ヨーロッパリーグ(EL)はチャンピオンズリーグ(CL)とは異なり、グループステージで各組の2位となっても、ベスト16(決勝トーナメント1回戦)にストレートインすることができない。各組2位はCLの各組3位とプレーオフを行ない、そこで勝利を収める必要がある。CLを欧州1部リーグとするならばELは欧州2部リーグだ。EL勢にとっては難敵である。

 このレギュレーションのもとで行なわれた過去2回のプレーオフは、いずれもCL勢の5勝3敗だった。ELのグループリーグ1位と2位との間には天と地ほどの開きがある。

 マルセイユかブライトンか(グループB)。ウエストハムかフライブルクか(グループA)。EL最終第6節の戦いに臨んだ日本人のなかでは、三笘薫(ブライトン)と堂安律(フライブルク)がグループ首位争いに絡んでいた。


マルセイユ戦にフル出場、勝利に貢献した三笘薫(ブライトン)photo by Colorsport/AFLO

 堂安が所属するフライブルクは、アウェーでグループ首位のウエストハムと対戦。このプレミアリーグ9位対ブンデスリーガ8位の対戦は、結果を言ってしまえば0−2で後者が完敗した。実力の開きを感じさせる内容で、リーグのレベル差をそこに見た気がした。

 守田英正所属のスポルティングもグループリーグ2位となり、プレーオフ行きが決定した。すでに2位は第5節終了の段階で決まっていて、最終第6節のシュトルム・グラーツ戦は、いわば消化試合だった。守田が出場したのも後半から。結果は3−0でスポルティングが勝利した。

 フライブルク、スポルティングはCLから脱落してきた以下の8チーム(ガラタサライ、ランス、ブラガ、ベンフィカ、フェイエノールト、ミラン、ヤングボーイズ、シャフタール)のいずれかと、2月16日と23日、ホーム&アウェーで対戦する。

 グループ2位に食い込む可能性は、第5節を終了して3位につける町田浩樹所属のユニオン・サン・ジロワーズにも残されていた。最終第6節の対戦相手は、すでに首位通過を決めているリバプールで、遠藤航がアンカーとして先発を飾っていた。

 ベストメンバー度が2割程度のリバプールを、ホームに招いたサン・ジロワーズ。突破のためには、リバプールに勝利を収め、両チームが所属するグループEのもうひとつの試合、LASK対トゥールーズ戦で、少なくともトゥールーズ(グループ2位)が敗れる必要があった。

【苦しんだ遠藤航】

 結果を言えば、サン・ジロワーズはリバプールに2−1で勝利を収めた。しかしトゥールーズも勝ったため、サン・ジロワーズは2位に浮上することができず3位となり、ELの舞台から退くことになった。

 しかしむしろ町田と遠藤の関係は逆だった。楽観的になれるのは町田の方になる。サン・ジロワーズの左CBとしてフルタイム出場を果たし、攻撃にも積極的に関与した町田には、さらなる昇りの階段が待ち構えているように見える。

 遠藤は苦戦した。年齢的にも、またアンカーというポジション的にも、全軍をリードしなければならない立場にあるにもかかわらず、ピッチの真ん中で2度にわたりボールを奪われるなど、不安定なプレーを露呈させた。その結果、前半を終えるや、あえなく交代の憂き目に遭った。

 遠藤は先のプレミアリーグ対クリスタルパレス戦でも危ないプレーを見せている。決定的なピンチも招いていた。狙われている感すらあった。少々荷が重そうに映るのだ。ストッパー的な強さはあるが、リバプール級のチームではそれに加え、ボールさばきにおいて絶対的な巧さが求められる。中心的なポジションを担うに相応しいリーダーシップも求められる。ベストメンバー度2割で戦ったこの日の場合はなおさらである。

 グループBの首位攻防戦、ブライトン(勝ち点10)対マルセイユ(同11)は、ブライトンが首位通過を果たすためには勝利が不可欠な試合だった。

 逆に引き分けでもオッケーなジェンナーロ・ガットゥーゾ監督率いるマルセイユは、通常の4バックを5バックに変更して臨んだ。引いて守る作戦に出たわけだ。ピッチには、攻撃的サッカー(ブライトン)対守備的サッカー(マルセイユ)の構図が描かれた。UEFAのデータによれば支配率は57対43の関係だった。

 想起したのは前々日に行なわれたインテル対レアル・ソシエダ戦だ。5バックで守りを固めるインテルをレアル・ソシエダが攻め立てた一戦である。結果は0−0で、レアル・ソシエダはグループステージ首位通過を決めたが、インテルをレアル・ソシエダが崩しきれなかったと言うべき試合でもあった。

【鮮やかな中央突破だったが...】

 ガットゥーゾ、そしてインテルのシモーネ・インザーギはともにイタリア人監督だ。彼らの現役時代、イタリアのサッカーはいま以上に守備的だった。俗に言うカテナチオの名残を、この2人の若手監督に見て取ることができた。

 ただし、ブライトンのロベルト・デ・ゼルビもイタリア人監督だ。こちらは非カテナチオである。アリゴ・サッキやズデネク・ゼーマン、ルチアーノ・スパレッティの系列に属する攻撃的サッカーの信奉者である。

 ブライトンはイングランド、マルセイユはフランスのクラブだが、この一戦はサッカー的には"イタリア対決"そのものだった。勝利するのは攻撃的なイタリアか、守備的なイタリアか。

 レアル・ソシエダのバスク人監督、イマノル・アルグアシル監督とデ・ゼルビ監督は、攻撃的サッカー系同士になる。5バックを崩すことができるのはどちらの攻撃的サッカーか。コンテストを見ているようだった。

 ブライトンに0−0の均衡を破る、1位通過を決める決勝ゴールが生まれたのは後半43分で、決めたのはジョアン・ペドロ(ブラジル代表)だった。攻撃は鮮やかな中央突破だった。ショートパスをテンポよく繋ぎながらの洒落たゴールだった。しかし、それは"外があったからこその内"だった。サイド攻撃を丹念に繰り返した結果、最後の最後に中が空いたという感じだった。

 左のサイド攻撃で主役を担った三笘は、その意味で貢献度大だった。前々日、インテル相手に右のウイングとしてプレーした久保建英より、効果的なウイングプレーを披露。縦と内のバランスが優れていた。内へ切れ込んだ場合でも、MF的な才覚を見せた。言うならば、縦突破を図るウイング兼、外で構えるゲームメーカー。三笘が絡んだ先にはゴールがある。ゴールへのルートが見えるような、言うならば建設的なプレーだった。

 ウエストハム、ブライトン、レンジャーズ、アタランタ、リバプール、ビジャレアル、スラビア・プラハ、レバークーゼン。決勝トーナメント1回戦に駒を進めたのは上記の8チームだった。

 一方、プレーオフ回りとなったのは以下の8チームになる。

 フライブルク、マルセイユ、スパルタ・プラハ、スポルティング、トゥールーズ、レンヌ、ローマ、カラバフ。

 そしてブックメーカー各社による、CLからの脱落組を含めたうえでのELの優勝チーム予想は以下の順に並ぶ。

 1リバプール、2レバークーゼン、2ミラン、4ブライトン、5ローマ、6ウエストハム、7ベンフィカ、8フェイエノールト、9ガラタサライ、10ビジャレアル。

 決勝トーナメントが待ち遠しい限りだ。