専門家の目から見て、レッド吉田さん(右)の投資に点数をつけると何点? (撮影:佐々木仁)

5児の父であるお笑いコンビTIMのレッド吉田さんは不安定な芸人稼業への不安から、安定した収入を増やすべく、2011年に世田谷でアパート経営を始め、現在は世田谷区のシェアハウスと川崎市の大型マンションの一区分を賃貸しています。

レッドさんの不動産投資は専門家の目から見たら順調なのでしょうか? 不動産投資の専門家で、現在、国内に30棟の物件を所有し、『Excelでできる 不動産投資「資産管理」のすべて』を上梓した玉川陽介さんにレッド吉田さんがこれまで投資した3軒の物件について点数で評価してもらいました。

レッド吉田さんの投資に点数をつけると0点!?

――前回(『レッド吉田が「大家さん」になった意外なきっかけ〜不動産投資始めて12年で3軒に投資、その極意とは』)は、玉川さん流の不動産投資のノウハウ、レッドさんの投資歴について聞きました。今回は、まず、レッド吉田さんの不動産投資を、玉川さんに採点していただきます。レッドさんの投資は、ぞれぞれ100点満点で何点ぐらいですか。

玉川:そうですね。最初の桜新町のアパートですが、ずばり、0点ですね。


お笑いコンビTIMのレッド吉田さん(撮影:佐々木仁)

レッド:えーー、0点ですか。

玉川:すみません。購入・建設費が1億4700万円で、地銀のローンの金利が4.5%、2年目から3.5%で、利回り4%でしたよね。物件にもよりますが、表面利回りが4%だと、純利回りは3.5%以下になるのが普通です。3.5%で借りていたら赤字になってしまいます。

ですから、売ってしまったのは正解です。早く決断できたところは100点ですね。売却益で損はしていないということですから、経験値を得られたという点ではよかったのではないでしょうか。

レッド:シェアハウスはどうですか。

玉川:購入とリフォームで2500万円に対し、家賃収入が年間360万円だったら、表面利回りは14.5%ですね。

レッド:はい。税金とか自分で計算したら、実質12%はあると思います。

玉川:実質利回り12%なら100点ですが、考えなければならないのは資産価値です。利回りというのは、売却するときに購入価格と同じ値段で売れることを前提に算出しています。ですから、資産価値が下がると利回りも下がります。

レッドさんのシェアハウスは、「再建築不可」であるところと、シェアハウスにリフォームしているところが、マイナス評価になる危険性があります。シェアハウスの間取りにしてしまった物件は、普通の借家としては貸せないので、いわゆるキワモノ物件のカテゴリーに入ってしまうんです。

レッド:キワモンですか。

玉川:キワモノは悪いばかりではなく、それを評価してくれる買い手がつけばプラスになることもあります。が、売却するときにいくらで売れるかわからないというギャンブル性は残ってしまいます。ですから、私は基本的にはやりません。が、利回り12%なら、ギャンブル性の部分で減点しても、80点は取れます。


(撮影:佐々木仁)

レッド:高得点じゃないですか。

玉川:最初から、再建築不可であることや、シェアハウスのリスクも計算し、将来の売却を前提に、売値は少し下がっても十分な収益を得られると確信して投資されているなら、100点です。

レッド:いや、そんなことは全然、計算に入っていませんでした。

玉川:つまり、そこもちゃんと計算しましょう、ってことです。考えてほしいのは、リスクまでとって投資する価値があるか、ということです。例えば、経費などを差し引いて、10年で投資額の2500万円が回収できて、2500万円で売れたとすると、10年で2倍ですから、複利7%です。

もし、2000万円でしか売れなかったら、10年で2500万円が4500万円ですから複利は6%です。同じ2500万円を投資するなら、もっといい物件があるかもしれません。マイナス20点は、そこまで考えて投資していなかったことによる減点です。

川崎大師の物件は何点?

レッド:なるほど。もっと、いろいろ勉強しないといけませんね。川崎大師のマンションは何点もらえますか。


不動産投資家の玉川陽介さん(撮影:佐々木仁)

玉川:1000万円の物件を不動産屋さんと折半して購入して投資額は500万円、家賃8万円も折半で年間50万弱ですから、表面利回りが10%ほどですね。それだけ聞くと100点満点といいたいところですが、50点ぐらいですね。長期的にみると、シェアハウスの場合と同じで、最後にいくらで売れるかを考慮しなければいけないのと、500万円の投資の資金効率を検証する必要があります。

まず、売却リスクですが、築45年ですと旧耐震基準の建物で基本的にはローンは借りられませんから、買い手を探すのが難しくなる危険性があります。

次に資金効率です。利回り10%と聞くとよさそうですが、500万円の10%は年収50万円にすぎません。もし、少ない元手でより大きな物件を買うことができれば、無理して高利回り物件を選ばずとも50万円を超える収益を得ることはできるでしょう。

同じ500万円を元手にするなら、500万円で買える物件と、500万円を頭金にしてローンを組んで手に入れられる物件で、どちらが有利かを検討してみるべきです。不動産では借り入れによるレバレッジ効果を使いこなすことが重要です。

例えば、500万円の頭金で2500万円のローンを組んで、利回り5%が期待できる3000万円の物件を購入した場合と、どちらが儲かるのかを計算してみるということです。金利2%でローンが組めるとすると、3000万円の物件のほうがはるかに多くの利益を得られます。そして、その物件の売却リスクが小さければ、計算通りに収益を得られる安全な投資となります。

レッド:つまり、キャッシュで安い物件に投資するぐらいなら、それを頭金にしてもっと高額な物件を検討したほうがいいってことですね。なるほど。

玉川:前回、お話ししたとおり、不動産が儲かる理由ってそもそもそれなんです。賃貸で得られる利回りと、ローンの金利の差額で利益を得るという考え方ですから、キャッシュで1000万円の物件を買うより、ローンを組んで5000万円、1億円の物件を購入したほうが、大きな利益が得られます。

レッド:実は、一緒に買った不動産屋さんとは、1000万円は破格なので、とりあえず買っといて、それを今住んでいる方に1300万円ぐらいで買ってくれないか打診してみようと話しているんです。

もし、買っていただけない場合は好きなだけ住んでいただいて、もし引っ越しされたら、リフォームして売却するという計画です。リフォームすれば相場は2000万円ぐらいです。もし、2000万円で売れたらもう少し点数もらえますか。

玉川:そうですね。旧耐震基準ですから、買い手がローンを組むのは難しいのですが、キャッシュで買ってくれる人が見つかれば、もう少し点数はあがりますね。

レッド:ありがとうございます。0点、80点、50点か……。厳しいな……。簡単やないということですね。

緑が多い場所はあまりよくない!?

レッド:これから、不動産投資しようと思ったときに、何から始めればいいですか。やっぱり、物件探しですか。

玉川:例えば、サラリーマンの方ですと、今は貸してくれるところが少なくなっているので、まずは、金融機関を探すところからスタートしてほしいですね。自分の希望ばかり考えても、金融機関が助けてくれないと実現しないので、金融機関が融資してくれそうな物件を見つけて、融資してくれる金融機関を探すというのが現実的です。

そう考えると、今の状況だと、都心のいい場所の何億という物件で、利回りが低いとなると、どこも貸してくれませんから、規模が大きいほどよいという話とは矛盾するようですが、初心者の方は、ちょっと郊外の小さい区分から始めるのもいいかもしれません。


(撮影:佐々木仁)

レッド:優良物件の見極め方ってあるんですか。

玉川:参考になるかわかりませんが、グーグルの航空地図でみて、畑とか公園とか緑が多い場所はあまりよくありません。自分が住むなら緑が多いのはいいことのようですが、緑が多いということは土地が余っているということなので、今はよくても、すぐ隣に新築のマンションができて競合してしまう危険性が高いんです。

逆に都心近郊の住宅密集地だと、住環境はよくありませんが、不動産屋さん目線で見ると、空き部屋になるリスクは小さいのです。

ですから、都心からちょっと離れた郊外で、賃貸物件の需要が安定している場所を探すのがお勧めです。かつ、自分の年収や預貯金、勤務先など、自分の属性にマッチした金融機関を探すことです。その組み合わせができれば、これから始めても遅くはないと思います。

レッド:やっぱり首都圏がいいんですか。

玉川:首都圏に限りませんが、土地勘のあるところのほうが失敗はありません。大阪生まれで、いま、東京に住んでいる人なら、首都圏でも関西圏でも同じですが、例えば、関西をまったく知らない人が、いきなり関西の物件に手を出すのは危険です。

レッド:千葉はどうですか。結構、物件はあるんだけど、高いのか安いのかよくわかりません。見極める基準はありますか。

玉川:戸建てや一棟買いの場合は、同じような条件の更地の相場を調べ、そこに自分が新築の建物を建てた場合の費用を計算して、比較してみるのが一つの方法です。中古物件なら利回りを見てみることですね。周辺の同じような物件の賃貸料を調べてみます。

あとは、一般の人がマンションや戸建てを買うのと同じです。情報誌や情報サイトで、100件ぐらい比較検討してみると、相場観はわかるようになります。

おっしゃるとおり、千葉や埼玉など微妙なエリアはプロ向きです。どこでも優良物件の都心と違って、同じ千葉でも地区により差が大きいからです。私も、千葉のこのエリアなら需要リスクがあるのかないのか、高いのか安いのかって、よくわかりません。

金融緩和前の不動産が安い時期であれば、池袋とか新宿とか、人がたくさんいる場所から買っていけばよかったのでシンプルでしたが、今は、都心は高騰し、手ごろな物件は郊外になっていますから、難易度は上がっています。目利きが必要です。ですから、地元とか、住んだことがあるなど、土地勘がある場所で始めるのがよいと思います。

いちばんのリスクは「無知」

レッド:不動産投資を始めるための目安とか条件のようなことはありますか。年収とか、貯金とか。

玉川:よく聞かれますが、最低限の諸経費でも数百万円は必要ですから、年収1000万円、預貯金1000万円ぐらいが目安と答えることにしています。

レッド:投資回収のスパンはどれくらいと考えればいいですか。5年後にいくら儲かるとか、考えるんですか。

玉川:いくら儲かるという発想ではなく、投資額が年間何%で運用できるかという観点で考えたほうがよいと思います。その辺りは株式投資と同じですね。

例えば、10年後も物件価格は変わらないという前提で、その中で自己資金がどのくらい効率的に運用できているかは必ず計算します。不動産投資では、お金を借りれば借りるほど、利益は大きくなります。利回りと融資の利率を考えたときに、利息が安い間はそのほうが得だという発想です。家賃が売り上げで、金利が必要経費と言ってもよいかもしれません。

レッド:優良物件はずっと持ち続けるんですか。

玉川:相場より高く買いたいという人がいれば、いつでも売ります。今売るのと、5年後に相場で売るのとどちらが有利かという計算はしますが、相場より高く買いたいのには、学校の敷地を広げるのに隣接地を買いたいなど、高く買う理由があるので、相場よりかなりの高額で売れるんです。

レッド:これだけは気を付けておきたい、ということを教えてください。


(撮影:佐々木仁)

玉川:いちばんのリスクは無知であることです。収益計算ができないとか、不動産収入の税率を知らないとか、そういう基本的な知識なしで始めると、不動産は投資額が大きいので大怪我をするリスクがあります。

ちょうど今、金利を上げるか、維持するかの議論があると思いますが、もし、金利が今より1%上がると収益はどうなるのかとか、1000万円で購入した物件が5年後に500万円に下がった場合、借金はいくら残ってしまうのかといった最悪の場合を想定して、それでも破綻しない範囲で投資することを心掛けてください。

レッド:勉強になりました。ありがとうございました。

(構成:岩本宣明)

(レッド吉田 : お笑い芸人)
(玉川 陽介 : コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ代表取締役)