マリニン、宇野昌磨と互角に戦うためにどうする鍵山優真?「今の構成で勝つのは不可能」
鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)は、2021−2022の北京五輪シーズンではグランプリ(GP)シリーズを2勝しながら、新型コロナウイルス感染拡大による中止でGPファイナルの初出場を逃していた。
昨季はケガでテレビ観戦したという大舞台に、今季、ようやく初出場を果たした。その鍵山はフリーの演技を終え、イリア・マリニン(アメリカ)と宇野昌磨(トヨタ自動車)に次ぐ3位に入った。
初出場のGPファイナルで3位に入った鍵山優真 photo by Kyodo News
「結果はどうあれ、やっぱり一番やってはいけないミスをしてしまったのがすごく悔しかった。ノーミスをしたうえでのメダルだったらすごくうれしいけど。ショート(プログラム)はよかったので、その分、すごく悔しくて......」
12月7日のショートプログラム(SP)は103.72点。106点台に乗せたマリニンと宇野に続く3位。11月のNHK杯で出した105.51点には届かなかったが、納得する結果だった。
しかし9日のフリーは、4回転ジャンプを4本以上入れているマリニンと宇野に対し、サルコウとトーループが1本ずつの鍵山には不利な状況だった。本番は、練習ではきれいに跳んでいた冒頭の4回転サルコウが2回転になるミスからのスタートになった。
「(4回転サルコウは)練習でミスをすることがなかったジャンプなので、ちょっと予想外でした。でも、ミスしたから、というのも変ですが、逆に冷静になれた。本当に、とれる点数は全部とりに行くつもりでした。後半の3回転ルッツ+3回転トーループや、NHK杯でミスになった4回転トーループからの3連続ジャンプもしっかりと最後の3回転をしめることができて。ステップとスピンもしっかりとレベルもとれたので、最初のサルコウ以外はとにかく頑張ったと思います。200点も見えていたので、すごく悔しかった」
演技構成点は宇野に次ぐ、全体2番目の91.81点。フリーは自身のシーズンベストの184.93点で、合計も288.65点の今季自己最高とした。
4回転サルコウの失敗について演技終了後には原因がわからないと答えていたが、翌日には、「緊張からなのかわからないけど、いつもよりちょっとスピードが足りなかったなというのは、実際の滑った感覚や映像を見返して思いました。サルコウを跳ぶ瞬間に、一瞬変な意識がよぎり、それでたぶん、変な方向にいってしまったのかなと思います」と説明した。【マリニンと互角に戦えるように】
NHK杯のフリーは、トリプルアクセルの想定外の転倒や、3回転+3回転が3回転+2回転になるミスもあって182.88点にとどまった。そのミスがなければ190点台半ばまではとれた。そうなれば、合計でも300点に乗せられる。
SP、フリーともに4回転2本という構成での300点台が見えていたからこそ、GPファイナルで乗せたかった思いは強かった。そんな力みがサルコウの誤差を生んだのかもしれない。
今季の鍵山は、ケガからの回復途上。GPシリーズ3戦で、最初のフランス杯は300点台に乗せたアダム・シャオ イム ファ(フランス)やマリニンと戦い、NHK杯では宇野と対戦。そして、今回もその3選手と試合をした。そんな経験は自身の現状を把握するための大きな糧となった。トップに上がるための壁や試練を感じられたともいう。
「マリニン選手などを相手に、今の構成で勝ち抜いていくのはまず不可能なのかなと思います。全員がノーミスした時の僕の立場というのは、本当にまだここ(3位)なんだろうな、というのはすごく実感しました。これからもっともっと4回転を増やしていかなければならない。構成も考えるところはあるけど、ジャンプもスピンも全部含めて、GOE(出来ばえ点)を稼げるようにクオリティをあげていくこと、それが僕の唯一のできる部分だと思う」
北京五輪シーズンのような4回転3種類4本の構成に戻していける状態になりつつある、とも感じている。
「表現も含めて、プログラム全体の余裕をもたせなきゃいけないと思います。やっぱり、4回転と引き換えに表現が失われるというのはよくない。4回転は、今調子のいいフリップにするか、トーループを増やすか、考えどころだと思うけど、4回転をもう1本増やしても今のクオリティで演技ができるぐらいまで、経験と練習を積み重ねていけいかなきゃいけない」
自分のペースで成長している、と鍵山は話す。
「世界選手権に出ても、マリニン選手とは本当に互角に戦えるようになるくらいまで練習を積まなきゃいけないなと思います。だから4回転を増やすことも視野に入れ、覚悟を持って練習していきたい。まだどうなるかわからないが、世界選手権に出られるならそこでは何かしらを挑戦したいなと思います」
シニア移行1シーズン目の世界選手権で2位になり、2シーズン目は北京五輪と世界選手権でともに銀メダルを獲得して世界のトップレベルに駆け上がった。それからケガによる1年間のブランクはあったが、再びトップへ向けての戦いを再開した。
宇野とともに日本のフィギュアスケート男子をけん引しなければいけないという自覚も、明確に鍵山のなかに芽生えてきているはずだ。