労働安全衛生局に提出された資料から、テキサス州オースティンにあるテスラのギガファクトリーは労働環境が劣悪で、2022年には従業員の21人に1人が負傷する事態になっていることが明らかになりました。

At Tesla’s Giant Texas Factory, Injuries and Safety Lapses Mount - The Information

https://www.theinformation.com/articles/at-teslas-giant-texas-factory-injuries-and-safety-lapses-mount



Tesla workers report explosions, concussions, and grisly robot injuries at Texas factory - The Verge

https://www.theverge.com/2023/11/21/23971138/tesla-gigafactory-austin-texas-injury-reports-robot-claw-explosion

これはニュースサイト・The Informationが、労働安全衛生局に提出されたデータをもとに報じたものです。

たとえば2021年4月、動作停止中のロボットアームに近づいたエンジニアが、なぜか規定通りの動作を行ったアームに引っかかれるようにして壁にたたきつけられる事故が起きました。誰かが非常停止ボタンを押したのでアームは動作を停止しましたが、エンジニアは背中と腕から出血しながらシューターに落ち、血の跡が残ったとのこと。トラビス郡にはロボット関連の事故があったとして傷害報告書が提出されましたが、内容は目撃者の証言とは一致しないものだったそうです。

このほか、2022年には、従業員が台車にひかれて全治127日のケガを負い、その数日後には別の従業員が頭部を負傷して全治85日のケガを負いました。

また、2023年1月には金属鋳造エリアで爆発事故が起き、少なくとも1人が脳しんとうを起こしました。溶融アルミニウムを扱うプレス機に誤って水が混入したものとみられています。

2023年6月には、高所通路にグレーチングを取り付けていた請負業者が落下する事故が発生。原因は保護具不足で、グレーチングも落下したため業者は下敷きになり、骨折して肺に穴が開いたとのこと。このほかに工場従業員は空調ダクト、鉄骨の梁、建築資材が近くに落ちてきたことがあると報告しています。



工場従業員によると、成型機も正常に動作せず、溶融金属を吐き出すことがあるものの、解決策を提示すると「機械をシャットダウンすると生産性が落ちる」と叱責されたとのことです。

これらの話はオースティンのギガファクトリーに限った話ではなく、カリフォルニア州フリーモントの工場は従業員の負傷率が全国平均よりも高く、テスラは負傷の過小報告や屋外に設置したテントの危険対策不備などで告発され、2万9365ドル(約440万円)の罰金を科されています。

ちなみに、テスラが新たな工場建設地にテキサス州オースティンを選んだのは、テキサス州に「労働権法(Right to Work法)」があるためだと、ニュースサイトのThe Vergeは指摘しています。

労働者には労働組合への加入義務がありますが、RTW法は労働者に労働組合への加入を拒否する選択肢を与えます。このため、RTW法がある州では労働組合への加入率が下がり、労働組合の影響力が落ちることになります。テスラのイーロン・マスクCEOは労働組合反対派なので、RTW法の恩恵を最大に生かしているというわけです。