箱根駅伝の優勝争いを城西大、創価大、大東大は盛り上げられるか 3校の監督が語る全日本大学駅伝で見えた課題と期待
10月の出雲駅伝を制している駒澤大。11月5日の全日本大学駅伝でも、1区でトップに立つと、そのまま2位以下に3分34秒差をつける勝利で強さを見せつけた。その駒澤大をどこまで追い詰めるかと期待されていた青山学院大と國學院大、中央大は終盤に熾烈な2位争いを繰り広げ、秒差で2位から4位という結果。箱根駅伝に向けては、1強+3校の図式が明確になってきた。
4区区間賞の走りでチームを盛り立て、シード権獲得に貢献した城西大の斎藤将也 photo by Kyodo News
2年ぶりの箱根出場だった城西大は今年、1年生5人を含む3年生以下のチーム構成で挑み、5区山本唯翔(現・4年)が区間賞獲得の走りで浮上すると、総合9位で5年ぶりにシード権を獲得した。今回の全日本(3年ぶり10回目)は、関東地区選考会を1位で通過し、本大会で5年ぶりにシード権を獲得。
櫛部静二監督は「目標が5位だったので、そのとおりになったのは素直にうれしいですが、途中2位に上がったところもあったので、惜しかったという気持ちもあって複雑。やっぱり欲は出るものですね」と笑みを浮かべる。
1区の林晃燿(3年)は18位と出遅れたが、13位でタスキを受けた3区のヴィクター・キムタイ(2年)が区間賞獲得の走りで8位に上げると、4区の斎藤将也(2年)も区間賞獲得の走りで、チーム順位を2位まで押し上げた。そのあとは順位を落としながらも8区の山本が順位を戻して5位でゴールした。
「3区と4区はいけると踏んでいましたが、そこが(予想以上に)よかったのが5位になれた要因だと思います。不満が残ったのは1区と7区ですね。特に7区の平林樹(3年)は区間10位だけどもう少しいけると思っていて、いい位置で走れていればと思いますが、前を追えない感じになったのは痛かったです。ただ、ミスがなければ(上位校と)戦えるかなと思えたので、手応えと課題の両方が感じられた試合でした」
斎藤の区間賞獲得の走りは評価する。
「彼はずっとキムタイとも一緒に練習をしていて力はあるけど、こういった試合では体調が合わなかったりして、結果を出せていなかった。ここで実際に走れたというのは大きな収穫かなと思います」
これまでは人材確保が難しいながらも、選手を一流にすることを目標にやってきたという櫛部監督。核になる選手がほぼひとりというところから、2022年にチーム初の留学生となるキムタイが入ったことで、「自分たちもそのレベルにいきたい」と思う選手が2人、3人と増えたのが大きいと言う。
「箱根に向けては、今回5区の野村颯斗(4年)が区間8位でしたが、レベル的には山本と同学年で常に一緒に競ってきたので、最後の箱根で走ってくれればいいと思います。ただ、箱根となれば特殊区間の山もあるし、斎藤やキムタイと他に核になる選手もいるので往路優勝を視野に入れてやっていきたいです」(櫛部監督)
箱根では4大会連続でシード権を獲得している創価大。ただ、前回主要区間を走った4年生が6人抜け、戦力ダウンが予想されていた。だが今季、駅伝シーズンに入ると、出雲では3区のリーキ・カミナ(3年)が区間2位の走りで順位を2位に上げ、4区の山森龍暁(4年)と5区の吉田響(3年)が区間賞を獲得して、そのまま2位でゴールと周囲を驚かせた。
だが、今回の全日本は1区の織橋巧(1年)がトップと6秒差の4位といい滑り出しをしながらも、2区の山森が区間13位、3区の石丸惇那(2年)も区間13位、4区の小池莉希(1年)が区間16位と、出雲駅伝の快走を再現できない走りで順位を13位まで落としてしまった。
それでも「彼の場合は区間記録を絶対に更新するんだという、強い気持ちを持って準備をしていた」と榎木和貴監督が話す、5区の吉田響が区間記録を29秒更新する1位の快走でシード権圏内の8位まで1秒差の9位に順位を上げた。
6区の山下蓮(2年)は区間16位で11位まで落としたものの、7区では、もうひとりの留学生のスティーブン・ムチーニ(1年)が区間4位の走りで9位に再び上げた。そして最終8区の吉田凌(3年)が、東京国際大や早稲田大との7位争いから抜け出し、落ちてきた大東文化大を抜いて6位に上げてゴールした。
想定とは違った、追い上げなければいけないレース展開を榎木監督はこう振り返る。
「『先頭争いができるような勝負をしたい』とチーム作りをしてきたし、目標は3位だったので、その流れを築けなかったのは、まだまだ取り組むべき課題があるということ。出雲で2位を取ったことを自信にするというより、『満足してしまったのかな』と感じる部分はありました。2区から4区の3人は、出雲でいい走りをしていたので力みもあったかもしれないですが、駒澤大の選手はもっとプレッシャーがかかっていると思う。
周りに踊らされるのではなく、地に足をつけて、駒澤さんみたいな強い覚悟を(持ってほしい)。『俺らは絶対に先頭を譲らない』ぐらい攻めの気持ちを持って試合に臨む必要があるというのを強く感じました」
好調と不調の選手の差が順位に大きく出てしまったことについては、「全員が区間5位以内だった出雲駅伝のように、しっかりまとめる走りを追求しようと(全日本に)挑んだが、悪いほうに出てしまいました」と榎木監督は反省を述べる。
そして、箱根までのあと2カ月弱、取り組むべきことについて榎木監督はこう話す。
「今日走らなかったカミナも含め、留学生ふたりと(吉田)響はしっかり走れていますが、彼ら頼みになってしまったのは反省しなければいけない。箱根に向けては今回走れなかった4年生の桑田大輔と志村健太は、最後まで悩むくらいにいい状態を作っていたので、彼らには今日の悔しさを持ってアピールして欲しい。チーム全体として成長はしているが、まだ完成された強さではない。上位に入っている國學院大や青学大もそういうことを経験しながら毎年チャレンジしていると思うので、我々もそういう領域に入っていかなければいけないと思います」
満足のいく走りではなかった城西大や創価大とは違い、「プランどおりのレースをしてくれた」と笑顔を見せたのは大東文化大の真名子圭監督だ。1区の佐竹勇樹(4年)がトップに7秒差の区間5位で滑り出すと、エース区間である2区の西川千青(3年)は区間11位で9位に落としたが、それ以外の選手はひと桁順位でつなぎ、6区のピーター・ワンジル(3年)が区間2位で走って6位に上げると、シード権獲得がほぼ確実な状況を作った。
「区間順位もさることながら、とにかくシード権の8位から6位の順位が見える空間で走れと(選手たちには)言っていました。たとえ9番や10番でも8番が見える位置なら大丈夫だから焦らなくてもいい。最後に8番に入ればいいというプランを立てました。うちは前半区間に主力選手を置きましたが、他大学の主力との戦いでは力負けしてしまうので、最後にシード権に入るためには、(後半を走る)主力以外の選手のところがポイントだと思っていました」(真名子監督)
過去には4連覇も含め、全日本7回優勝と歴史を持つ大東大。5年ぶりの出場で14位という結果だった昨年と比べて今年の走りを真名子監督はこう振り返る。
「昨季は駅伝らしい駅伝ができなかったですが、集団走では走れても、ひとりで走る強さはなかったんです。そういう意味で、今季はようやく強さが出てきていると思います。4年ぶりの出場だった今年の箱根もそうですが、去年(の全日本)は出場できてうれしかった反面、シード権を取れなかった悔しさがすごくあったので、その意味でも学生たちに『シード権を取りたい』という気持ちが大きく芽生えていたのだと思います」
そんな気持ちの変化の表れのひとつが、今年の箱根駅伝予選会だった。昨年はワンジルが他校の留学生たちと競り合い、5位でゴールしてチームの1位通過に貢献した。しかし、今年はレース中に足を痛めて5km過ぎから大きく遅れると、残り1km付近で棄権という結果に終わった。それでもワンジルの失速に動揺することなく、日本人選手のみの力で予選1位通過を果たした。
目に見えて底力のアップに成功している選手たちとともに、真名子監督も箱根へ向け、「特殊区間もあるので、そこは作戦というか戦略にかかってくる」と、意気込んだ。