@AUTOCAR

写真拡大 (全2枚)

EVをさらにシンプルに 革新的なアイデア

シンプルで良いアイデアは、身近なところに見え隠れしていることがある。バッテリーEVのように比較的シンプルな機械を、さらにシンプルにするためのアイデアもそうだった。

【画像】EVに新たな技術革新? 14ブランドの挑戦【ステランティスの最新世代EVを写真で見る】 全45枚

EVが内燃エンジン車に比べて「シンプル」なのは、4ストロークエンジンの燃料供給システムや給排気システム、高度化する排ガス処理装置など複雑な機構が必要なくなるからだ。ただ、「比較的」というのは、機械的には単純で触媒やトランスミッション、排気装置さえも持たないが、その背後にある科学とエレクトロニクスはかなり高度なものだからである。


ステランティスの「IBIS」はEVの部品点数の削減を目指している。    ステランティス

ステランティスは最近、インテリジェント・バッテリー統合システム(IBIS)の開発でバッテリー専門メーカーのサフトと協力していることを明らかにした。IBISは、既存のバッテリー技術とは少し異なるアプローチにより、EVの部品点数をさらに減らすことを目的としている。

EVのパワートレインは一般的に同じ構成要素でできている。バッテリーは直流(DC)電気を蓄え、充電する必要がある。電気モーターは家庭用電源のように交流(AC)で駆動するため、インバーターによって交流を直流に、またはその逆に変換する。そして、送電網から交流電流を取り込み、直流に変換してバッテリーに供給する車載充電器もある。

EV用バッテリーは、時には数百もの小さな低電圧リチウムイオンセルで構成されているため「バッテリーパック」と呼ぶのが適切だろう。しかし、セルはパック内ですべて一緒に接続されているのではなく、モジュール形式で配置されている。そのため、バッテリー電圧が400Vや800Vと高くても、個々のモジュールの電圧は11V程度と低い(サイズや設計による)。

ステランティスのIBISでは、太陽光発電システムを参考にハードウェアを削減することに成功したという。太陽光発電システムは、バッテリーのように直流電力を生み出す多数のソーラーパネルで構成され、それを1台のインバーターに送って交流に変換する。また別の方法として、複数のマイクロインバーターを使用し、個々のパネルから得る直流電力を交流に変換するというものもある。

IBISも後者と同様のアプローチをとっている。各バッテリーモジュールには充電器の機能とマイクロインバーターの機能が統合されており、従来の車載充電器や高電圧インバーターが不要になる。全体として、バッテリーパックは直流ではなく交流電流を生成し、モーターに供給する。

ステランティスは、この仕組みはスペースが限られる小型EVに有利だと考えている。また、コストも低くなると言われているが、充電器やインバーターといった小型の電子機器が従来の高電圧機器よりも安価なためだろう。

IBISは、EVを進化させる革新的なアイデアとなる可能性がある。同時に、他のコンセプトとの互換性には課題が残されるかもしれない。例えば、フォルクスワーゲンはセルを車体構造に直接取り付けるという「セル・トゥ・カー」の実用化を目指している。

メーカー各社は目に見えない部分にユニークなアイデアを採り入れ、競争力の強化に努めている。その恩恵は、価格やサイズという目に見える形でわたし達ユーザーに届くのかもしれない。