愛知県の東名阪道のリニューアル工事で、鉄道と同じ「線路」が敷設されています。珍しい光景ですが、どうやって工事を進めているのでしょうか。

延々と伸びる線路 これは一体?

 愛知県西部の東名阪道で、2022年1月からリニューアル工事が続けられています。舗装の下で老朽化したコンクリート床版(しょうばん。道路の床板部分)を丸ごと更新する大掛かりな工事で、弥富IC周辺の三重方面2.6kmにわたり、昼夜連続で車線規制となっています。

 この工事現場を車で通り抜けると、高速道路を走っているはずなのに、車窓から延々と「線路と枕木」が見えます。しかもところどころ分岐して「複線化」されています。完全に鉄道風景の趣きですが、一体何が起きているのでしょうか。


東名阪道のリニューアル工事現場に現れた「線路」(画像:NEXCO中日本)。

 この線路を走るのは、自走式の運搬台車と、鉄道用3tダンプ、クレーンです。長い工区の前後に搬入・搬出用の拠点「揚重ユニット」が2か所ずつ設けられ、高速道路外と工事現場の間で、資機材や廃材がやりとりされます。撤去・設置作業地点とこの拠点とのあいだで、現場内を行き来するのに、線路が用いられているのです。

 NEXCO中日本 名古屋支社によると、この線路の敷設延長は約1600mにもおよぶといいます。線路幅は1435mmのいわゆる「標準軌」で、多くの私鉄や、新幹線の線路にも対応できる一般的な仕様です。

 床版を撤去・設置する作業には、線路を跨ぐようにして動く門型クレーンが使用されます。門型クレーンは常に2台1セットで、取り壊した古い床版を片方が持ち上げて台車に載せ、もう片方が台車から新しいプレキャスト床版を持ち上げて現場に設置。この「二人三脚」で効率よく床版の更新をすすめていきます。ここでは全部で2セット(4台)が同時稼働中しています。

 複数の台車がひっきりなしに搬出入拠点を行き来するため、全部で6か所の「分岐線」が設けられ、いわゆる「行き違い」が可能になっています。

 1.6kmもの線路を「全線開業」させるのにかかる期間は、1か月とのこと。さらに工事中も床版撤去設置地点の移動にあわせて、門型クレーン用のレールを含め随時レールの敷設・撤去を行うといいます。

 このような施工方法は名古屋支社管内では初めてのケースだといいます。一般的には片方向をまるごと通行止めにし、上下線を対面通行にしたうえで工事することが多いですが、大動脈の東名阪道でそれをするわけにはいかないため、1車線規制のみで済むよう、省スペース・効率化を追求した結果が、この「鉄道」方式なのです。

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