衣替えを行う季節の変わり目は天候も変わりやすく、あまり早いと、寒の戻りなどでかえって体調を崩してしまうことにもなりかねません。また、洗濯や衣服のしまい方にも気をつける必要があります。

では、実際に衣替えはいつ行うのがよいのでしょうか。今回は衣替えの歴史も踏まえて解説します。

衣替えはいつ

通常、春と秋の年2回行う衣替え。具体的にはいつ行うのでしょうか。アンケート調査の結果と歴史的な背景を踏まえて解説します。

一般的には6月1日と10月1日
衣替えは四季がある日本だからこその習慣ともいえますが、最近は春と秋の期間が短く、夏服から冬服へ、冬服から夏服への衣替えが主流になっています。

本来、衣替えの時期は冬服から夏服が6月1日、夏服から冬服へは10月1日に行われるのが慣習でした。これは、学校の制服の衣替えがこの時期に行われていることに倣っています。ただ、最近では5月や11月などに2週間~1ヶ月程度の移行期間を設けている学校も増えているようです。

会社でもクールビズなどネクタイを外す時期を、従来の6月から5月に早めているところも多いのではないでしょうか。

最近は夏の衣替えが早まっている
最近は地球温暖化の影響からか、夏の衣替えが早くなる傾向にあります。

AEONが運営するWebサイト「WAON POINT」の夏の衣替えのアンケート調査(調査日:2020年6月1日~6月14日)によると、夏の衣替えをするタイミングは「5月の暑い日が増えてきた頃」という回答が一番多く、45.8%になっています。次いで多いのは、「気候と衣類が合わなくなってきたと感じた時」で23.3%でした。

日本は南北に長く、地域によって気候が大きく異なります。そのため、実際の衣替えはそれぞれの地域で適した時期に行うのがよいでしょう。

夏の衣替えなら、最高気温が20度を超える日が続き始めたときといわれており、地域や年によっては4月の時点で20度を超えるところもみられます。

※ 出典:WAON POINT アンケート結果発表

衣替えの由来

衣替えの慣習はいつごろどのように始まったのでしょうか。歴史的な背景とあわせてみていきましょう。

平安時代に中国から伝わる

平安時代の宮中行事から始まった衣替え

中国の宮廷では年に2度、4月下旬~5月上旬に冬物から夏物の装束へ、10月下旬から11月の上旬には夏物から冬物への装束に入れ替える習慣がありました。これが、平安時代に日本に伝わり、4月と10月の始めに行われるようになったといわれています。

日本では、当初この行事を「更衣(こうい)」と呼んでいました。しかし、天皇の着替えの役目を持つ女官の呼び名も「更衣」だったことから、行事については、「衣替え(衣更え)」と呼び分けられるようになったそうです。

今でも「更衣」という言葉が残っているのは、その名残でしょう。

江戸時代は年4回
平安時代の衣替えは年に2回でしたが、江戸時代になると、幕府の命令により武士の衣替えが年4回行われることになりました。衣替えの時期だけでなく、武家の着用する衣服の種類も以下のように決められました。

・4月1日~5月4日:袷(あわせ:裏地が付いた着物)
・5月5日~8月末;帷子(かたびら:裏地がない着物)
・9月1日~9月8日:袷(あわせ:裏地が付いた着物)
・9月9日~3月末:綿入れ(わたいれ:生地の間に綿が入った着物)
日付はすべて陰暦

衣替えが制度化していたのは武家だけでしたが、江戸時代に着物の種類が増えたこともあり、庶民にもその習慣が広がっていったと考えられています。

明治以降は年2回に

明治維新後洋式の制服が導入され、年2回の衣替えが制度化される

明治時代に大きく変わったのは、人々の服装です。それまでの和服から洋服へ移り変わり、洋服も夏物や冬物が出てくるようになりました。役人や警察官、軍人の制服も洋装化し、衣替えの時期も新暦の6月1日と10月1日に定められました。

学校制度が広がると学生の制服にも採用され、現在では企業も衣替えを行うようになっています。

衣替えをする意味

衣替えは家族全員の服を洗濯し、入れ替え、保管するなど手間がかかります。このような手間をかけてでも衣替えを行う意味はどこにあるのでしょうか。

衣服のメンテナンスと合理的な収納
衣替えは、服の汚れを落としてメンテナンスするちょうど良い機会となります。夏場のTシャツなど薄手で洗いやすいものは毎回洗濯できますが、冬のセーターやコートなどは、そう頻繁にクリーニングに出すものではありません。

1回しか着ていないから大丈夫だと思っても、実際には汚れが付いており、放っておくと取れにくくなってしまいます。洋服の素材が劣化したり、黄ばんだりしてしまうのです。

一度しか着ていないものでも、きちんと洗濯もしくはクリーニングを行い、汚れを落としておきましょう。そうすれば、洋服を長持ちさせることができます。

また、衣替えは要らない服を思い切って処分できる機会にもなります。たとえば、シーズン中一度も着なかった服は翌年も着ることはないだろうと判断し、思い切って捨てるか、フリマアプリで販売するといった選択も可能です。

衣替えの文化的側面
衣替えには合理的側面のほかに、文化的な側面も持ち合わせています。

一斉に洋服を切り替えれば、季節の移り変わりをより身近に感じられるでしょう。また、季節を先取した服を着ると「粋」な人だと思われる反面、春になったのにいつまでも冬服を着ているような人は「野暮」な人だと思われる、日本独特の感性もあります。

まだ、その季節に合った色を取り入れるなど、季節感を演出することもできます。

衣替えは子どもの情操教育にもなる

また、子どもと一緒に衣替えを行えば、サイズが合わなくなった服を新調するなど早めの行動にもつながります。子どもに服のたたみ方やしまい方などを教えるよい機会にもなるでしょう。丁寧に服を扱うことで、ものを大切に使う考えを持つようにもなります。 子どもがいる家庭なら、家族の行事の一つとして取り組んでもよいかもしれません。

まとめ

衣替えは先人の知恵であり、文化であるともいえます。 最近では、衣替えをしなくて済む便利な収納グッズを取り入れる家庭も増え得ています。ですが、せっかく四季がある日本に住んでいるなら、季節の移り変わりを感じる衣替えを毎年の習慣にするのもよいものです。しばらく衣替えをしていないなら、この機会に行ってみてはいかがでしょうか。