掲載:THE FIRST TIMES

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■言わば47都道府県“2周目の旅”の始まりを告げるもの
現在、全国ツアー『miwa acoustic live tour 2023 “acoguissimo 5”』を開催中のmiwa。 2011年にスタートした“acoguissimo”名義のツアーは、miwaがギター1本の弾き語りスタイルで各地を巡り、47都道府県制覇を目標として行われてきたもの。その目標は2018年の『acoguissiom 4』のファイナル公演『miwa live at 横浜アリーナ“acoguissimo 47都道府県~完~”』で達成された。そこから約5年。久しぶりの開催となる今回は、言わば47都道府県“2周目の旅”の始まりを告げるものでもある。さらに、コロナ禍による様々な制限が解除されたことでコール&レスポンスや合唱など、オーディエンスとの濃密なコミュニケーションが復活したタイミングでもあるだけに、miwaはその空間を心から楽しみ尽くしながらライブに向き合っているようだ。ツアーはファイナルを迎える5月28日の北海道・ペニーレーン24まで駆け抜けていく。

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また、5月6日には千葉市蘇我スポーツ公園で開催された野外音楽フェス『JAPAN JAM 2023』への出演もあった。強風のため中止になったライブもあるなか、miwaはSky Stageで超満員のオーディエンスに向けて思いのこもった歌声を響かせた。バンドセットのライブであったが、ラストの「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」だけをギター弾き語りで披露したのは、『acoguissimo』ツアーの影響があったのかもしれない。現場で磨き続けてきたライブ力を見せつける圧巻のパフォーマンスに、初見の観客も魅了されたことは間違いないだろう。

■「青春時代の思い出の音を連想しながら」楽曲を制作

そんなmiwaからニューシングル「ハルノオト」が届けられた。すでに先行配信され、大きな話題を呼んでいる表題曲「ハルノオト」は、現在放送中のTVアニメ『MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~』のエンディングテーマとして書き下ろされたもの。『タッチ』や『H2』などの代表作を持つあだち充原作の『MIX』に対してmiwaは、「青春の甘酸っぱさを教えてくれる作品」とシンパシーを抱いている様子。そのうえで「青春時代の思い出の音を連想しながら」楽曲を制作していったのだと言う。

学生時代を思い起こさせる、もどかしく甘酸っぱい恋心をリアルに描きだしたリリックと心地よく胸に沁み込んでくる柔らかなメロディ、そしてNAOKI-Tによるアレンジメントが一体となって、聴き手の心には感動的な情景が鮮明に浮かび上がる。サウンドの大きな軸となるピアノを、『MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~』のオープニングテーマ「Starting Over」を手掛けるsumikaのメンバー、小川貴之が演奏しているのも本作における大きなトピックだ。感情を掬い取るような繊細なタッチを持つピアノの音色は、切なさと凛とした美しさを共存させるmiwaのボーカリゼーションと寄り添い合うことで、楽曲を最高の仕上がりへと導いている。

先日公開されたミュージックビデオでは、学校の教室や屋上でギターを弾くmiwaの姿と、『MIX』の登場人物である立花投馬、立花走一郎、立花音美の3人を想起させるような幼い子どもたちの物語が織り交ぜられることで、楽曲の世界観がより鮮やかに伝えられている。桜の花びらが舞う中で展開していく後半の美しい映像も含め、ぜひチェックしてほしい。

■クラシカルなスタイルでのライブ『miwa CLASSIC』で得た経験が大きく反映

また、YouTubeチャンネル『With ensemble』においても「ハルノオト」の動画がアップされている。弦楽器とピアノによるアンサンブルをバックに放たれる歌声には、音源以上のスケール感とエモーショナルな響きが込められているように思う。その堂々としたパフォーマンスには、近年開催されているクラシカルなスタイルでのライブ『miwa CLASSIC』で得た経験が大きく反映しているはずだ。ギターをかき鳴らしながら歌うmiwaとは一味違った魅力をぜひ感じてほしい。ちなみにシングル「ハルノオト」の初回生産限定盤には昨年開催された『miwa Billboard Live Tour 2022“miwa CLASSIC II』のBillboard Live TOKYO 2ndステージの模様を収録したBlu-rayが同梱される。そちらも合わせて堪能してみるのがオススメだ。

本シングルのカップリングには、新曲「未送信」も収録。こちらも「ハルノオト」同様、学生時代を舞台にした片想いソングとなっている。心の中で膨らむ相手への思い。だが、今の仲のいい関係性を壊してしまわぬよう、本当の気持ちを“未送信”のままにするというもどかしい感情が、鈴木Daichi秀行によるアレンジの上でみずみずしく紡がれている。ファルセットを交えながら伸びやかな歌声を響かせながらも、全体的に力強いニュアンスが滲んでいるのが印象的。後ろ向きな切なさではなく、今の関係を自ら選んだ意志の強さがしっかり表現されているところがこの曲のポイントと言えるのではないだろうか。

■メロディの強さとボーカリゼーションの妙がより生々しく伝わる、「2月14日」のmiwaひとりでの“弾き語りver.”

そしてもう1曲。今年2月にリリースされたEP『バレンタインが今年もやってくる』に収録されていた川崎鷹也とのデュエットソング「2月14日」が、miwaひとりでの“弾き語りver.”として収められた。アコギ1本のシンプルなサウンドになることで、メロディの強さとボーカリゼーションの妙がより生々しく伝わる仕上がりとなっている。miwaのアーティストとしての根幹を成している弾き語りだからこそ醸し出される、どこかブルージーなニュアンスは、「2月14日」という楽曲の新たな魅力をしっかり伝えてくれることだろう。

本作は、普遍的な輝きを放つメロディと詞世界を生み出すソングライターとしてのスキルを感じさせると同時に、聴き手の耳を捕らえて離さない幅広い表現を持つシンガーとしての魅力を存分に味わえるシングルとなった。夏を迎える前に、過ぎ去りし季節に思いを馳せながら、miwaが紡いだ“春の音”を存分に味わってほしい。

TEXT BY もりひでゆき

リリース情報
2023.05.24 ON SALE
SINGLE「ハルノオト」