Z世代「映えないSNS」に熱視線 飾らない日常をシェアする「BeReal」
【連載】Z世代のトレンド研究
「Z世代」は、日々どんな情報に注目し、トレンドを追っているのか。テテマーチ(東京都目黒区)マーケティング研究室「lookey(ルーキー)」のプロジェクトリーダー・川又潤子さんが、Z世代メンバー(同社定義:1995年から2010年生まれ)と共に、はやりのヒト・モノ・コトを取材。人気の秘訣をZ世代の視点で分析し、伝えていく。
「映えないSNS」と呼ばれる、「BeReal(ビーリアル)」。10代〜20代の女性1000人を対象にした「2023年上半期Z世代トレンドランキング」のコト・モノ部門で2位にランクインした、フランス発のSNSアプリです(2020年に公開)。
若者からの注目度が高いようですが、Z世代と言えば「映え」、ではなかったのでしょうか。lookeyメンバーで「BeReal」ユーザーの武井(20歳)に、人気の理由を探ります。
すっぴんの自撮りを送り合う
「BeReal」は、1日1回ランダムな時間に通知をしてくるアプリ。通知から2分以内に、アプリを開いて撮影(外カメラと内カメラで一度に)し、写真を1枚投稿しなければなりません。簡単なキャプションを、一言添えることはできます。
通知は、アプリをダウンロードしている全員へ一斉に行われます。2分以内の投稿が成功すると、そこから丸1日、あと2回「BeReal」に写真を投稿できるようになるほか、「BeReal」内で繋がっている友人の投稿も見られます。
もし「通知から2分以内」に間に合わなくても撮影・投稿はでき、完了すれば友人の投稿も見られるようになります。この場合は、追加でできる投稿が1回のみになります。
業務中はどうしているのか......と思いきや、「投稿しません」とのこと。泣く泣く諦めているというよりかは、「ゆるーく投稿している」感覚なので、そこまで惜しくはないようですね。ただ、どこかへ出かけたり、イベントに参加したりと、写真をたくさん投稿したい日に「1枚しかできない......」という時は残念に感じると言います。また、通知から2分過ぎて投稿すると「(誰)が〇分遅れて投稿しました」と友人に通知がいってしまい、「少し恥ずかしい気持ちになる」とも。
では、一体どんな写真を「BeReal」で送り合うことが多いのでしょうか。武井によると、アプリの通知が来る時刻によりますが、「その場の自撮りが多い」そう。早朝や深夜に通知が来ると、特に女性は「すっぴん」であることが多いと思いますが......。
武井:顔を見せたくない人は、顔を隠して撮りますね。自分ではなく家の中を撮影することも。仲の良い友人たちのみとのやりとりになるため、気にせず自撮りを送り合う楽しさもあります。
わざわざ顔を隠しながら、それでも撮る。なぜそこまでして投稿しようとするのでしょうか。
武井:仲の良い友人が今何をしているのか、「リアルタイムで知りたい」からです。
インスタグラムやX(旧ツイッター)など、他のSNSでも友人の近況を知ることはできます。ただ写真を加工したり、短い動画に編集したりと投稿までに時間がかかり、「リアルタイムで友人が何をしているか」まではわからない......。その「差」が、Z世代にとっては重要であるようです。
「BeReal」は突然来る通知に合わせて投稿しなければならないルールがあるため、武井は「より自然体な友人の生活が垣間見える面白さがあります」と言います。旅行中の友人による、印象的な投稿を教えてくれました。ホテルですっぴんのまま、リラックスした表情の一枚があれば、しっかりメイクしてオシャレした様子の一枚もあり、そのギャップが面白くて見逃せなかったそう。その影響で、素を見せられる人には見せて、ありのままの自分を伝えることを意識している、と言います。
BeReal歴半年......「疲れない」?
いつ通知が届くかわからない「BeReal」ですが、自分が意図しないタイミングで投稿を強いられることは、疲れないのでしょうか。
武井:疲れないですね。BeReal中心の生活にはならないようにしています。6月頃からアプリを使い始めましたが、今もこの意識は変わりません
通知から2分以内に間に合わなかったときのデメリットを理解したうえで、ルールに縛られて疲れないためにゆるく取り組んでいるわけですね。
また、BeRealに「ある役割」を期待していることが、「長く利用し続けるために、疲れないようにやろう」と思わせる理由の一つなのかもしれません。
武井:「BeReal」を交換する相手は「いつ何をしているのか常に知りたい」というくらい、気の知れた友達に厳選しています。「BeReal」の1日1回のアプリの通知が来ることで、ラフにお互いの近況を情報交換できるいい機会です。
別のSNSのDMなどで友人に「今何をしているの?」と聞くのは、「相手に負担をかける」との認識があるようです。前回の連載記事でも、「位置情報アプリ」を使って、友人の現在地から「今何をしているのか」を予測し、相手の状況にあわせた誘い方をしたり、あえて誘わなかったり......という気遣いをしていましたね。それと同じ原理かもしれません。
写真についても、自然体の自分をさらけ出せる関係性の友人とだけ共有するからこそ、「キラキラした自分」ではなく、「リアルタイムな自然体の自分」を投稿したい、という思いになるのでしょう。「誰に対しても、映えない写真をバラまきたい」わけではないのですね。
これからもlookeyは、最新のトレンドを追いかけて行きます!