フランスの身勝手と意地が生み出した? 傑作戦闘機「ラファール」初飛行1986.7.4 現在も採用国拡大中!
1986年7月4日、現在もフランス空海軍やエジプト、インドなどが使用する「ラファール」が初飛行しました。実は同機は、イギリス、西ドイツ(当時)との戦闘機の共同開発プロジェクトを抜けて作った機体となっています。
西欧諸国と共同して作るはずだったが?
フランス空軍が、2023年6月25日から8月3日まで行われるインド太平洋への大規模展開「ペガーズ2023」で、同軍所属の戦闘機「ラファール」が日本へ飛来する可能性を発表しています。
同機はフランスの軍需企業ダッソー・アビエーションを中心としたフランス企業が開発を担当し、1986年7月4日に初飛行しました。実はその前段でフランスは、イギリス、西ドイツ(当時)との戦闘機の共同開発プロジェクトを行っていました。そこから離脱して自前で作った機体が「ラファール」です。
空母「シャルル・ド・ゴール」甲板上の「ラファール」(画像:フランス海軍)。
フランスが抜けた戦闘機の開発プロジェクトとは「EFA(ヨーロッパ戦闘機)」という名称のものでした。この計画を元に仕切り直しなどを行い完成したのが、現在イギリス、ドイツのほか、欧州各国で運用されているユーロファイター「タイフーン」になります。
EFAが1970年代後半に始まった当時、具体的な方針は定まっておらず、“1990年代までに一緒に協力して新しい戦闘機を作る”くらいの方向性しか決まっていませんでした。結果、各国の思惑が食い違うことになります。
その中でも、フランスは空軍の運用していた「ミラージュF1」及び「ミラージュ2000」に加え、海軍の空母艦載機であるF-8と「シュペルエタンダール」の更新も同機に求めていたため、ほかの国とのギャップはかなり大きくなりました。
次世代の戦闘機に艦載機としての機能を持たせようとしていたのは、フランスのみで、そのための小型・軽量化を要望しましたが、他の国は否定的でした。
さらに、安全保障上や自国産業保護の関係でエンジンは自国産が望ましいと考えたフランスは、計画機のエンジンに同国の航空エンジンメーカーであるスネクマのM88エンジンの採用を強く要求します。しかし、他の国への恩恵はないということで、拒否され、早々にフランスは離脱することになります。
自国開発にこだわったことがプラスに働く?
自国開発での再スタートとなった「ラファール」ですが、「タイフーン」の開発が各国で違う思惑の調整に苦慮していた影響で、初飛行に関しては「タイフーン」よりも8年近く早く実現します。
艦載機タイプの「ラファール」試作型(画像:フランス海軍)。
特徴は主翼のデルタ翼で、機首近くにはカナード翼を備えています。形状はもともと同じ計画だった「ユーロファイター」に似ていますが、空母運用を考えひとまわり小型です。エンジン出力もやや小さく最高速度こそ「タイフーン」に劣りますが、燃費は良く、航続距離は大きくなっています。
また、1機で敵軍用機と戦う制空戦闘から、地上目標を攻撃する役割も行える「マルチロール機」として当初から開発されているのも特徴で、対空ミサイルから誘導爆弾まで様々な武装を装備できるのが魅力です。幅広い任務をこなし、実戦投入されたアフガニスタン紛争やリビア内戦では、戦闘機として以上に攻撃機・爆撃機として高い評価を得ました。
しかし、同じ西側陣営の最大手であるアメリカ系の兵器とほぼ互換性がなく、武装はフランス製で揃えなければならないという問題点はあります。その辺りはフランスらしさかもしれません。
ただ、採用国に関してはフランスに加え、2010年代に入ってからエジプト、カタール、インドと増えており、2020年にはギリシャ、2021年クロアチアとアラブ首長国連邦、さらに2021年6月にはインドネシアでも採用。兄弟機ともいえる「タイフーン」が2000年代以降伸び悩むなか、ここ数年採用国の拡大を見せています。
採用国が増えた理由については、「タイフーン」より開発が遅くなったこともあり、当時最新の設計思想で作られた探知能力の高い「PESA(パッシブ・フェイズド・アレイ)レーダー」を装備していることに関係があるかもしれません。2022年現在でも同レ―ダーはソフトウェアのアップデートのみで、戦闘機の電子機器の進化に対応でき、コストパフォーマンスの良さが評価されています。
ちなみに、製造元のダッソーは現在、次世代戦闘機「フューチャー・コンバット・エア・システム(FCAS)」の開発をドイツ、スペインの企業と協力で進めていますが、エアバスとの摩擦で、2022年は長期にわたり開発が中断するなど、以前の「EFA」と同じような状況になっています。もしかすると、またフランス1国での開発になる可能性があるかもしれません。