃げ馬も次戦では難なく白星を飾っていますしね。

 半兄に2頭の重賞勝ち馬(タガノトネール、タガノエスプレッソ)がいて、血統背景も魅力です」

 太田記者が推奨するもう1頭は、デイリー杯2歳S2着のエンヤラヴフェイス(牡2歳)だ。

「前走のデイリー杯2歳Sでは、8番人気の低評価を覆して2着に入りましたが、そもそも2走前のGIII新潟2歳S(8月27日/新潟・芝1600m)では3番人気に推されていた馬。結果は7着と人気を裏切ってしまいましたが、管理する森田直行調教師によると、『前に馬を置いたら、走る気をなくした』とのことで、度外視していい一戦と言えるでしょう。

 前走も最内を回った勝ち馬ジャンタルマンタルに対して、この馬は外を回って、4コーナーでは怯むような場面もありました。それを考えれば、勝ち馬との2馬身差は詰まる余地が十分にあります。落ちついてレースに向かうことができれば、軽視できない1頭だと思います」

 今年も2歳牡馬戦線は大混戦。そういった状況を考えれば、素質ある牝馬の台頭があっても不思議ではないし、実力を秘めた人気薄馬が激走を遂げてもおかしくない。ここに名前が挙がった2頭が高配当をもたらす可能性は大いにある。