箱根駅伝エントリーメンバーから漏れた有力選手 優勝経験者やキャプテン、留学生まで...
箱根駅伝に出場する23校のエントリーメンバーが発表された。
夢を掴んだ選手は、安堵し、高揚し、区間配置に向けて気持ちを新たにしたことだろう。
メンバーから外れた選手は、「なぜ俺が」と思う人もいただろう。なんとなく察していた選手も実際に外れると、その衝撃の大きさに打ち震えたはずだ。もちろん、ラストイヤーの4年生にとっては本当につらく、厳しい宣告になっただろう。
主力組、期待していた選手の落選は本人だけではなく、監督にとっても痛手だ。今年の箱根は激戦が予想されるだけに、なおさらその思いが強いはずだ。
今年もそういう選手たちがエントリーから外れた。
箱根駅伝のメンバーから漏れた創価大のリーキー・カミナ(左)、青学大の志貴勇斗(中)、駒澤大の唐澤拓海(右) photo by SportsPressJP/AFLO
2年連続で3冠を狙う駒澤大は、唐澤拓海(4年)が外れた。
唐澤は2年時、箱根駅伝1区2位と好走し、自らのスピードを証明した。3年時はケガに泣かされたが、今年4月の日体大長距離競技会の10000mで27分57秒52を出し、つづく関東インカレ2部10000m決勝では、28分26秒83で日本人トップの総合4位。完全復活を印象付けた。ところが6月に踵痛や腰痛に苦しみ、夏合宿も、その後もほとんど距離を踏めなかった。
出雲、全日本は故障の影響から出場のチャンスを逸したあと、箱根の選考レースになった11月の上尾シティハーフは1時間6分20秒で174位。レース後、唐澤は「納得はしていないですけど、なかば(箱根を)あきらめかけています」と沈痛な面持ちで語った。急ピッチで仕上げた上尾のダメージが大きく、箱根の合宿に入る前、唐澤は藤田敦史監督に「今回は厳しい」と選考合宿を辞退する旨を伝え、メンバーから外れることになった。
今年の駒澤大は選手層が厚いとはいえ、10000m27分台のスピードがあり、実績のある唐澤を欠くことの影響は決して小さくはない。藤田監督が「天才」と称した走りは、大きな舞台でこそ映えるはずで、往路はもちろん復路にいればライバル校にとってかなりの脅威になったはずだ。
もうひとり、2年連続で10区を走り、昨年は優勝のゴールラインを切った青柿響(4年)もエントリーから外れた。前回の箱根から故障がちで、今シーズンは本格的な練習が積めなかった。花尾恭輔(4年)とともにチームへの貢献度が高い選手だったが、残念ながら走れるレベルに届かなかった。箱根では、青柿や唐澤と同期の4年生が、彼らの分も快走してくれるに違いない。
【青学大は2年連続でキャプテンが外れる】駒澤大の3冠を阻止すべく、鼻息が荒い原晋監督が仕切る青学大は、昨年のキャプテンの宮坂大器につづいて今年のキャプテンの志貴勇斗(4年)もメンバーから外れた。
志貴は、2年時の箱根駅伝では、1区5位で流れを作り、総合優勝に貢献している。今年は自ら立候補してキャプテンになったが、春先から調子が上がらず、関東インカレのハーフでは23位に終わり、渋い表情を見せていた。今後の自分に期待をしていたが、ギアが上がらず、出雲と全日本は登録メンバー外。箱根の選考レースである世田谷246ハーフは65位、最後のチャンスになったMARCH対抗戦の10000mは、チームメイトが28分台で自己ベストを更新していく中、30分36秒52の19位に終わった。結局、最後まで復調をアピールできず、前回大会につづいてキャプテンが応援に回ることになった。
出雲駅伝6区8位で駅伝デビューした鶴川正也(3年)もメンバーから外れた。5000m13分35秒51で部内2位のタイムを持つスピードランナーだが、青学大の場合、一度レースに失敗して原監督の信頼を失うとなかなか駅伝では使ってもらえなくなる。今回エントリー入りした山内健登(4年)も1年時に全日本6区9位と失速し、2年、3年は駅伝に起用されなかった。だが、今シーズン、4年生になって出雲、全日本で結果を出して箱根メンバー入り。鶴川は来年、最上級生になるが、この悔しさをどう晴らしていくのか、楽しみだ。
また、出雲で駅伝デビューを果たしたが、5区10位とブレーキになった鳥井健太(1年)もメンバーから外れた。出雲では責任を感じて涙を流したが「必ずやり返す」と誓った。その後、世田谷246ハーフで優勝し、MARCH対抗戦では初レースとなる10000mで28分33秒64をマーク。箱根への切符を掴んだかのように見えた。上りに強く5区希望だったが、その区間候補には若林宏樹(3年)、黒田朝日(2年)がいる。彼らの間に割って入る隙がなかったのかもしれないが、調子が上がってきていただけに落選は残念だった。
駒澤大を追う中央大は、佐野拓実(3年)が選考レースの上尾シティハーフでは64分21秒の69位で自己ベストを更新し、当落線上で頑張っていた。だが、合格ラインを越えられず、最終テストとして藤原正和監督が指定した12月2日の日体大長距離競技会10000mに出場。ここで29分17秒39と自己ベストを出したものの他選手に敗れ、箱根への挑戦が終わった。
また、この記録会で、29分04秒42と自己ベストをマークした鈴木耕太郎(1年)も残念ながらメンバーから漏れた。それでも、中央大は今回4名の1年生がエントリーをしており、これからも充実した編成ができそうだ。
【注目の留学生や将来のエースも......】國學院大は、鶴元太(3年)がエントリーから外れた。1年時は1区にエントリーされたが当日変更で走れず、2年時は4区にエントリーされたが、またしても当日変更でアウト。そして、今回は16名のエントリーから名前が消えた。1年生、2年生世代が強く、そこに押し出された感があるが、101回大会で最上級生として箱根を走れるか。
木村文哉(3年)も今回、エントリーから漏れた。2年時は、1区に配置されたが当日変更で出走はならず。そして今回は、16名の枠から外れてしまった。来シーズンは強力な新1年生が入ってくるとなると、下級生の成長と突き上げが予想されるだけに、鶴も木村もこれから大幅に自己ベストを更新して存在感を示していくしかない。
創価大では、主将の志村健太(4年)と、出雲駅伝3区2位の好走でチーム2位に貢献したリーキー・カミナ(3年)が外れた。5000m13分30秒54、10000m27分50秒66のタイムを持つカミナは、3年間2区を走ったフィリップ・ムルワの後継者候補。だが、今回の箱根は1年生のスティーブン・ムチーニがその役を担うことになりそうだ。
東洋大では、出雲駅伝5区7位の菅野大輝(4年)、将来のエースと言われ活躍が期待された石田洸介(3年)がエントリーから漏れた。菅野はロードに自信があり、復路での起用が検討されていたが、箱根を走れずに卒業することになった。石田は本来なら松山和希(4年)と並ぶエースになり、東洋大を引っ張っていくべき存在。だが今年は、駅伝で低空飛行を続ける東洋を救うことができなかった。ラストシーズンとなる101回大会では2年時、2区19位に終わった雪辱を晴らせるか。
学生主体で戦う立教大は、学生でエントリーメンバーを決め、主将の宮沢徹(4年)、内田賢利(4年)、山候補だった永井駿(2年)が外れた。宮澤は1月に日体大長距離競技会で自己ベストを更新し、メンバー入りに意欲を見せたが、最後の箱根は仲間に託すことになった。内田は前回6区を走り、3000m障害が主戦場だが関東インカレでアキレス腱を断裂し、駅伝を走るところまで戻すことができなかった。永井は激坂最速王(13.5キロ)で8位に入り、5区をアピールしたが、前回5区を走った相沢拓摩(2年)とともに、今回はエントリー入りを果たせなかった。それだけに、今回の立教は山を誰が走るのか注目だ。
16名のメンバー枠から漏れた選手たちにとって、気持ちを切り替えることは容易ではないはずだが、ここから箱根本番までの期間、出走する選手たちのサポートに回り、裏方に徹することになる。ある選手は練習のサポート役に回り、ある選手は箱根のタイム計測、応援などを担う。給水係などの人選もこれから進んでいくだろう。そうして、出走する選手に勝負に集中してもらい、いかに気持ちよく走ってもらうか。彼らの仕事は、きわめて重大だ。