「3、2、1、ロケット離陸!」 JAL「退役機貸切フライト」が凄すぎた! 「飛行機の墓場」を超低空飛行
国内で初めて、一般客を乗せた貸切便(チャーター便)として離日フライトが実施されたJALのボーイング777-200ER「JA701J」。この特別便の機内に搭乗したところ、通常便ではまずありえない光景が広がっていました。
777-200ER初号機「JA701J」退役にともない
JAL(日本航空)のボーイング777-200ER初号機「JA701J」が2023年5月16日、売却にともなうフェリーフライト(回送運航)へ飛び立ちました。このフライトは、一般客を乗せ貸切便(チャーター便)として運航し、ともにJA701Jの”眠りの地”であるアメリカ・カリフォルニア州へ向かうというもので、国内航空会社としては初めての試み、かつ航空ファンにとっては伝説的ともいえるフライトとなりました。今回、この便に乗ることができました。
JAL「JA701J」による特別退役チャーター便の様子(2023年5月16日、乗りものニュース編集部撮影)。
チャーター便はJALのスタッフが企画し、同グループの旅行代理店ジャルパックのツアー企画として販売され、47人の乗客が乗り込みました。同便の行き先はカリフォルニアのロサンゼルス空港で、フライトを通してJALのパイロットなどによる特別な仕掛けが各所に凝らされているほか、アメリカ到着後にはさらにフェリー便として運航され、安置される予定のビクタービル空港へ。ツアーには同空港の見学なども盛り込まれています。
今回引退する「JA701J」は、2002年8月にデビュー。短距離国際線を中心に運航されたのち、最後の数年は国内線へ定常投入されました。定期便ラストフライトは2023年3月31日のJL922便(沖縄→羽田)で、その後は売却のための整備作業が進められていたとのこと。5月12日までのフライト時間は約6万4300時間、フライト回数は1万6790回にものぼります。
そんな「JA701J」の最後の旅は出発前の様子も特別です。出発する駐機場は旅客ターミナルではなく、羽田空港のJALの格納庫前。出発前には機側での撮影会なども実施され、乗客が機体のエンジンカウルに同機へのメッセージを書き込みました。また、機体のドアには特別ステッカーが貼られ、機内のヘッドレストも特別なものが採用されています。
その後16日の20時すぎに機体が動き出します。機内には乗客のほか、パイロットや運航管理者も客席に同乗しました。
通常とは明らかに違う離陸!
「今回の離陸では『ロケットスタート』をします。それではみなさんご唱和ください!3、2、1、テイクオフ!」
このようなアナウンスが流れ、特別フェリー便の機内は離陸前から大興奮となりました。
通常、旅客機が十分な長さをもつ滑走路から離陸する場合は、エンジンパワーを途中まであげた状態から滑走を始め、回転数を安定させたのちに離陸推力にセットすることが一般的です。ただこの「ロケットスタート」は最初にエンジンを離陸推力にしてから、ブレーキを解除し、一気に加速する離陸方法。旧石垣空港や丘珠空港など限られた場所で小型ジェット機が実施するくらいしか実例はなく、大型のボーイング777で経験できる機会はかなりレアです。フルパワーにしたときにはかつてない振動が客席に伝わり、離陸のGも大きく感じました。
離陸後は、手を振るように、機体を左右に傾け翼を振る「ロッキング・ウィング」も実施。これはメモリアルフライトなどでよく実施されるもので、こちらも通常の旅客便では、まず体験できません。
JAL「JA701J」による特別退役チャーター便の様子(2023年5月16日、乗りものニュース編集部撮影)。
巡航中の機内では、運航管理者によるトークショーなどが行われながらアメリカへ。そしていよいよロサンゼルスに近づくと、このフライトの目玉となる企画が遂行されます。
先述したカリフォルニア州・ビクタービル空港は、退役した旅客機が多数安置されて、次の役割を待っていることから、一般的に”飛行機の墓場”と呼ばれることもあります。一方で定期旅客便でのアクセスはなく、そこへのフライトを体験できる機会はまずありません。
「眠りの地」上空をまさかの低空飛行! その機内
JALが今回実施した、ボーイング777-200ER「JA701J」国際フェリーフライト特別搭乗企画では、ロサンゼルス空港到着前にビクタービル空港へ進路をとります。その後、ビクタービル空港の滑走路の直上を、超低空で飛行する「ローパス」を実施。整然と安置されている多数の旅客機たちが眠る姿を、空から間近で眺めることができたのです。
その後ロサンゼルス空港には16日15時30分ごろ(アメリカ時間)に到着。乗客が降機するさいには、コクピットの見学会などが実施されています。
JAL「JA701J」による特別退役チャーター便の様子(2023年5月16日、乗りものニュース編集部撮影)。
JA701Jの退役にともなって、JALで定期便投入されているボーイング777-200ERは、ラスト1機となりました。同社では777-200ERを、2023年度上期中に退役させる方針を決定済み。現在運用されている777-200ERは1機のみで、同機の退役をもって、JAL国内線で長年主力機のひとつだったボーイング777シリーズが姿を消すことになります。